椿
知ってますか?

椿
人の小指って人参程度の硬さしかありませんの

椿
ですから少し力を入れれば噛みちぎられるのですが

椿
理性が働き、リミッターを掛けているから

椿
人間は小指を噛みちぎれないんですよ

朝陽
そうなんだね

朝陽
で、どうしてそれを俺に話したのかな?

椿
さぁ、?なんとなくですね

手にはビンテージ調のトランクケースを持って
傍から見ればただのお客様にしか見えないのかしら?
朝陽
所で今日百合くんは?

椿
百合?

椿
喧嘩してしまったのでわかりません

朝陽
喧嘩?珍しいね

椿
実は御依頼がありまして、

椿
その時私が御首を切り落とそうとした時に

椿
間違えて指を切ってしまいそのままにしていたら怒られてしまいましたの

朝陽
まぁ確かに

朝陽
そこから細菌が入ってしまえば大変だね

椿
…

椿
そしてその後、百合が手当をしてくれたのですが

椿
その時に

椿
「汚れ作業は俺が全部やる。だから椿はもうこんな事をするのはやめてくれ」

椿
って言ったんです

椿
…おかしくありません?

朝陽
おかしい…、何が?

椿
汚れ作業なんて…

椿
何処が汚いのか分かりません。これはお掃除をしているのと同じです

椿
なのになんででしょうか?

椿
私は私の考えで進めているだけなのですが

椿
何故汚いと思われてしまうのか疑問なのです

椿
そう思いますでしょう?

椿
ねぇ、雅さん

朝陽
え?

雅
えぇ!?

雅
バレてたんですか!?

椿
えぇ、随分と前から聞き耳を立てていた様ですね

朝陽
…椿ちゃんはやはり凄いね

朝陽
気配だけで誰かわかるだなんて…

椿
そうでしょうか?

雅
そうですよ〜、

雅
…やはり血筋等の関係でしょうか?

椿
いえ、少なくともそれはありません

雅
?、なぜですか?

椿
私、

椿
孤児院育ちなのでそういった優秀な血筋でも無ければ教育も受けていませんので

朝陽
けれど、それにしては

朝陽
椿ちゃんは卓越した洞察力と俊敏性を持っているよねぇ…

椿
…それは

椿
父様のお陰ですね

雅
父様…とは、

椿
養父です

雅
!

雅
つまり、Gardenの…

椿
初代首領ですよ(ニコリ

朝陽
成程…

雅
椿さんの優秀さは

雅
前首領殿仕込み物だったんですね

椿
そうですね

朝陽
前首領こと椿ちゃんのお父さんはさぞ優秀な方だったんだね

椿
いいえ?

椿
父としても人間としても駄目な人でしたわ

朝陽
えっ

椿
唯一ある良い所を挙げても下らない事しかありませんし

椿
本当にバカバカしい人でしたよ

椿
何を考えているのか、

椿
そもそも自身の名前でさえも教えてくれない人でした

雅
な、名前も…??

椿
えぇ、可笑しいでしょう?

椿
それに私が学生の時

椿
学友の方々に嫌がらせをされていた時も

椿
なーんの心配もせず、ただ「弱者の言う事なんてどうでも良い」としか言いませんでしたし

朝陽
そんな…

椿
先生は娘さんが居らしたので、どう思います?

朝陽
……

朝陽
自分の娘がそうされたらと思うと…、許せないよ

椿
ふむ

椿
でしたら、

椿
私は父様にとって大切ではない娘だったという事ですか

雅
つ、椿さん…?

少し慌てる雅さんの髪をひと束撫で
私は先生の方を見ずに話しました
椿
先生の娘さんはさぞ幸せでしょうね

椿
死んでも尚父に愛され、執着されているだなんて

朝陽
…どういう事かな?

椿
私

椿
こう見えて疑り深い性格なので♪

椿
貴方の偽名も本名も

椿
出生も今までの経歴も

椿
全部ぜーんぶ

椿
調べさせて頂きました、

椿
あぁ、勿論

椿
雅さん、貴方もですよ

雅
……

椿
どうですか?義眼と義手、義脚の調子は?

椿
初めて付けた時のご感想は?

椿
昔の傷は痛みますか?

椿
あぁ、

椿
"御師匠さん"はお元気で?

雅
ッ、…貴方も…

雅
嫌な趣味をお持ちで…椿さん

椿
ふふっ

朝陽
……

椿
先生も

椿
いい加減お辞めになったらどうです?

椿
貴方の様な比較的常識的な方が

椿
亡き娘の形見の人形を持ち

椿
尚且つその娘さんだけに留まらず

椿
娘さんによく似た女性に執着し続けるのは…((

朝陽
黙れッッ!!!!

次の瞬間私は先生に首を絞められ押し倒されていました
朝陽
…

椿
おやまぁ

椿
私を殺すんですか?

椿
良いですよ?

椿
このまま窒息死をさせるもよし

椿
喉元を掻っ切って殺すもよし

椿
どうぞ

椿
ご自由になさって下さい

まぁ、どうせ先生が私を殺すだなんて出来ないから良いのだけれど
雅
あのッ…そろそろお、お辞めになった方が…

燈和
あれ、三人とも何してるんですか?

椿
あら

椿
燈和さんに呪いさん

椿
こんばんは

燈和
こんばんは〜

呪いちゃん
◉✷✯◦⦿■

燈和
…何かお取り込み中?

雅
きっと…そう、ですね…

椿
ふふっ

椿
まぁ、楽しいから大丈夫ですよ

椿
だって私

椿
こういう事には慣れていますもの(ニコッ

朝陽
…

朝陽
…もう良いよ、椿ちゃん

朝陽
君があの子の情報を持っているから良くしていたのに

朝陽
…一時来ないでくれ

椿
あらまぁ

椿
まぁ、良いですよ

トランクケースを持ち、
乱れたリボンを直していると雅さんが話し掛けて来ました
雅
…椿さん

椿
はい?

雅
…何故そんなにも残虐な事を行えるのですか?

椿
残虐…

椿
そんな事、自分でもわかりませんよ

雅
…そう、…ですか

椿
雅さんはお若いのですからまだまだ表社会にも出られますよ?

雅
若いって…一歳差ですのに…

椿
私にとっては年下なので

雅
…イヒッ

雅
…無理ですよぉ、今更

雅
オマケにあたしにとってはこの世界での生き方が

雅
ちょーど良いんですっ

雅
それは椿さんもでしょう?

椿
ふふっ、確かにそうですね

軽く笑って雅さんがお店の方に戻った後
私は燈和さんと呪さんの方に体を向けました
椿
お二人共、申し訳ありませんが

椿
暫くの期間お会い出来る機会が無くなってしまいますの…

燈和
えっ

呪いちゃん
✻✮✮✱✱❃❊●◆☒●

椿
あぁ、呪さん

椿
そんなに悲しまないで下さい…私も心苦しいのです…

燈和
あの…どうしてですか?

椿
そうですねぇ

椿
やらなくては行けない事が出来た…とでも言いましょうか

椿
まぁ、いずれ分かりますので

椿
また逢う日まで

そう言い私はおふたりにカーテシーをしてその場を立ち去りました