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次の日
紗良
奏音！おはよう！
奏音
おはよう
奏音は窓の外をじっと眺めている。
紗良
何、見てるの？
奏音
木。
紗良
木？
奏音
そう。
奏音
葉っぱって緑じゃない？
奏音
信号と同じ色。
奏音
私生まれた時からずっと思ってるの。なんで信号の色は緑なのに青って言うのかなって。
紗良
昔の人は緑を青って読んでたからじゃない？
奏音
じゃあこの色は？
奏音は机の横にかかっていた緑色の手さげを見せた。
紗良
緑？
奏音
なのに信号は青って言うのね。
紗良
ふふ笑
紗良
奏音って面白いこと言うね笑
奏音
あっごめん。なんか。
紗良
全然！そういう心って大人になると薄れてくからさ、奏音が羨ましいよ。
奏音
私ね。昔からなんでそうなるのかが分からなかった。
奏音
どんな事でもそう。例えば足し算。引き算もかけ算もわり算も得意だったけど、足し算だけ出来なかった。
奏音
クラスの子も先生も親もみんな、1＋1は2って言うの。
奏音
でも粘土で考えてみれば、1つの粘土に1つの粘土を合わせたら、ふたつにはならないじゃない。
奏音
だんだん、たすということが分からなくなって。
奏音
小一のテストで答えを全部1って書いたら0点だった。
奏音
両親は1＋1=2は定理、常識と言って聞かないの。
奏音
だからこの世で1000＋1000は2000でも私の中では足し算は全て1。
紗良
…奏音って凄い。
紗良
そんなこと考えたこともなかったよ！
奏音
理科と社会は得意だけど、国語と英語は分からなかった。
奏音
登場人物に会ったこともないのに、どうやってその人の気持ちを読み取れって言うの？
奏音
どうして疑問形にすると動詞の形は変わるの？
奏音
また、定理、常識って言い返されるだけだけど。
紗良
確かに、少年の気持ちを答えなさいってわかんないよねー。
紗良
疑問形になればsが取れたりとかね。うん。めっちゃわかる！
奏音
…初めてだ。
紗良
え？
奏音
初めてだ！共感してくれた人！
紗良
そうなの？でもわかるよその気持ち。深く考えたことなかったけど、その気持ち素敵だと思う！
奏音
…ありがとう。紗良。
奏音
でもこうやってなんでなんでを繰り返してるうちにクラスメイトも先生も親も呆れて。
奏音
だから友達いないし、人付き合い良くないの。
奏音
そして悪口言われて。
奏音
表じゃなくて、裏で。
奏音
あの子ちょっとおかしいよねって。
紗良
人はどうして裏でこそこそ言うんだろう。
奏音
人は自分と違うことが怖い生き物なの。
奏音
自分と違うところがあると、それを他人に確かめ、違っていたらその人を馬鹿にする。
奏音
人間は酷く哀れで虚しい生き物。
奏音
って父さんかが言ってた。
紗良
お父さん詩人だね。
奏音
まぁ、小説家だからね。
紗良
そうなの？
奏音
うん。夏宮透って知ってる？
紗良
あ、知ってる！この間その人の本図書室で借りた！
紗良
奏音のお父さん小説家なんだー。すごーい！
奏音
どうかな。
奏音
あんなに話題になるほどの小説を書く人とは思えない性格だよ。
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作品ページ
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