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君のとなり。

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君のとなり。

第1話 - ｢君のとなり、｣

100

2020年09月27日

#恋愛

#恋の乱

#友情

#長編

麻菜*̣̩⋆̩☪ ‎

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100

麻菜*̣̩⋆̩☪ ‎

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人は物事を忘れてしまう

共に笑ったことも

喧嘩したり泣いたりしたことも

しかし印象的な出来事は記憶に残り続けるだろう

君にとって少しでも印象的な出来事になって欲しい

そして、ずっと

笑いあった事、喧嘩したり泣いたりした事を忘れないで欲しい

自分も忘れないからさ

｢私を忘れないで─｣

あ、あのっ！

霧隠才蔵

何

入学したて一目見て、

それからずっと好きです！

私と付き合ってくれませんか！

紅城梨雅

(わ、わぁ…)

紅城梨雅

(凄い…よく告白なんてできるな…)

紅城梨雅

(相手が相手だし…)

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

俺、好きなやつ居るから

霧隠才蔵

無理

ぁ…

ダダッ

ほっ…

紅城梨雅

(え、ほっ…って)

紅城梨雅

(─あ、行っちゃった…)

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

めんどくさ

霧隠才蔵

…ところで

霧隠才蔵

いつまで見てるの

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(ば、バレた？)

霧隠才蔵

ね？

霧隠才蔵

紅城さん？

紅城梨雅

う…

紅城梨雅

す、すみません…

紅城梨雅

たまたま通りかかって…

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

でもさ、何で安心してるわけ？

紅城梨雅

え？

紅城梨雅

安心なんて…

紅城梨雅

(確かに少し｢ほっ｣とかなっちゃったけど…)

紅城梨雅

(それは不本意というか何と言うか…！)

霧隠才蔵

もしかして俺のこと好きだったり？

紅城梨雅

なっ…

紅城梨雅

そ、そんなわけ無いです！

霧隠才蔵

そんなにムキになっちゃって

霧隠才蔵

冗談だったんだけどな

紅城梨雅

え、冗談…？

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

ちょっと用事思い出しちゃったので帰りますね！

紅城梨雅

また明日！！

紅城梨雅

(冗談だったのに…！)

紅城梨雅

(何で顔が赤いの？)

紅城梨雅

(霧隠さんが急にからかってきたからだよね…うん…！)

次の日

教室

紅城梨雅

(今日は霧隠さんとは目合わせたくないな…)

紅城梨雅

(出来れば会いたくもないんだけど…)

紅城梨雅

(それにずっと思ってたけど…)

紅城梨雅

(何で霧隠さんの隣の席なの！？)

紅城梨雅

(クジめ…！)

真田幸村

才蔵！

霧隠才蔵

何

真田幸村

シャーペンと消しゴム貸してくれないか？

霧隠才蔵

何で俺が…

真田幸村

筆箱を家に置いてきちまったんだ

真田幸村

才蔵にしか頼めないんだ！

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

あれだけ気をつけろって言ったのに

霧隠才蔵

シャーペンは良いけど消しゴムは2個ないけど

紅城梨雅

あ…

霧隠才蔵

紅城さん？

霧隠才蔵

どうかした？

紅城梨雅

あ…消しゴムが2個入ってたので…

紅城梨雅

真田さん

紅城梨雅

良かったら使ってください

真田幸村

！

真田幸村

良いのか！？

紅城梨雅

はい

真田幸村

ありがとうな！

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

どういたしまして！

紅城梨雅

(真田さんって明るい人なんだな…)

霧隠才蔵

それでさ

霧隠才蔵

教科書は？

紅城梨雅

え…？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

無い！？

霧隠才蔵

何してんの…

紅城梨雅

朝入れてきたんですけど…

紅城梨雅

先生に言ってきますね

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

………………

霧隠才蔵

紅城さん

紅城梨雅

？

紅城梨雅

どうしたんですか？

霧隠才蔵

俺の見る？

紅城梨雅

え、良いですか？

霧隠才蔵

隣の席だし

紅城梨雅

ありがとうございます！

霧隠才蔵

どーいたしまして

先生

えー

先生

ここは、こうであって─

紅城梨雅

(ヤバい…分からない…)

紅城梨雅

(勉強が苦手な自覚はあるけど、ここまでとは…)

紅城梨雅

(それに比べて…)

紅城梨雅

(霧隠さん、スラスラ解いてる…)

紅城梨雅

(頭も良いんだ)

紅城梨雅

(そりゃあモテるわけだね…)

授業終了後

紅城梨雅

(うん、無理！)

霧隠才蔵

さっき何見てたの？

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

えっ…

紅城梨雅

外の景色…です…

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

数学苦手なんだ

紅城梨雅

な…！？

霧隠才蔵

魂抜けてたし

紅城梨雅

そ、そんなにじゃ…

霧隠才蔵

教えてあげる？

紅城梨雅

え？

紅城梨雅

霧隠さんが？

霧隠才蔵

うん

紅城梨雅

私に？

霧隠才蔵

うん

紅城梨雅

そんな、恐れ多い！

紅城梨雅

大丈夫ですよ、そんなにしてもらわなくても…！

霧隠才蔵

ま、頑張れ

紅城梨雅

は、はい…

紅城梨雅

(急にどうしたんだろう…？)

放課後

藤林朔夜

梨雅

紅城梨雅

？

紅城梨雅

朔ちゃん、どうしたの？

藤林朔夜

今日、暇か？

紅城梨雅

あ、ごめん…！

紅城梨雅

今日はバイトあって…

藤林朔夜

そうか…

紅城梨雅

今日終わったら今週は大丈夫だから！

藤林朔夜

あぁ

バイト先

紅城梨雅

よろしくお願いします！

今日もありがとうね！

早速だけど─

数時間後

紅城梨雅

ふぅ…

紅城梨雅

(料理屋の夕霧でバイト始めてから結構経つけど、)

紅城梨雅

(疲れたな…)

あ

紅城梨雅

え…！？

紅城梨雅

霧隠さん！？

霧隠才蔵

あ〜

霧隠才蔵

アルバイトの子って紅城さんか

紅城梨雅

何で霧隠さんがココに…？

霧隠才蔵

店主が叔父さんだから手伝ってるの

紅城梨雅

そうだったんですね…

紅城梨雅

でも私ココで働き始めて結構経ちますけど

紅城梨雅

初めてですよね…？

霧隠才蔵

あぁ

霧隠才蔵

あんまり接客とかやらないから

霧隠才蔵

裏方っていう感じ

紅城梨雅

だから会わなかったんですね…

紅城梨雅

(あっ！)

紅城梨雅

あ、あのっ！

紅城梨雅

私が夕霧で働いてるってことは秘密にしてもらっても良いですか？

霧隠才蔵

なんで？

紅城梨雅

霧隠さんの事を好きな方達に失礼かと思って…

紅城梨雅

私だけズルいってなって

紅城梨雅

霧隠さんに迷惑かけてしまうかと…

霧隠才蔵

お人好しだね

霧隠才蔵

自分のことより人の事なんだ

紅城梨雅

ダメでしたか…？

紅城梨雅

でも実際迷惑なのは霧隠さんの方だと思いますし…

霧隠才蔵

─分かった

霧隠才蔵

俺たちだけの秘密、ね？

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

ありがとうございます！

次の日

霧隠さんから離れた朔ちゃんの席

紅城梨雅

朔ちゃん

紅城梨雅

おはよう

藤林朔夜

おはよう

紅城梨雅

今日は早かったんだね

藤林朔夜

あぁ

藤林朔夜

朝いつもより早く目が覚めたからな

紅城梨雅

そうなんだ

紅城梨雅

(いつも同じ時間に起きる朔ちゃんが珍しいな…)

藤林朔夜

霧隠の隣、どうだ？

紅城梨雅

ど、どうって…？

藤林朔夜

いや…別に…

紅城梨雅

…？

紅城梨雅

結構優しくしてくれてるよ

紅城梨雅

昨日は教科書見せてもらったし

紅城梨雅

優しいんじゃないかな

藤林朔夜

そうなのか…

藤林朔夜

梨雅が大丈夫なら良かった

紅城梨雅

私クジで隣になった時

紅城梨雅

｢終わった｣って思ったけどね

紅城梨雅

やっぱり人は見かけに寄らないね

藤林朔夜

そうみたいだな

紅城梨雅

それでそれで─

キーンコーンカーンコーン

キーンコーンカーンコーン

紅城梨雅

あ、席戻らないとね！

紅城梨雅

(授業やだな…)

霧隠才蔵

俺の噂話もいいけどさ

霧隠才蔵

あの声の大きさはどうにかした方がいいと思うけど？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

霧隠さんまで聞こえる位

紅城梨雅

声大きかったですか…？

霧隠才蔵

丸聞こえ

紅城梨雅

う…

紅城梨雅

好き勝手言ってしまってすみません…

霧隠才蔵

俺

霧隠才蔵

─も優しくないからね

紅城梨雅

え…？

紅城梨雅

(途中聞こえなかった…)

紅城梨雅

(それに優しくないって…)

紅城梨雅

(霧隠さん…怒ってるのかな)

四限目終了

藤林朔夜

梨雅

藤林朔夜

屋上行くか

紅城梨雅

あ、ちょっとやっておきたいことがあるから

紅城梨雅

先行っててくれる？

藤林朔夜

分かった

紅城梨雅

…霧隠さん

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

HR前のこと…

紅城梨雅

ほんと、ごめんなさい！

霧隠才蔵

は…？

紅城梨雅

霧隠さんの気持ちを考えないで喋ってしまって…

紅城梨雅

で、でも

紅城梨雅

霧隠さんは優しいです！

紅城梨雅

それは保証します！

紅城梨雅

気を悪くしたらごめんなさい！！

霧隠才蔵

………………

紅城梨雅

す、すみません…

真田幸村

才蔵〜！

霧隠才蔵

何

真田幸村

梨雅…さんだっけ？

真田幸村

才蔵のこと良く見てるよな

霧隠才蔵

なんのこと

霧隠才蔵

阿呆な事言ってると一緒に食べないけど

真田幸村

それはダメだ！

屋上

紅城梨雅

(ああああああああぁぁぁ…！)

紅城梨雅

(霧隠さんになんて事を！)

藤林朔夜

大丈夫か？

紅城梨雅

え！？

紅城梨雅

う、うん！

紅城梨雅

大丈夫！

紅城梨雅

(私変だな…)

紅城梨雅

(朔ちゃんに相談…)

紅城梨雅

ね、ねぇ

紅城梨雅

朔ちゃん？

藤林朔夜

ん？

藤林朔夜

どうした？

紅城梨雅

朔ちゃんって…好きな人…

紅城梨雅

居るの…？

藤林朔夜

は…！？

藤林朔夜

居るわけ…ないだろ…

紅城梨雅

え…そうなの？

藤林朔夜

そ、そういう梨雅はどうなんだ？

紅城梨雅

私！？

紅城梨雅

私は特には…

藤林朔夜

霧隠は？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

霧隠さんとは隣の席なだけだから！

藤林朔夜

…だよな

藤林朔夜

変なこと言って悪かったな

紅城梨雅

う、ううん

紅城梨雅

大丈夫だよ

紅城梨雅

そういえば…

紅城梨雅

霧隠さんって告白バンバン断ってるみたいなんだよね…

藤林朔夜

そうなのか？

紅城梨雅

うん…

紅城梨雅

好きな人がいるみたいだけど…

藤林朔夜

霧隠の好きなやつか…

霧隠さん…？

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

え、えっと…

紅城梨雅

うるさかったかな？

紅城梨雅

ごめんね

ううん

うるさくない

才蔵の友達？

紅城梨雅

ま、まぁ…そうなのかな

才蔵の教室

連れてってくれる？

紅城梨雅

朔ちゃん

紅城梨雅

良いかな？

藤林朔夜

あぁ

藤林朔夜

俺も食べ終わったから

紅城梨雅

ありがとう

紅城梨雅

霧隠さんの教室ね

！

ありがとう

紅城梨雅

どういたしまして

廊下

俺、蛍

藤林朔夜

蛍？

霧隠蛍

？

紅城梨雅

朔ちゃん？

紅城梨雅

どうしたの？

藤林朔夜

お前の苗字は…

霧隠蛍

霧隠だよ

霧隠蛍

霧隠蛍

紅城梨雅

えっと…まさか霧隠さんの弟さん？

霧隠蛍

才蔵の弟

紅城梨雅

そ、そうなんだ…！

紅城梨雅

(てことは蛍くんもモテてるのかな…？)

紅城梨雅

あ、そうだ

紅城梨雅

まだ名前教えてなかったね

紅城梨雅

私は紅城梨雅

紅城梨雅

よろしくね

藤林朔夜

俺は藤林朔夜

藤林朔夜

よろしく

霧隠蛍

うん

霧隠蛍

梨雅と朔夜

霧隠蛍

覚えた

紅城梨雅

ふふっ

紅城梨雅

ありがとう

紅城梨雅

─ここが霧隠さんの教室だよ

紅城梨雅

呼んでこようか？

霧隠蛍

うん

教室

紅城梨雅

霧隠さん

紅城梨雅

真田さん

紅城梨雅

少し良いですか？

真田幸村

ん？

霧隠才蔵

なんの用

紅城梨雅

霧隠蛍さんが来てますよ

霧隠才蔵

蛍が…？

霧隠才蔵

…………

霧隠才蔵

了解

霧隠才蔵

ここまで来て何かあるの

霧隠蛍

シャーペン無い

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

クラスに居ないの？

霧隠蛍

俺、友達居ない

霧隠才蔵

…はいはい

霧隠才蔵

終わったら返してよね

霧隠蛍

うん

霧隠蛍

ありがとう

霧隠才蔵

ん

霧隠才蔵

どうして蛍のこと知ってるの

紅城梨雅

え？

紅城梨雅

屋上で朔ちゃんと一緒にお昼食べてたら

紅城梨雅

霧隠さんの所に連れてって欲しいって…

霧隠才蔵

はぁ…

紅城梨雅

そういえば霧隠さんって好きな人いるんですか？

霧隠才蔵

は？

紅城梨雅

告白断った時に言ってたましたから…てっきり…

霧隠才蔵

いるんじゃない？

ズキッ

紅城梨雅

え、どんな人なんですか？

霧隠才蔵

秘密

霧隠才蔵

そこ教えちゃったら面白くないじゃん？

紅城梨雅

そ、そうですよね…

紅城梨雅

(今の｢ズキッ｣って何…？)

紅城梨雅

(何に傷ついて…)

紅城梨雅

(たまたま…だよね)

グラッ

紅城梨雅

(あ、あれ？)

紅城梨雅

(目眩…？)

紅城梨雅

(倒れ─)

紅城梨雅

きりが─

バタンッ

藤林朔夜

！？

藤林朔夜

梨雅！？

真田幸村

紅城さん？！

霧隠才蔵

朔夜

霧隠才蔵

先生に言ってきて

藤林朔夜

あぁ！

霧隠才蔵

保健室に置いてくる

ヒョイ

！？！？

藤林朔夜

え、霧隠？

藤林朔夜

お姫様抱っこ…

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

早く報告

藤林朔夜

あ、あぁ…

………………

保健室

霧隠才蔵

失礼します

霧隠才蔵

………………

霧隠才蔵

まったく…

霧隠才蔵

あの人は何やってんだか

数時間後

紅城梨雅

……ん

紅城梨雅

(ここは…)

紅城梨雅

(保健室…？)

紅城梨雅

(あ、そっか…)

紅城梨雅

(私、教室で倒れたんだ)

おはよう

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

え…？

あ、そっか

君は保健室来るの初めてだもんね

私は上杉謙信で

上杉謙信

3年の保健委員だよ

紅城梨雅

あ…

紅城梨雅

紅城梨雅です

上杉謙信

うん

上杉謙信

梨雅ちゃんね

紅城梨雅

(そうだ…！)

紅城梨雅

(確か朔ちゃんから話を聞いたことがある…)

紅城梨雅

(よく教室から逃げ出す｢脱走ズ｣の1人だっけ？)

紅城梨雅

(保健委員の人だったんだ…)

紅城梨雅

(あれでも…)

紅城梨雅

(3年生なんだしどうやって教室から─)

上杉謙信

そうそう

上杉謙信

多分、才蔵くんが梨雅ちゃんのを保健室に連れてきてくれたんだよ

上杉謙信

お姫様抱っこでね

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

霧隠さんが…お、お姫様抱っこ…！？

紅城梨雅

(霧隠さんは恥ずかしくなかったのかな…)

紅城梨雅

そういえば今って…

上杉謙信

えっと

上杉謙信

17時だね

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

長々とすみません！

紅城梨雅

今すぐ帰ります！

上杉謙信

待って

紅城梨雅

…？

上杉謙信

倒れちゃった人を1人で帰らすわけにはいかないよ…

紅城梨雅

で、でも…

上杉謙信

だからさ

上杉謙信

私に送らせてもらえない？

紅城梨雅

だ、大丈夫ですよ

紅城梨雅

こんなに元気ですし

上杉謙信

でも、また突然倒れちゃったら…

上杉謙信

私は我慢ならないな…

上杉謙信

ダメ…？

紅城梨雅

う…

紅城梨雅

(そんな目で見られると…)

紅城梨雅

わ、分かりました…

紅城梨雅

お願いします…

上杉謙信

ふふっ

上杉謙信

ありがとう

貴方って人は！

紅城梨雅

！？

こんな時間まで何やってたんですか？

上杉謙信

あ…兼続…

紅城梨雅

(兼続さんまで！？)

直江兼続

梨雅？

上杉謙信

あれ？

上杉謙信

2人は知り合いなの？

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

住んでる場所が近くてよく遊んでもらってたんです

上杉謙信

そうなんだね

上杉謙信

昔の兼続も今みたいに鬼のようだった？

紅城梨雅

えっ…

直江兼続

誰が鬼です？

直江兼続

もう一度言ってみてください

直江兼続

言えるのでしたらね？

上杉謙信

う…

上杉謙信

すみません…

紅城梨雅

(2人を見てると不思議な気持ちになる…)

紅城梨雅

(安心してる？)

上杉謙信

兼続

上杉謙信

怒るのは良いけど…

上杉謙信

いや…良くもないけど

上杉謙信

早めにしないと梨雅ちゃんが帰れなくなってしまう…

直江兼続

…そうでしたね

直江兼続

後でゆっくりとお説教してあげますね

上杉謙信

そ、それは…

直江兼続

まったく…

直江兼続

梨雅、取り敢えず行きましょう

紅城梨雅

はい

帰り道

紅城梨雅

上杉さんと兼続さんは─

上杉謙信

名前呼びでも良いんだよ

紅城梨雅

え…ですが…

上杉謙信

大丈夫

上杉謙信

そういうの気にしないから

直江兼続

はい

直江兼続

昔のように呼んでくれて構いません

紅城梨雅

は、はい…

紅城梨雅

じゃあ…

紅城梨雅

謙信さん……つぐにい…

上杉謙信

！！

上杉謙信

兼続にそんな呼び名があったなんて…！

上杉謙信

私もこれからは｢つぐにい｣って呼ぼうかな？

直江兼続

やめてください

直江兼続

少し歳上な人に｢にい｣なんて言われたくありません

上杉謙信

え…

上杉謙信

そんな冷たいこと言わないでよー…

上杉謙信

ね、つぐにい？

直江兼続

今、鳥肌が立ちました

上杉謙信

そんなー…

直江兼続

そういえば、あなた今日何処か寄るとか言ってませんでした？

上杉謙信

あれ

上杉謙信

そうだったっけ？

直江兼続

あ

直江兼続

今日バイトの日ですよね

紅城梨雅

えっ…！

上杉謙信

……？

上杉謙信

あっ！

上杉謙信

そうだった…！

上杉謙信

ごめんね…梨雅ちゃん

紅城梨雅

いえいえ！

紅城梨雅

ここまでありがとうございました

上杉謙信

ううん

上杉謙信

また何時でも送らせてね〜！

紅城梨雅

謙信さんって不思議な方ですね

直江兼続

抜けてる所が多すぎてどうにかしてほしいですけどね

直江兼続

授業中にも関わらず何処かに行くのは本当にやめてほしいです

紅城梨雅

ふふっ

紅城梨雅

やっぱり不思議な方です

ブルルルーン！

紅城梨雅

…？

直江兼続

危ない！

グイッ

直江兼続

大丈夫でしたか

ドキッ

紅城梨雅

(ち、近いっ…！)

紅城梨雅

は、はい！

紅城梨雅

大丈夫です

紅城梨雅

ありがとうございます…

直江兼続

いえ

直江兼続

無事なら良かったです

紅城梨雅

(今なんで…)

紅城梨雅

(こんな気持ち…)

直江兼続

確かこの辺りでしたね

紅城梨雅

は、はい！

紅城梨雅

ここです

直江兼続

…変わりませんね

紅城梨雅

…？

直江兼続

それじゃあ、お大事に

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

ありがとうございました！

紅城梨雅

(そういえば…つぐにい気づいてたんだ…)

紅城梨雅

(昔から変わらない…)

13年前

紅城梨雅

つぐにい！

直江兼続

梨雅？

直江兼続

どうしたの？

紅城梨雅

あーそぼ！

直江兼続

…ダメだよ

直江兼続

風邪ひいてるんだから

紅城梨雅

かぜ…？

紅城梨雅

なってない！

紅城梨雅

元気だもん！

直江兼続

…………

直江兼続

じゃあさ1回お家に帰って

直江兼続

熱を測ってお熱がなかったら遊んであげるよ

紅城梨雅

…熱なんて無いのに

ピピピピッ

直江兼続

37.9

直江兼続

熱あるね

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

(あの時も自分させ気づかなかった風邪に気づいてくれた)

紅城梨雅

(懐かしい…)

次の日

紅城梨雅

おはよう

藤林朔夜

おはよう

藤林朔夜

昨日は大丈夫だったか？

紅城梨雅

うん

紅城梨雅

もう大丈夫

紅城梨雅

心配かけちゃったみたいで、ごめんね

藤林朔夜

いや

藤林朔夜

大丈夫なら良かった

紅城梨雅

…そうだ

紅城梨雅

霧隠さんって…

藤林朔夜

…！

霧隠才蔵

俺がどうかした？

紅城梨雅

え…！？

紅城梨雅

あ

紅城梨雅

昨日はありがとうございました…

紅城梨雅

保健室まで連れて行ってくれて…

霧隠才蔵

別に

霧隠才蔵

一応隣の席だし

霧隠才蔵

…そうだ

霧隠才蔵

今日放課後空いてる？

紅城梨雅

え…？

紅城梨雅

(それって…)

紅城梨雅

(いや…考えすぎだよね)

紅城梨雅

(霧隠さんが私を呼ぶなんてお店の事ぐらいだよね)

紅城梨雅

(どうせ空いてるし…)

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

空いてますよ

霧隠才蔵

じゃあ放課後校門で

紅城梨雅

はい

ねぇねぇ

紅城さん

紅城梨雅

？

紅城梨雅

どうかしましたか？

ここじゃ言いずらいの…

誰も居ない場所で良い？

紅城梨雅

(なんの用だろう？)

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

わかりました

紅城梨雅

朔ちゃん

紅城梨雅

ちょっと行ってくるね

藤林朔夜

…あぁ

藤林朔夜

気をつけろよ

紅城梨雅

うん

校舎の裏

紅城梨雅

(この学校の裏ってこうなってたんだ…)

紅城梨雅

(あ、感動してる場合じゃなくて…)

紅城梨雅

用って、どうしたの？

…分からないの？

紅城梨雅

え…？

何で私は駄目でお前はいいわけ！？

酷い！

普通じゃないわ！

……やっちゃって

ガサガサ

紅城梨雅

！？

ほんとにどうやってもいいんだな？

えぇ

好きにしちゃって

へへっ

優しくしてやるよ

紅城梨雅

な…！

紅城梨雅

何を…するんですか…！

こういう事だよ！

紅城梨雅

きゃっ！

紅城梨雅

や、やめ…っ

ピクッ

霧隠才蔵

…！

真田幸村

才蔵！？

真田幸村

何処に行くんだ？！

紅城梨雅

や……！

紅城梨雅

(気持ち悪い…！)

紅城梨雅

(こんなの…嫌っ！)

何してんの

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(男の人の声…？)

な、なんなんだ！

いや、それこっちの話なんだけど

俺の朝寝邪魔しないでよねー

紅城梨雅

(この声…もしかして…！)

紅城梨雅

弦ちゃん！？

藤林弦夜

あれ

藤林弦夜

ちょー久しぶりじゃん

紅城梨雅

だ、だね

く…っ

藤林弦夜

はぁぁ

藤林弦夜

めんどくせーのに付きまとわれてるな

紅城梨雅

そう…かな？

藤林弦夜

大丈夫だったか

紅城梨雅

うん…

紅城梨雅

ありがとうね

藤林弦夜

別に

藤林弦夜

朔に怒られても面倒だし

紅城梨雅

助けてくれたのは有難いんだけど…

紅城梨雅

何でココにいるの？

藤林弦夜

朝寝

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

…まさか毎日？

藤林弦夜

んなわけないだろ

藤林弦夜

気持ちいい日だけな

紅城梨雅

それってほぼ毎日なんじゃ…

紅城梨雅

テストとか大丈夫なの？

藤林弦夜

俺って成績優秀だからさー

紅城梨雅

……………

藤林弦夜

…てことで

藤林弦夜

こんど借り返せよ〜

紅城梨雅

え、ちょっと…

霧隠才蔵

朔夜のお兄さん？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

霧隠さん！？

霧隠才蔵

何された

紅城梨雅

え…いえ…

紅城梨雅

特に…それと言った…ことは…

霧隠才蔵

……そ

紅城梨雅

あの…変なこと聞きますけど…

紅城梨雅

私って…普通じゃないんですか…

霧隠才蔵

は？

紅城梨雅

普通じゃないって言われて…

霧隠才蔵

他人から見た普通は知らないけど

霧隠才蔵

お前さんの存在的には普通じゃないと思うけど

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

(やっぱり私は普通じゃないんだ…)

霧隠才蔵

さっさと戻るよ

霧隠才蔵

HR始まる

紅城梨雅

はい…

藤林弦夜

ふーん

藤林弦夜

なるほどねー

ふふっ

やっぱりあの二人は可愛いよね

藤林弦夜

あれ

藤林弦夜

謙信さんじゃん

藤林弦夜

謙信さんも朝寝？

上杉謙信

ここは暖かくて気持ちいいから

上杉謙信

寝はしないけどね

藤林弦夜

兼続さんに怒られるんじゃない？

上杉謙信

大丈夫

上杉謙信

兼続は高いところが─

藤林弦夜

あ、兼続さんだ

上杉謙信

え…

直江兼続

何やってるんですか！

直江兼続

あなたって人は！

藤林弦夜

(めんどくせーからこっそり帰っちゃ─)

直江兼続

弦夜

直江兼続

あなたもですよ！

藤林弦夜

げ…

放課後

校門前

紅城梨雅

(ここだよね…)

紅城梨雅

(あれ…何処に居るんだろう…？)

霧隠才蔵

こっち

紅城梨雅

え…！？

紅城梨雅

(いつの間に！？)

霧隠才蔵

早く

霧隠才蔵

アイツらに見つかったら厄介だから

紅城梨雅

は、はい…！

紅城梨雅

(アイツらって誰の事なんだろう？)

紅城梨雅

(今日のあの子の事かな…？)

数分後

カフェ

紅城梨雅

(何でカフェに…)

霧隠才蔵

話があるんだけどさ

霧隠才蔵

仮の彼女になってくれる？

紅城梨雅

…え？

紅城梨雅

彼女…？

紅城梨雅

仮の…？

紅城梨雅

……………

紅城梨雅

えぇっ！？

紅城梨雅

な、なんでですか！？

霧隠才蔵

叔父さんの知り合いからさ縁談きててさ

紅城梨雅

(縁談…？)

霧隠才蔵

そういうの面倒臭いし断ったんだけどさー

霧隠才蔵

しつこくて厄介なんだよね

紅城梨雅

え…それ私なんかで良いんですか…？

霧隠才蔵

ほんとに自己評価低いよね

霧隠才蔵

クラスの大半がお前さんに好意を寄せてると思うけど

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

そんなわけないですよ…！

霧隠才蔵

それに誰にでも声掛けてるわけじゃないし

紅城梨雅

え…

霧隠才蔵

お前さんだから頼めるんだけど

ドキッ

紅城梨雅

(それって…)

紅城梨雅

あ…え、っと…

紅城梨雅

あの…私なんかで…

紅城梨雅

良ければ……

霧隠才蔵

…ありがと

紅城梨雅

(あ…)

紅城梨雅

(初めて…)

初めて見た心からの笑顔

胸が高鳴っていくのは自分が1番分かってて

気づいてしまった

いや─

気づくしかなかった

紅城梨雅

(私、霧隠さんの事が…)

紅城梨雅

(好きなんだ…)

霧隠才蔵

これから夕霧に行くから

紅城梨雅

えっ…私は─

霧隠才蔵

着いてきて

紅城梨雅

は、はい！

夕霧別館

紅城梨雅

(こんな所あったんだ…)

紅城梨雅

(こっちは霧隠さんの家なのかな)

霧隠才蔵

そんなキョロキョロしてると置いてくよ

紅城梨雅

あ、待ってください…！

紅城梨雅

(こんな広い場所で迷子なんてやだ…！)

霧隠さんの部屋

紅城梨雅

わぁぁ…

紅城梨雅

すごく広いですね！

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

仮彼女のことは叔父さん知ってるから

紅城梨雅

あ、そうなんですね

紅城梨雅

(なら少しは安心かな)

霧隠才蔵

これから縁談までの毎日下校一緒だから

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(ま、毎日！？)

霧隠才蔵

学校ではこの関係秘密ね

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

(朔ちゃんにも秘密か…)

紅城梨雅

(大丈夫かな)

霧隠才蔵

梨雅

紅城梨雅

っ…////

紅城梨雅

(名前呼びも…！？)

紅城梨雅

ど、どうしたんですか…？

紅城梨雅

さ、さ…才蔵さん…

霧隠才蔵

ふっ…

霧隠才蔵

上出来

紅城梨雅

(これも慣れないといけないんだ…！)

紅城梨雅

(結構大変なのかも…)

紅城梨雅

あ…

霧隠才蔵

何？

紅城梨雅

私、さ、才蔵さんの昔の話を聞きたいです！

霧隠才蔵

昔の俺…？

少し目を見開いた才蔵さんは

ほのかに苦笑し、

静かに言葉を紡いだ─

霧隠才蔵

俺の昔か…

霧隠才蔵

程々に楽しかったよ

霧隠才蔵

4歳くらいに親が事故にあって亡くなったけどね

紅城梨雅

っ…！

紅城梨雅

ぁ…無理には…！

霧隠才蔵

…大丈夫

霧隠才蔵

もう心でも理解してるから

紅城梨雅

そう…なんですね…

霧隠才蔵

まあ親が居なくなった後は大変だったよ

霧隠才蔵

親族なんてそんなに居なかったし

霧隠才蔵

小さかったし、蛍も居るし

霧隠才蔵

孤児院に入るかと思ったよ

霧隠才蔵

4歳児ながらにね…

紅城梨雅

(凄く悲しそう…)

紅城梨雅

(本当はまだ心の傷は治ってないんじゃ…)

霧隠才蔵

そん時に拾ったって言い方もアレだけど

霧隠才蔵

唯一手を差し出してくれたのが叔父さん

霧隠才蔵

幸せな生活に戻ると思ってたよ

霧隠才蔵

愛情は、それなりに注がれてたと思うけどさ

霧隠才蔵

夕霧の手伝いが酷くて

霧隠才蔵

まぁでも、半年もすれば慣れて｢当たり前｣になったけどね

紅城梨雅

(…もう─)

ギュッ

霧隠才蔵

…！

霧隠才蔵

何の真似？

紅城梨雅

(1人で傷ついてほしくない…)

紅城梨雅

(才蔵さんの分の傷も受け持ってあげたい…)

紅城梨雅

(…なんて偽物の彼女が言ったら可笑しいかな)

紅城梨雅

…人のぬくもりは心を落ち着かせてくれるんです

紅城梨雅

だから…

紅城梨雅

そんな顔しないでください…っ

紅城梨雅

才蔵さんには笑顔でいてもらいたいんですっ…！

泣いても困らせるだけ

頭で理解はできる…でも

体が言うことを聞いてくれない…

才蔵さんには笑顔だから

紅城梨雅

っ…

霧隠才蔵

まったく…

紅城梨雅

(あ…)

霧隠才蔵

何お前さんが泣いてるの

霧隠才蔵

普通は泣くの俺じゃない？

その時見せられた笑顔は

今までで1番柔らかくて

輝いていた

紅城梨雅

だって…っ

紅城梨雅

うぅ…っ

霧隠才蔵

はいはい…

霧隠才蔵

もう分かったから

霧隠才蔵

泣き止んで？

紅城梨雅

はい…っ

数分後

霧隠才蔵

落ち着いた？

紅城梨雅

…はい

紅城梨雅

(才蔵さんの前で泣き喚いちゃってちょっと恥ずかしいな…)

ギュッ

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

人のぬくもりは心を落ち着かせてくれる

霧隠才蔵

でしょ？

紅城梨雅

はい…

霧隠才蔵

そろそろ遅いし帰る？

紅城梨雅

はい…

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

じゃあ送るから

紅城梨雅

えっ…？

紅城梨雅

大丈夫ですよ…！

霧隠才蔵

こんな時間に女の子1人で帰らせる訳にもいかないし

紅城梨雅

(そういうものなのかな？)

紅城梨雅

それじゃあ…

紅城梨雅

よろしくお願いします…

霧隠才蔵

ん

紅城家の家の前

紅城梨雅

ありがとうございました…

霧隠才蔵

うん

霧隠才蔵

また明日

紅城梨雅

はい…！

紅城梨雅

気をつけて！

霧隠才蔵

ん

紅城梨雅

(行っちゃった…)

家

紅城梨雅

ただいまー

母

えっ！

母

ちょっと待って！？

母

りーちゃん霧隠さんの息子さんと付き合ってるの！？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

付き合ってないよ！

紅城梨雅

ただの友達だよ…

母

あら、そうなの？

母

私はお似合いだと思うんだけどな〜

紅城梨雅

もう…！

紅城梨雅

変なこと言わないでよ…

母

あら〜

母

照れちゃって〜

母

可愛いわね！

紅城梨雅

お母さんったら…

母

ふふっ

母

あ、そうだ

母

ちょっと買い物に行ってくるけど良い？

紅城梨雅

え、1人で大丈夫なの？

紅城梨雅

お母さん方向音痴じゃ…

母

大丈夫！

母

近くのスーパーだから

紅城梨雅

うん…

紅城梨雅

気をつけてね

紅城梨雅

道が分からなくなったら連絡して

母

ふふっ

母

これじゃあどっちが母親か分からないね

母

じゃあ行ってくるね〜

紅城梨雅

はーい

バタン

紅城梨雅

……暇だな

紅城梨雅

宿題でもやるか…

約2時間後

紅城梨雅

(あれ？)

紅城梨雅

(もうこんな時間…)

紅城梨雅

(流石にお母さん遅くない？)

紅城梨雅

(連絡してみよ)

紅城梨雅

お母さん？

紅城梨雅

大丈夫？

紅城梨雅

今どこにいるの？

紅城梨雅

(おかしい…)

紅城梨雅

(いつもはすぐ既読がつくのに…)

紅城梨雅

(迷子かな…？)

紅城梨雅

(ちょっとスーパーに行ってみよ)

スーパー前

紅城梨雅

な、何で…

紅城梨雅

ひ……人質…？

紅城梨雅

そんなわけ…

信じられないと思うが本当なんだ…

今、警察が人質解放の条件を聞き出している所だ…

紅城梨雅

そんな…

紅城梨雅

嘘…だよ…

紅城梨雅

うん…嘘…だよね

紅城梨雅

(だってお母さんが…)

紅城梨雅

(少し前に笑ってたお母さんが…？)

霧隠才蔵

梨雅…

紅城梨雅

…！

紅城梨雅

才蔵…さん…

霧隠才蔵

たまたま通りかかったんだけど

霧隠才蔵

なにかあったの

紅城梨雅

お母さんが…人質に…っ

霧隠才蔵

っ…

バンッ！

紅城梨雅

！？

発砲したぞ！？

紅城梨雅

嘘……

紅城梨雅

やだ……

紅城梨雅

お母さん…っ！

撃たれた……？

紅城梨雅

ぇ…

紅城梨雅

お母さん…死んじゃったの…？

霧隠才蔵

っ…

発砲で─

そうか…

お嬢さん

紅城梨雅

え…

君のお母さんは…

ある子を庇って亡くなってしまった…ようです

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

酷いよ…っ

紅城梨雅

最後まで…勇敢でさっ

紅城梨雅

気まますぎるよ…っ！

ギュッ

紅城梨雅

才蔵さん…っ

霧隠才蔵

何…

紅城梨雅

もう私の大切なものを奪われたくないんですっ…

紅城梨雅

だから…っ

紅城梨雅

何処にもいかないでください…っ！

霧隠才蔵

…っ

紅城梨雅

何処にもいかないでください…っ！

霧隠才蔵

…っ

いつも笑顔なのに

いつも自立してるのに

霧隠才蔵

大丈夫…

霧隠才蔵

俺は何処にもいかないから

霧隠才蔵

大丈夫

こんなに弱々しくて

紅城梨雅

う…っ…

紅城梨雅

うぅ…

｢守りたい｣

そう思ってしまう

霧隠才蔵

落ち着いた？

紅城梨雅

はい…

紅城梨雅

何か…色々とすみません…

紅城梨雅

私…才蔵さんに迷惑かけちゃってるんじゃ……

霧隠才蔵

迷惑なわけないじゃん

霧隠才蔵

親が亡くなった苦しみは分かるからさ…

紅城梨雅

ありがとう…ございます…

霧隠才蔵

苦しくなったら誰かに連絡する事

霧隠才蔵

1人で抱えてたら何も出来ないからね

紅城梨雅

はい…

霧隠才蔵

それと…

霧隠才蔵

俺はお前さんの味方だから

紅城梨雅

…！

紅城梨雅

はい…！

霧隠才蔵

今日は家に帰りな

霧隠才蔵

送ってくから

紅城梨雅

…はい

霧隠才蔵

ん

梨雅の部屋

紅城梨雅

(ひとりぼっち…)

ひとりぼっちになった家は驚く程静かで

お母さんを失ったことを余計に感じてしまう

後悔と哀しさだけの心

後悔しても悲しんでも

お母さんが居なくなった

その事実は変わらないのに

紅城梨雅

(明日…どうしよう)

紅城梨雅

(分からないよ…)

次の日

紅城梨雅

今日どうしよう…

紅城梨雅

休んでも良いのかな…

紅城梨雅

ひとりじゃ分からない…

ピコン

紅城梨雅

才蔵さんから…？

霧隠才蔵

今日は来たくなかったら休みな

紅城梨雅

紅城梨雅

良いんですか…？

霧隠才蔵

大丈夫

霧隠才蔵

流石にそこまで厳しくないよ

紅城梨雅

そうなんですね…

紅城梨雅

今日は休みます…

霧隠才蔵

うん

霧隠才蔵

俺から言っとくから

紅城梨雅

ありがとうございます…

霧隠才蔵

お大事に

霧隠才蔵

幸村

真田幸村

真田幸村

どうしたんだ？

真田幸村

こんな時間に連絡とは珍しいな

霧隠才蔵

俺と紅城さん休むから

真田幸村

はっ！？

真田幸村

どうしてだ？

霧隠才蔵

いや、普通に具合い悪いだからだけど

真田幸村

大丈夫なのか？

霧隠才蔵

まあね

真田幸村

それにしても紅城さんと連絡取り合ってたんだな！

霧隠才蔵

そうだけど

霧隠才蔵

取り敢えずよろしく

真田幸村

あぁ！

真田幸村

任せておけ！

紅城梨雅

何か本当にだるくなってきた…

紅城梨雅

気持ちの問題かな…？

ピンポーン

紅城梨雅

…誰だろう

玄関

紅城梨雅

はぁーい…

霧隠才蔵

梨雅いる？

紅城梨雅

えっ…

霧隠才蔵

辛そうだけど大丈夫なの

紅城梨雅

は─

バタン

バタン

霧隠才蔵

！？

霧隠才蔵

入るからね

霧隠才蔵

！？

霧隠才蔵

梨雅！？

紅城梨雅

う…うぅ…

霧隠才蔵

息はある

霧隠才蔵

酷い風邪…？

紅城梨雅

……ん

紅城梨雅

あれ……

霧隠才蔵

おはよ

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

才蔵さん…！？

霧隠才蔵

玄関に倒れてたから

紅城梨雅

え…玄関に…

紅城梨雅

！

紅城梨雅

ありがとうございます…！

霧隠才蔵

別に

霧隠才蔵

それより体大丈夫なの

紅城梨雅

はい…

紅城梨雅

でも何で私の家に…

霧隠才蔵

どうせ休みだし特訓しようと思ったけど

霧隠才蔵

風邪みたいだし帰るから

グイッ

紅城梨雅

(袖引いちゃった…)

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

離れたくない…です

紅城梨雅

今日は……

紅城梨雅

隣にいて欲しい…です

霧隠才蔵

……！

霧隠才蔵

大胆だね

紅城梨雅

！！

紅城梨雅

そ、そ、そんなつもりは…！

霧隠才蔵

…良いよ

霧隠才蔵

我儘、付き合ってあげる

紅城梨雅

(怒ってないかな…)

霧隠才蔵

なんて顔してんの

紅城梨雅

へへっ…

紅城梨雅

才蔵さんには全部お見通しなんですね…

霧隠才蔵

お前さん分かりやすいから

霧隠才蔵

…そんな事より早く寝な

紅城梨雅

はい…

紅城梨雅

さ、才蔵さん…

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

私…このままの関係は嫌です…

紅城梨雅

私、才蔵さんの事が─

霧隠才蔵

…しーっ

紅城梨雅

え…？

霧隠才蔵

その先は俺から言わせてよ

霧隠才蔵

俺と共に歩む覚悟はある？

紅城梨雅

はい！

霧隠才蔵

そ…

紅城梨雅

私、才蔵さんの事が好きです…

紅城梨雅

今まで恋なんて分からなかったけど

紅城梨雅

恋って幸せなんですね

紅城梨雅

…好きです

霧隠才蔵

……！

紅城梨雅

大好き…

霧隠才蔵

…どういう夢見てんだか

霧隠才蔵

そんな好き好き言って

霧隠才蔵

男と2人きりって分かってないでしょ…

紅城梨雅

ん…

霧隠才蔵

(俺だって1人の男なんだけどな)

紅城梨雅

──ん…

霧隠才蔵

起きた？

紅城梨雅

はい…おはようございます…

霧隠才蔵

寝言で告白するって随分と大胆な事をするね

紅城梨雅

っ！？

紅城梨雅

こ、告白！？

霧隠才蔵

｢好き｣｢大好き｣ってね

紅城梨雅

~~~っ////

紅城梨雅

わ、忘れてください！

霧隠才蔵

あまりにも大胆だったから

霧隠才蔵

忘れられないかも

紅城梨雅

何が何でも忘れてください！！

霧隠才蔵

どうかな

紅城梨雅

(いじわる！)

霧隠才蔵

まあ努力はしとくよ

霧隠才蔵

何か食べたいものとかある？

紅城梨雅

え…

霧隠才蔵

お腹空いてるでしょ

紅城梨雅

…空いてはいます

霧隠才蔵

何かリクエストは？

紅城梨雅

お粥…

紅城梨雅

お粥が食べたいです…

霧隠才蔵

はいよ

霧隠才蔵

じゃあ作ってくる

紅城梨雅

ありがとう…ございます

紅城梨雅

(やっぱり才蔵さんって優しい…)

紅城梨雅

(あれ…)

紅城梨雅

(そういえば才蔵さん顔少し赤かった？)

キッチン

霧隠才蔵

(はぁ…)

霧隠才蔵

(ほんと不意打ちじゃん…)

霧隠才蔵

……………

霧隠才蔵

(でもまあ、偽りだらけの関係もあと少しだし)

霧隠才蔵

(いっか)

霧隠才蔵

おまたせ

紅城梨雅

！

紅城梨雅

ありがとう…ございます

霧隠才蔵

はい

霧隠才蔵

あーん

紅城梨雅

っ…

霧隠才蔵

落ちちゃうよ？

紅城梨雅

(恥ずかしいけど…断るのも…)

紅城梨雅

(仕方…ないよね…)

紅城梨雅

ん…

紅城梨雅

美味しい…

霧隠才蔵

それは良かった

紅城梨雅

流石、夕霧で働いているだけありますね…

霧隠才蔵

それを言ったらお前さんだってそうなんじゃない？

紅城梨雅

才蔵さんよりは上手くないですよ…

紅城梨雅

才蔵さんのご飯は絶品です…！

紅城梨雅

それを独り占めしてるなんて幸せですね…

霧隠才蔵

…そう

霧隠才蔵

俺も今梨雅の事独り占めしてるね

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

(不意打ちすぎてドキドキ止まらない…)

紅城梨雅

(…でもこれも縁談を断る為の｢演技｣…)

紅城梨雅

(それが終わったら才蔵さんは霧隠さんで…)

紅城梨雅

(もう…戻れなくなる…)

霧隠才蔵

…………

霧隠才蔵

縁談の日…決まったからね

紅城梨雅

…！

紅城梨雅

いつ…ですか？

霧隠才蔵

1ヶ月後

紅城梨雅

あと…残りの日も短いんですね…

紅城梨雅

それまでに完璧な彼女…なりますね

霧隠才蔵

………

紅城梨雅

(そうだよ…)

紅城梨雅

(舞い上がっちゃ駄目だよ…)

紅城梨雅

(お飾りの彼女だから…)

紅城梨雅

(才蔵さんは…)

紅城梨雅

(私の彼氏じゃなくて…)

紅城梨雅

(隣の席の人で)

紅城梨雅

(私じゃない人の彼氏…)

霧隠才蔵

…お前さんは今ある人に好きだって言われたら

霧隠才蔵

どうする？

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

(勘違い…させないで…)

紅城梨雅

(期待しちゃうよ…)

紅城梨雅

(好きが…)

紅城梨雅

わ、私だったら…

紅城梨雅

才蔵さんと…付き合ってるからって…

紅城梨雅

断り…ます

霧隠才蔵

…そ

紅城梨雅

才蔵さんは…？

霧隠才蔵

俺…ね

霧隠才蔵

どうだろうね

紅城梨雅

私にだけ言わせて…

紅城梨雅

酷いですよ…

霧隠才蔵

…………

紅城梨雅

才蔵さん…？

霧隠才蔵

…！

紅城梨雅

大丈夫ですか…？

霧隠才蔵

大丈夫

霧隠才蔵

…あのさ

ガチャ

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

誰か…来たの…？

霧隠才蔵

見てくるから待ってて

紅城梨雅

…私も…！

霧隠才蔵

お前さんは駄目

霧隠才蔵

俺そんなにヤワじゃないからさ

紅城梨雅

気をつけて…ください…

玄関

霧隠才蔵

誰

藤林朔夜

才蔵…？

藤林朔夜

どうしてここに居るんだ

霧隠才蔵

看病してるからだけど

霧隠才蔵

朔夜こそ学校は？

藤林朔夜

終わって走ってきたんだ

霧隠才蔵

(わー熱心なこと)

紅城梨雅

(あれ…)

紅城梨雅

(朔ちゃんから家に来るって連絡来てたんだ…)

紅城梨雅

(全然気づかなかった…)

紅城梨雅

(朔ちゃん変なことしてないかな…)

玄関

紅城梨雅

朔ちゃん…

紅城梨雅

才蔵さん…

霧隠才蔵

！？

藤林朔夜

！？

霧隠才蔵

なんで此処に居るの

霧隠才蔵

寝ててって言ったよね

紅城梨雅

…っ

紅城梨雅

す、すみません…

紅城梨雅

朔ちゃんの事…心配で…

霧隠才蔵

…………

藤林朔夜

お前…

藤林朔夜

おばさんは…どうしたんだ

藤林朔夜

迷子なら俺が連れ戻す─

紅城梨雅

ううん…出来ないの…もう…

紅城梨雅

っ…

才蔵さんと朔ちゃん、家が歪んで

意識が─

紅城梨雅

すみ…ま…せん…

霧隠才蔵

！

霧隠才蔵

！

霧隠才蔵

無理して…！

梨雅の部屋

藤林朔夜

お前に聞きたいことがいくつかある

霧隠才蔵

………

藤林朔夜

今日休んだのは梨雅の看病か？

霧隠才蔵

そうだけど

藤林朔夜

…そうか

藤林朔夜

お前たちは付き合ってるのか？

霧隠才蔵

………

霧隠才蔵

お前、幼馴染だったよね

藤林朔夜

…質問しているのは俺だが

霧隠才蔵

起きてから話す

藤林朔夜

そうか

藤林朔夜

これは今だから幼馴染として言う

藤林朔夜

梨雅を傷つけたら例え梨雅が許しても

藤林朔夜

俺が許さない

霧隠才蔵

(幼馴染として…ね)

あと俺も許せないかなー？

霧隠才蔵

何してんの

藤林朔夜

何故ここにお前がいる

藤林弦夜

暇だったし風邪って聞いたから

藤林弦夜

才蔵も一緒？

霧隠才蔵

想像に任せる

藤林弦夜

つーか朔も来てんだな

藤林弦夜

意外

藤林朔夜

幼馴染の心配は当たり前だろ

紅城梨雅

……ん

紅城梨雅

………ん

霧隠才蔵

！

紅城梨雅

あ…れ…

紅城梨雅

朔ちゃん…？

紅城梨雅

弦ちゃん…？

紅城梨雅

なんで…

藤林朔夜

お見舞いだ

紅城梨雅

ふふっ…

紅城梨雅

ありがとうね…

ピーンポーン

霧隠才蔵

見てくる

紅城梨雅

お願いします…

玄関

霧隠才蔵

どなたですか

才蔵？！

霧隠才蔵

げ…

霧隠才蔵

おかえりくださーい

真田幸村

悲しいこと言うな！

真田幸村

才蔵に用があって来たんだ

霧隠才蔵

てか何で家知ってるの

真田幸村

兄上に言ったら教えてくれたぞ！

霧隠才蔵

(こわ…)

真田幸村

そういうお前こそ何で紅城さんの家に居るんだ？

真田幸村

風邪大丈夫なのか？

霧隠才蔵

別に

霧隠才蔵

てか俺風邪ひいてないし…

あの真田さん1人じゃないんですが

霧隠才蔵

(この声、直江兼続？)

霧隠才蔵

(どこまで関係あんの…)

霧隠才蔵

今開けます

霧隠才蔵

幸村は後でメールして

真田幸村

え、それじゃあ意味が無いんだが…

霧隠才蔵

じゃあ帰ったら聞くから

真田幸村

…あぁ！

直江兼続

お邪魔します

霧隠才蔵

(やっぱか…)

直江兼続

やはり霧隠でしたか

霧隠才蔵

お久しぶりです

直江兼続

梨雅の様子はどうですか？

霧隠才蔵

風邪ですね

霧隠才蔵

3日もあれば治るんじゃないですかね

直江兼続

良かった…

直江兼続

来たばかりですが時間がないので…

直江兼続

これを梨雅に渡してください

霧隠才蔵

相変わらず人使いが荒いことで

直江兼続

それはお互い様でしょう

直江兼続

それでは梨雅によろしく伝えてください

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

これ兼続さんから

紅城梨雅

つぐにいから…？

紅城梨雅

なんだろ…

藤林弦夜

あれじゃね？

藤林弦夜

煮りんご

藤林朔夜

あーあれか

紅城梨雅

あっ、本当だ

紅城梨雅

久しぶり…

紅城梨雅

才蔵さんも食べますか？

霧隠才蔵

お前さんが貰ったんだら別にいいよ

紅城梨雅

朔ちゃんと弦ちゃんは？

藤林朔夜

いや、お前が食べていい

藤林弦夜

じゃあ俺食べるー！

紅城梨雅

え、そこは普通譲らない？

藤林弦夜

聞いたのはお前じゃん？

紅城梨雅

まあ…そうだけど…

紅城梨雅

はい、1つね

藤林弦夜

どーも

紅城梨雅

ん…美味しい…

紅城梨雅

(やっぱり、つぐにいは料理が上手だな…)

藤林朔夜

そうだ霧隠

藤林朔夜

お前と梨雅の関係の話が途中だったな

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

さ、さ、さ、さ、朔ちゃん？！

藤林弦夜

動揺しすぎだろ…

霧隠才蔵

話して良い？

紅城梨雅

…はい

紅城梨雅

才蔵さんが良いなら

霧隠才蔵

そ…

霧隠才蔵

俺たちは付き合ってる

藤林朔夜

！

藤林弦夜

おー

霧隠才蔵

って言っても仮だけど

藤林弦夜

え

霧隠才蔵

縁談断るための仮彼女

藤林朔夜

本当なのか？梨雅

紅城梨雅

うん…

紅城梨雅

私も仮彼女って事は承知でやってるの…

紅城梨雅

才蔵さんを責めないであげて…

藤林朔夜

っ…そうか

藤林朔夜

この事を知ってるのは

霧隠才蔵

お前たちだけ

霧隠才蔵

だから秘密にしといて

霧隠才蔵

まあでも下校一緒だから

霧隠才蔵

噂は出ると思うけど

藤林朔夜

分かった

紅城梨雅

特に弦ちゃんは絶対だから

藤林弦夜

はいはい

霧隠才蔵

朔、これで充分？

藤林朔夜

あぁ…

藤林弦夜

はいはーい質問ー

紅城梨雅

？

藤林弦夜

おばさんは？

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

お母…っさんは…

霧隠才蔵

…ゆっくりで良いから

霧隠才蔵

落ち着いて深呼吸…

紅城梨雅

は…っい…

紅城梨雅

(大丈夫…2人とも昔からの仲だから…)

紅城梨雅

(信用はしてるけど…2人は傷つかないかな…？)

紅城梨雅

(でも…言わない方が…)

紅城梨雅

お母さん…は

紅城梨雅

居ないの…

藤林弦夜

仕事？

紅城梨雅

っ…ううん…

紅城梨雅

この世に…っ居ないの…

藤林朔夜

は…

藤林弦夜

嘘だろ…

紅城梨雅

昨日…

紅城梨雅

スーパー…で

藤林朔夜

スーパー……

藤林朔夜

人質のやつか？

紅城梨雅

…うん

紅城梨雅

ごめんね…

藤林弦夜

なんでお前が謝るんだ？

藤林朔夜

お前は何も悪くない

紅城梨雅

っ…でも…

紅城梨雅

私っ…が…気づいてたら…っ

紅城梨雅

こんな…ことには…！

霧隠才蔵

それは違う

霧隠才蔵

自分を責めてもなんの意味もない

霧隠才蔵

お前さんのする事は自分を責めることじゃない

霧隠才蔵

今を生きて笑顔で一生を過ごす事

霧隠才蔵

お母さんもそれを願ってるんじゃない？

紅城梨雅

…！

藤林朔夜

お前…まさか…

霧隠才蔵

そ、多分そのまさか

霧隠才蔵

俺も昔親亡くしたから

霧隠才蔵

痛いほど気持ちが分かるから

紅城梨雅

ありがとう…ございます…

藤林朔夜

これからどうするんだ？

藤林朔夜

生活費とか色々あるだろ…

紅城梨雅

…どうなるんだろうね

紅城梨雅

いとことか居ないし…

紅城梨雅

(本当にどうしたらいいのか全く分からない…)

藤林弦夜

誰かの家行けばいいんじゃねー？

紅城梨雅

え

紅城梨雅

いやいや…

紅城梨雅

そんな迷惑かけられないよ…

紅城梨雅

せめてお父さんが居てくれればな…

紅城梨雅

昔…離婚してそのままだし…

紅城梨雅

もう何なんだろうね…

藤林朔夜

誰か知り合いとかで居ないのか？

紅城梨雅

うーん…

藤林弦夜

兼続さん家は？

紅城梨雅

つぐにい一人暮らしだから大変だよ…

藤林弦夜

じゃー俺ん家は？

紅城梨雅

へっ？

紅城梨雅

いやいやいや

紅城梨雅

それこそ迷惑でしょ

藤林弦夜

俺は別に良いけどー？

紅城梨雅

弦ちゃんは良くても親がダメでしょ…

藤林朔夜

俺としては別にいいんだが…

藤林朔夜

親がな…

藤林弦夜

あの人たち視野狭いからなー…

紅城梨雅

どうしよう…

藤林弦夜

あ、才蔵の家は？

紅城梨雅

えっ！？

霧隠才蔵

は…

紅城梨雅

そんなの駄目だよ！

紅城梨雅

そこまで迷惑かけれない！！

霧隠才蔵

幸村の家は？

紅城梨雅

え？

紅城梨雅

真田…さんの？

霧隠才蔵

あいつの家広いし

紅城梨雅

で、でも…

紅城梨雅

真田さんに迷惑かけちゃいますし…

霧隠才蔵

本人に聞けばいいんじゃない？

ピーンポーン

紅城梨雅

えっと…

紅城梨雅

もしかして…真田さん？

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

呼んでおいた

紅城梨雅

タイミング完璧ですね…

霧隠才蔵

こっち来てもらうけどいい？

紅城梨雅

はい

真田幸村

(言われるまま来てしまっが…)

真田幸村

(女子の家に…っ)

真田幸村

(ここからどうすれば良いんだ…？)

真田幸村

お、才蔵からか…

真田幸村

っ…そのまま入れって…

真田幸村

あいつ…

真田幸村

ここか？

真田幸村

！？

紅城梨雅

あ

真田幸村

え、沢山いるんだな…？

藤林弦夜

どなた？

真田幸村

真田幸村だ

真田幸村

お前は？

藤林弦夜

藤林弦夜

紅城梨雅

ここまで来てもらってごめんね…

真田幸村

？

真田幸村

才蔵？

霧隠才蔵

話がある

真田幸村

なんだ？改まって

霧隠才蔵

お前の家の部屋空いてる？

真田幸村

詳しい事はよく分からないが…

真田幸村

多分空いてると思うぞ

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

ちょっと色々あって梨雅の事住まわせてくれない？

真田幸村

……………

真田幸村

はっ！？

真田幸村

ちょ、ちょっと待ってくれ！

真田幸村

この事、紅城は良いのか？！

紅城梨雅

あ…

紅城梨雅

真田さんが…迷惑じゃなかったら…

紅城梨雅

無理にお願いするつもりはないです！

霧隠才蔵

だって

真田幸村

30秒…待ってくれ…

真田幸村

兄上！！

真田信幸

真田信幸

どうかしたの？

真田幸村

女子が住んでも良いですか！

真田信幸

真田信幸

ん？

真田信幸

どういうこと？

真田幸村

何か色々ある見たいで才蔵と紅城さんに言われて…

真田信幸

うーん

真田信幸

父が許してくれるかな

真田幸村

何とかします！

真田信幸

じゃあこれから家に連れてきてくれる？

真田信幸

才蔵も一緒に

真田幸村

わかりました！

真田幸村

これから家に行くみたいだぞ

霧隠才蔵

は

霧隠才蔵

風邪だけど

真田幸村

え

紅城梨雅

あ…頑張ります…

藤林朔夜

…俺も途中まで行く

藤林弦夜

そー？

藤林弦夜

じゃあ俺も行くわー

紅城梨雅

ありがとう…

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

早く行くよ

数十分後

紅城梨雅

ここが…

藤林朔夜

俺はここで帰るから

藤林朔夜

頑張れ

紅城梨雅

うん…！

真田幸村

それじゃあ兄上の所に─

あ、やっぱり女の子だったんだね

紅城梨雅

！？

真田幸村

あ、兄上！？

紅城梨雅

(この方が信幸さん！？)

真田信幸

君が梨雅さんかな？

紅城梨雅

えっ、あ、はい！

真田信幸

何で知ってるか不思議？

紅城梨雅

ま、まあ…そうですね…

真田信幸

謙信と兼続から話よく聞くからね

紅城梨雅

同じクラスなんですね！

真田信幸

うん

真田信幸

幸村からメールで｢紅城さん｣って聞いてビックリしたけど

真田信幸

取り敢えず家入ろっか

紅城梨雅

(噂通り優しいんだな…)

客間

真田信幸

それで、家に住みたい理由

真田信幸

教えてくれるかな？

紅城梨雅

はい…

紅城梨雅

簡潔に言いますと…

紅城梨雅

私事ですが母が亡くなってしまったんです…

真田信幸

それは…

紅城梨雅

父を頼れば良いと思うかもしれませんが、

紅城梨雅

私が幼い頃、離婚しているのです…

紅城梨雅

私はまだ学生ですからアルバイトも限られてしまいます

紅城梨雅

なので相談したところ才蔵さんが

紅城梨雅

真田さんの家はと提案してくれたので今ここにいます

紅城梨雅

私事で我儘を言っているのは分かっています…

真田信幸

2つ聞いても良いかな

真田信幸

才蔵とは付き合ってるの？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

つ、付き合ってないです！

紅城梨雅

まだ友達です！

霧隠才蔵

まだ？

真田信幸

まだ…ね？

紅城梨雅

っ！？

紅城梨雅

そ、それは言葉のあやと言いますか？！

真田信幸

わかったよ

真田信幸

まだ付き合ってないんだね

紅城梨雅

っ…

真田信幸

それと

真田信幸

才蔵の家は？

霧隠才蔵

叔父さんが良く思わないんで

霧隠才蔵

残念ながら

紅城梨雅

(そうなんだ…)

紅城梨雅

(叔父さん厳しい方なのかな？)

真田信幸

うんうん…

真田信幸

なるほどね…

真田信幸

じゃあ父に説得しに行ってくるね

紅城梨雅

あ…お願いしちゃって…良いんですか？

真田信幸

うん

真田信幸

任せちゃって

紅城梨雅

お願いします…

紅城梨雅

ふぅ…

紅城梨雅

信幸さんっていい人ですね

霧隠才蔵

そうだね

紅城梨雅

兄弟っていいな…

紅城梨雅

羨ましい

紅城梨雅

才蔵さんは蛍くんと遊んだりするんですか？

霧隠才蔵

いや、あんまり

霧隠才蔵

休みの日こそ夕霧だし

紅城梨雅

あ…そうですよね

紅城梨雅

夕霧の料理美味しいですもんね！

霧隠才蔵

それにしても風邪どうなの

紅城梨雅

えっ？

紅城梨雅

あ…まあ大丈夫…ですよ

紅城梨雅

体も重くないですし

霧隠才蔵

それなら良いけど

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

(まただ…また気持ちが溢れる…)

紅城梨雅

(その笑顔も声も心配してくれる心も全て)

紅城梨雅

(私だけに向けてほしい…)

紅城梨雅

(やっぱり…好き…)

紅城梨雅

(こんなこと…願っても叶うはずが無い…)

紅城梨雅

(だって私は…仮彼女だから…)

霧隠才蔵

何考えてるの

紅城梨雅

っ…え？

霧隠才蔵

眉間にしわ寄ってたけど？

紅城梨雅

あ、すみません…

紅城梨雅

ちょっと今後の事を…

霧隠才蔵

そ

紅城梨雅

真田さんとは昔から仲良いんですか？

霧隠才蔵

まあ、そんな感じ

霧隠才蔵

…真田さんってのやめれば？

霧隠才蔵

信幸さんも｢真田さん｣だし

紅城梨雅

あ…じゃあ…

ガチャ

真田幸村

ここに居たんだな！

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

…驚かさないでよね

真田幸村

驚いたこと無いのに何を言ってる！

霧隠才蔵

1度や2度はあるんじゃない？

紅城梨雅

あ…真田さん

紅城梨雅

これからなんて呼んだらいいですか？

真田幸村

！？

真田幸村

い、いや…別になんでも…

紅城梨雅

えっと…じゃあ…

紅城梨雅

幸村さん…？

霧隠才蔵

ま、それでも良いんじゃない

真田幸村

それよりも風邪は大丈夫なのか？

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

多分もう大丈夫で─

紅城梨雅

(あ、れ？)

霧隠才蔵

幸村！

真田幸村

えっ

真田幸村

うぉぉ？！

真田幸村

大丈夫か？！

紅城梨雅

(え…幸村さんの…腕の中…？)

紅城梨雅

は……

紅城梨雅

(あれ…声が…)

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

取り敢えずソファに寝かせて

真田幸村

お、おぉ！

霧隠才蔵

っ…たく…

ガチャ

真田信幸

ただいまー

真田信幸

って、あれ？

真田信幸

大丈夫？

霧隠才蔵

それよりどうなりました？

真田信幸

それがね─

紅城梨雅

……ん

紅城梨雅

(ここどこ？)

紅城梨雅

(見たことない天井…)

紅城梨雅

(あ、そっか…客間で倒れて…)

紅城梨雅

(それで…？)

霧隠才蔵

起きた？

紅城梨雅

あ…はい…

紅城梨雅

またすみません…

霧隠才蔵

別に

霧隠才蔵

今に始まった事じゃないし

紅城梨雅

あはは…

紅城梨雅

信幸さんは…

霧隠才蔵

話聞いてきたから

霧隠才蔵

信幸さんが何とか交渉して

紅城梨雅

…………

霧隠才蔵

この家に住むことになった

紅城梨雅

えっ！

紅城梨雅

てことは…良いって事ですか？

霧隠才蔵

まあそうなるけど

霧隠才蔵

1つ問題があって

紅城梨雅

？

霧隠才蔵

ここ幸村の家の離の

霧隠才蔵

俺の家

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

さ、才蔵さんの家に！？

紅城梨雅

夕霧に住んでるんじゃ？！

霧隠才蔵

簡単に言うと

霧隠才蔵

こっちの方が俺の家だね

霧隠才蔵

向こうはあんまり帰らない

霧隠才蔵

お店に寄ってく感じ

紅城梨雅

そ、そうだったんですね…

霧隠才蔵

まあ家って言っても必要最低限しかないけど

紅城梨雅

(才蔵さんと同じ家…って…)

霧隠才蔵

体調は？

紅城梨雅

あ、もう大丈夫…です

霧隠才蔵

明日は学校行けそう？

紅城梨雅

はい！

霧隠才蔵

そ

紅城梨雅

…っふふ

霧隠才蔵

何笑ってんの？

紅城梨雅

だって才蔵さん、お母さんみたいなんですもん

紅城梨雅

私が咳をしたりするだけで

紅城梨雅

駆け寄ってきてくれて

紅城梨雅

心配してくれて

紅城梨雅

才蔵さんとそっくりです

霧隠才蔵

…まあお前さんはすぐ無理するから

霧隠才蔵

放っておけないのは嫌でも分かる

紅城梨雅

そうですか…？

霧隠才蔵

お腹空いてる？

紅城梨雅

はい！

霧隠才蔵

そ

霧隠才蔵

今回は雑炊ね

紅城梨雅

また美味しい料理を独り占めですね

霧隠才蔵

これから嫌でも｢独り占め｣だけどね

紅城梨雅

！

紅城梨雅

そうですね！

霧隠才蔵

ふっ…そうだね

霧隠才蔵

…ちょっと幸村のとこ行ってくる

霧隠才蔵

雑炊食べてて

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

……あの

霧隠才蔵

何？

紅城梨雅

えっと……トイレ…って…

霧隠才蔵

あぁ…

霧隠才蔵

この部屋出て右行ったらあるよ

紅城梨雅

ありがとう…ございます

紅城梨雅

…ん

紅城梨雅

雑炊やっぱり美味しい…

紅城梨雅

…でも

紅城梨雅

(才蔵さんが居た方が美味しい…)

紅城梨雅

(わがままになっちゃった…かな)

霧隠才蔵

…っ

霧隠才蔵

雨…降ってきたか…

霧隠才蔵

(取り敢えず…部屋に…)

紅城梨雅

暇だな…

紅城梨雅

話す相手居ないし…

ピコン

紅城梨雅

メール？

紅城梨雅

─っ

紅城梨雅

(これって…)

紅城梨雅

あ

紅城梨雅

雨…あんなに晴れてたのに…

霧隠才蔵

っ…！

霧隠才蔵

雨…早くやめよ…

数時間後

紅城梨雅

(あれ)

紅城梨雅

寝ちゃったんだ…

紅城梨雅

雨…まだ降ってる…

紅城梨雅

えっと…時計は─

紅城梨雅

え、もう8時！？

紅城梨雅

(才蔵さんは？)

紅城梨雅

取り敢えずトイレは居なかった…

紅城梨雅

仕方ない…一部屋ずつ探すか…

紅城梨雅

才蔵さん？

紅城梨雅

ここに居ますか？

霧隠才蔵

何？

紅城梨雅

(あ、ここに居たんだ…)

紅城梨雅

(良かった…)

霧隠才蔵

あぁ…そうか寝る場所…

霧隠才蔵

今から案内するから

紅城梨雅

(え？)

紅城梨雅

(あの場所でいいんだけど…)

ガチャ

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

っ……は…

紅城梨雅

才蔵さん？！

紅城梨雅

(熱？！)

紅城梨雅

(ベットに寝かせないと！)

紅城梨雅

大丈夫ですか…？

霧隠才蔵

…梨雅…？

霧隠才蔵

…──…

紅城梨雅

…？

紅城梨雅

あの…なんで物置に…

霧隠才蔵

出てってくれる？

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

才蔵…さん…？

霧隠才蔵

聞こえなかった？

霧隠才蔵

出てって

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

す、すみません…！

霧隠才蔵

………

紅城梨雅

(才蔵さん…怒ってたよね…)

紅城梨雅

(そうだよ…私のせいで風邪が…)

紅城梨雅

(明日…)

紅城梨雅

(いや…でも明日才蔵さん休んじゃうかもしれないし…)

紅城梨雅

(よし！)

次の日

紅城梨雅

！

紅城梨雅

あれ？！

紅城梨雅

もう朝？！

紅城梨雅

(才蔵さんは…！？)

紅城梨雅

あ…手紙？

なんで部屋の前で寝てるの

休んでも良いから

もし学校行くなら

遅刻って言っておくから

紅城梨雅

(遅刻…？)

紅城梨雅

(えっ、もう10時だったんだ…)

紅城梨雅

(早く学校行かないと…！)

学校

紅城梨雅

(着いたけど…)

紅城梨雅

(どうしよう…)

紅城梨雅

(授業中だから入りずらい…)

紅城梨雅

…？

紅城梨雅

(あれなんか足音…？)

ガラッ！

紅城梨雅

！？

真田幸村

うおっ！？！？

紅城梨雅

幸村さん！？

先生

紅城？

先生

来たのか

紅城梨雅

あっ、はいっ！

先生

席につけー

紅城梨雅

分かりました

紅城梨雅

(えっと幸村さんは─)

紅城梨雅

(あれ？居ない？)

紅城梨雅

(あっ…謝らないと…)

紅城梨雅

あ、あの…さ─

霧隠才蔵

………

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

(睨まれ…た…？)

紅城梨雅

(今、授業中だからだよね…)

紅城梨雅

(それとも昨日の事怒ってるのかな……)

紅城梨雅

(休み時間なら…)

休み時間

紅城梨雅

さ、才蔵さん…！

霧隠才蔵

…何

紅城梨雅

昨日─

霧隠才蔵

用事あるから

紅城梨雅

…え

紅城梨雅

(どうしよう…)

紅城梨雅

(嫌われちゃった…？)

お昼休み

紅城梨雅

朔ちゃん…

紅城梨雅

どうしよう…

藤林朔夜

そんなに酷いことしたのか？

紅城梨雅

多分そうだと思う…

紅城梨雅

最終的には無視されちゃったから…

なにか悩み事かな？

紅城梨雅

？

紅城梨雅

あ、謙信さん！

藤林朔夜

あぁ…

上杉謙信

やっほ〜

上杉謙信

それで、どうかしたのかな？

紅城梨雅

実は…

上杉謙信

才蔵くんが…

紅城梨雅

はい…

上杉謙信

うーん…

上杉謙信

そうだ！

上杉謙信

らぶれたー？

上杉謙信

で、呼び出せば良いんじゃない？

紅城梨雅

？

藤林朔夜

つまり

藤林朔夜

才蔵は毎日のように告白されてるから

藤林朔夜

ラブレターだと思わせて呼び出せば来る可能性が高いという事だ

紅城梨雅

うーん

紅城梨雅

よく分からないけど

紅城梨雅

それだったら話せるね！

紅城梨雅

でも私の字だとバレるし…

上杉謙信

それじゃあ私が書いてあげるよ

紅城梨雅

えっ！

紅城梨雅

お願いしちゃって良いんですか？

上杉謙信

うん

上杉謙信

私で良ければ力になるよ

紅城梨雅

ありがとうございます！

霧隠才蔵

…はぁ

霧隠才蔵

(今度は誰から…)

霧隠才蔵

(って、この字謙信さんじゃん…)

紅城梨雅

(あっ！来た！)

霧隠才蔵

(全く…何企んでんの…)

霧隠才蔵

…………

霧隠才蔵

は？

紅城梨雅

(絶対話するんだ…！)

紅城梨雅

(そろそろ出ても─)

動くな

紅城梨雅

！？

来い

紅城梨雅

やだ…っ！

ドンッ

紅城梨雅

(え…押し倒され…)

黙れ

紅城梨雅

(あ…)

紅城梨雅

(この面影…)

紅城梨雅

(1回襲われかけた…)

紅城梨雅

んっ！？

紅城梨雅

(えっ？！)

紅城梨雅

(唇…)

紅城梨雅

(やだ…やだ…！)

紅城梨雅

や…っ！

霧隠才蔵

は？

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

(才蔵…さん…)

紅城梨雅

(見られた……)

紅城梨雅

(もう…)

才蔵！

少し顔が良いからって調子に乗りやがって！

これから梨雅は俺のもんだ

紅城梨雅

…っ

紅城梨雅

(逃げたいのに…)

紅城梨雅

(腕を押されつけられちゃって…)

霧隠才蔵

…………のに

紅城梨雅

(え…？)

紅城梨雅

才蔵…さん…？

霧隠才蔵

…………

紅城梨雅

(殴った…？)

人を傷つけた才蔵さんは

心を殺してしまった

霧隠才蔵

は？

驚きが隠せなかった

口と口を合わせ

2人で居ることに

自分のことはどうでも良かった

守れなかった

それだけが心に重く刺され

気がつけば

人を傷つけていた

紅城梨雅

才蔵…さん…

霧隠才蔵

……………

ドタドタドタ

霧隠才蔵

───

先生

なんでこんな事したんだ！

先生

暴力がどれだけ人を傷つけるか！

先生

分かるか！？

霧隠才蔵

………………

紅城梨雅

(私のせい…だよね…)

紅城梨雅

才蔵…さん…

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

私…のせいで…っ

霧隠才蔵

お前さんのせいじゃないから

紅城梨雅

っ…え…？

才蔵ぉぉぉぉぉぉ！！！

紅城梨雅

！？

ガラッ！

霧隠才蔵

はぁ…

先生

真田さん！？

真田幸村

才蔵！

真田幸村

紅城！

紅城梨雅

幸村さん？

紅城梨雅

どうして…

真田幸村

先生

真田幸村

才蔵はなんの理由もなく人を殴るやつじゃない

真田幸村

昔から一緒にいるが、才蔵がこんな事をしたことは無い

真田幸村

なにか理由があったんだ！

先生

そ、そんな事を言われても…

紅城梨雅

あ、あの…っ

先生

紅城さん？

紅城梨雅

私…あの人に…

紅城梨雅

その…

霧隠才蔵

性行為？

紅城梨雅

は、はい…

紅城梨雅

口を…合わせ…られて…

先生

！？！？

先生

本当になのか？！

っ…

先生

霧隠さんと紅城さん

先生

真田さんは一旦帰って良いです

先生

霧隠さんはまた明日の朝職員室に来てください

廊下

紅城梨雅

(良かった…)

霧隠才蔵

幸村

真田幸村

ん？

真田幸村

どうしたんだ？

霧隠才蔵

先帰ってて

真田幸村

え、帰る所同じだぞ…？

霧隠才蔵

ちょっと寄る所あるから

真田幸村

そうか

真田幸村

それじゃあ、また後でな！

霧隠才蔵

ん

紅城梨雅

あの私は…

霧隠才蔵

着いてきて

紅城梨雅

え…？

体育館裏

霧隠才蔵

ここに呼び出されたけど

霧隠才蔵

なにかあったの

紅城梨雅

(そうだ…私才蔵さんに謝らないと…)

紅城梨雅

才蔵さん…

紅城梨雅

昨日

霧隠才蔵

……

紅城梨雅

勝手に部屋に入ってごめんなさい！

霧隠才蔵

…は？

紅城梨雅

昨日勝手に部屋に入ったから

紅城梨雅

今日私と口を聞いてくれなかったんですよね…

紅城梨雅

本当に才蔵さんには迷惑ばかりかけて…

紅城梨雅

もう償いきれないので…

紅城梨雅

私の事、煮るなり焼くなり好きにしてください…

霧隠才蔵

…………

グイッ

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(顔近い…っ)

霧隠才蔵

好きにして…って

霧隠才蔵

どういう意味か分かってる？

紅城梨雅

それは……その…

霧隠才蔵

さっきの奴みたいな事だってわかって言ってるの？

霧隠才蔵

俺だって男なんだけど

紅城梨雅

才蔵さ─

紅城梨雅

んっ！？

紅城梨雅

(手で口抑えられてる…？)

霧隠才蔵

……………

いつもの太陽のような優しい瞳は

1人の｢男｣の目をしている

紅城梨雅

(1人の…男…)

霧隠才蔵

─なんて

紅城梨雅

へ…？

霧隠才蔵

髪にほこりついてるよ

紅城梨雅

えっ…あ、ありがとう…ございます…？

霧隠才蔵

くくっ…

霧隠才蔵

顔真っ赤

紅城梨雅

！

紅城梨雅

そ、それは才蔵さんが…！

霧隠才蔵

俺が？

紅城梨雅

~~~っ！

紅城梨雅

才蔵さんが！

紅城梨雅

き、キス…してくるんじゃないかって…

紅城梨雅

思ったから……

紅城梨雅

才蔵さんのせいです！！

霧隠才蔵

…ま、帰る？

紅城梨雅

…はい

帰り道

紅城梨雅

そういえば昨日の熱は大丈夫でしたか？

霧隠才蔵

…まあね

紅城梨雅

？

霧隠才蔵

昨日の事知ってるのお前さんだけだから

霧隠才蔵

誰にも言わないどいて

紅城梨雅

え…？

霧隠才蔵

無駄な心配されても迷惑だしね

紅城梨雅

はい…分かりました

次の日

学校

紅城梨雅

…あれ？

紅城梨雅

(ここ私の机だよね…)

紅城梨雅

(なんでお花置いてあるんだろう)

紅城梨雅

うーん…

紅城梨雅

あ！

紅城梨雅

もしかしたら誰かが教室のお花新しくしようとして

紅城梨雅

私の机に置いたまま忘れちゃったのかな？

紅城梨雅

花瓶に入ってるしきっとそうだよね

紅城梨雅

窓側に飾っておけば良いかな？

紅城梨雅

あ、水入ってない…

紅城梨雅

結構葉っぱ生えてるな…

霧隠才蔵

…何してんの？

紅城梨雅

あ、才蔵さん

紅城梨雅

お、おはようございます

霧隠才蔵

うん、おはよ

紅城梨雅

(昨日の事があったからちょっと気まずいな…)

霧隠才蔵

で、何それ

紅城梨雅

この花ですか？

紅城梨雅

今日学校に来たら

紅城梨雅

私の机の上に置いてあったので飾ってみたんです

霧隠才蔵

…………

紅城梨雅

やっぱり葉っぱ切りすぎたと思いますよね…

霧隠才蔵

…いや、別にこれでも良いんじゃない？

紅城梨雅

それなら良かったです

霧隠才蔵

(あの花スノードロップに見えるけど…)

霧隠才蔵

(いじめって思わないのかね)

ホームルーム前

先生

おっ、花綺麗だな

先生

この花誰がここに置いてくれたんだ？

紅城梨雅

あ、私です

紅城梨雅

今日私の机の上に置いてあって

紅城梨雅

誰かが忘れちゃったみたいなので飾っておきました！

先生

え、あ、おぉ

先生

ありがとうな…？

ホームルーム後

教卓近く

先生

紅城

先生

お前いじめにあってないか？

紅城梨雅

え、いじめですか？

先生

あぁ

先生

あの花、今日の朝学校来て机に置いてあったんだな

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

でもやっぱり忘れちゃったんだと…

先生

あー…そうか

先生

まあさらに何かされたら先生か友達とかに相談するんだぞ

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

相談ですね

移動中

階段

藤林朔夜

課題出来てるか？

紅城梨雅

うん

紅城梨雅

バッチリ！

藤林朔夜

そうか…

紅城梨雅

？

紅城梨雅

朔ちゃん出来てないの？

藤林朔夜

そんな訳無いだろ

藤林朔夜

…お前できるだけ1人で行動するなよ

紅城梨雅

え？

藤林朔夜

まあ、良い

紅城梨雅

(1人で行動しなければ良いのかな)

藤林朔夜

1階だから早く行くぞ

紅城梨雅

うん！

ドンッ

紅城梨雅

え…？

藤林朔夜

梨雅！

紅城梨雅

───！

紅城梨雅

っと…

紅城梨雅

(何とか着地〜！)

藤林朔夜

大丈夫か？！

紅城梨雅

うん

紅城梨雅

なんともないよ

藤林朔夜

ならいいが…

紅城梨雅

でも誰が押してくれたんだろうね…

藤林朔夜

？

紅城梨雅

楽に階段降りられたから後でお礼してこようかな

藤林朔夜

え

紅城梨雅

？

放課後

紅城梨雅

(なんか今日は皆に心配されちゃったな…)

今日大変だったって聞いたわよ

紅城梨雅

？

紅城梨雅

(見た事ない人だけど…)

紅城梨雅

あの…どちら様でしょうか

紅城梨雅

(制服じゃないし教師でもない…)

ふふっ

そう警戒しないで？

貴方と話がしたいの

梨雅ちゃん

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

…分かりました

ふふっ

物分りのいい子で助かるわ

じゃあ着いてきてくれるかしら

カフェ

紅城梨雅

(ここって仮彼女頼まれた…)

単刀直入に聞くわね

本当はいじめのこと気づいてるでしょ？

紅城梨雅

……………

紅城梨雅

ははっ

紅城梨雅

…私の演技ダメだったみたいですね

ふふっ

そんな事はないと思うわよ

ただ貴方の周りの子たちが鋭すぎるだけよ

紅城梨雅

でも何で知ってるんですか？

あら、それを教えちゃったらつまらないじゃない♪

紅城梨雅

…そうですか

あと〜

才蔵は里を裏切った

それを伝えたかったのよ♪

紅城梨雅

…え

紅城梨雅

(才蔵さんが裏切り…？)

紅城梨雅

(それに里って…？）

ふふっ

せっかくだし

このままお茶してかないかしら？

奢るわよ？

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

(名前も知らない人だけど…)

紅城梨雅

(断ろうかな…)

紅城梨雅

いえ、私は─

紅城梨雅

って…居ない…？

数分後

紅城梨雅

私飲むなんて一言も…

紅城梨雅

(それにコーヒーだし…)

ミルクと砂糖は入ってるわよ

紅城梨雅

名前教えてください

紅城梨雅

私の事だけ知ってるのは不平等です

それで飲んでくれるかしら？

紅城梨雅

……………

雪菜よ

紅城梨雅

(雪菜…？)

雪菜

これでお茶してくれるかしら？

紅城梨雅

…分かりました

紅城梨雅

コーヒー飲むくらいなら…

雪菜

めしあがれ

ゴクッ

紅城梨雅

？

紅城梨雅

(このコーヒー砂糖溶け切ってない…？)

紅城梨雅

(何か舌触りが気持ち悪いような…)

雪菜

美味しいかしら？

紅城梨雅

ま…まあ…そうですね…

カフェの外

紅城梨雅

ご馳走様でした…

雪菜

最後に1つ良いかしら？

紅城梨雅

…？

雪菜

知らない人に奢らせちゃダメよ？

雪菜

何が入ってるか分からないから

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(あのコーヒー…！)

グラッ…

紅城梨雅

(あ…)

霧隠才蔵

朔夜

藤林朔夜

なんだ

霧隠才蔵

梨雅は

藤林朔夜

見ていない

霧隠才蔵

…そ

真田幸村

紅城か？

霧隠才蔵

幸村は見たの

真田幸村

誰かと近くのかふぇに入ったのを見たぞ

霧隠才蔵

…どんな人

真田幸村

才蔵みたいな銀髪で女子(おなご)だったぞ

真田幸村

髪は何か…ふわふわ？してたぞ

霧隠才蔵

………

霧隠才蔵

近くのカフェね…

紅城梨雅

─！

雪菜

あら、もう起きたの？

紅城梨雅

んー！！

雪菜

ふふっ、可愛い

紅城梨雅

(どうにかして外してもらわないと会話が出来ない…)

紅城梨雅

ん！んーー！

雪菜

その力強い瞳

雪菜

いつまで反抗的な態度で居られるか

雪菜

その透き通った瞳がいつになったら

雪菜

暗い闇に染まるのか

雪菜

勝負しないかしら？

紅城梨雅

(勝負…？)

雪菜

簡単な話よ

雪菜

これから貴方をここに監禁するわ

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(監禁！？冗談じゃない…！)

紅城梨雅

(助けも呼べないのに…)

雪菜

貴方の瞳がいつまで瞳でいられるか

雪菜

少しでも目になったら貴方の負け

雪菜

ずっと瞳だったら貴方の勝ちよ

雪菜

監禁って言っても食事つき

雪菜

どう？

雪菜

やる？やらない？

紅城梨雅

(瞳であり続ければ勝てるって事…)

雪菜

やるって事ね♪

雪菜

とても楽しみだわ♪

それから私の瞳であり続けるゲーム

監禁生活が始まった

監禁生活1日目

紅城梨雅

(朝…)

紅城梨雅

(相変わらず喋れないままか…)

紅城梨雅

(ううん！)

紅城梨雅

(声を出す体力を抑えられる！)

紅城梨雅

(それだけで…)

朝飯だ

紅城梨雅

(雪菜さんじゃ…ない？)

紅城梨雅

あ…

紅城梨雅

(やっぱり外してくれるのはご飯の時だよね)

紅城梨雅

(パンか…)

真田信幸

梨雅ちゃんが帰ってきない？

真田幸村

それは事件じゃないか！

霧隠才蔵

……………

真田信幸

スマホの連絡はどんな感じ？

霧隠才蔵

送れるけど読まれてないです

真田幸村

才蔵！こんな事している場合か！

真田幸村

今すぐ探しに─

霧隠才蔵

検討はもうついてる

霧隠才蔵

それに昨日見に行ってきた

真田幸村

それなら何故、紅城がいない！

真田信幸

幸村、落ち着いて

真田信幸

感情のままに動くと相手の思うつぼだよ

真田幸村

……………

真田信幸

見に行ってきた情報

真田信幸

教えてくれる？

霧隠才蔵

場所は─

紅城梨雅

(ご飯くれるから暫くは大丈夫かな)

紅城梨雅

(だけど暇)

紅城梨雅

(絶望的に暇)

紅城梨雅

(監禁より辛い暇)

紅城梨雅

(暇って怖い…)

雪菜

ふふっ

雪菜

この部屋で明かす朝はどう？

紅城梨雅

………………

雪菜

貴方にいいこと教えてあげるわね

雪菜

この部屋からは絶対に出られないわよ

雪菜

才蔵でもね

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(そういえばカフェでも才蔵さんは裏切ったって…)

紅城梨雅

(いったいどういう事？)

雪菜

不思議そうな顔ね

雪菜

週に一回それを外してあげる時間を作るわ

雪菜

そこで質問できるってわけよ♪

雪菜

さあ今週は今よ

紅城梨雅

─はっ…

紅城梨雅

(外れた…)

雪菜

それで質問はあるかしら♪

紅城梨雅

…貴方は誰ですか

紅城梨雅

才蔵さんとどういう関係で

紅城梨雅

里の裏切りの事

紅城梨雅

裏切ったらどうなるのか

紅城梨雅

(取り敢えずこのくらいかな…)

雪菜

ふふ、やっぱり私が見込んだ子ね

雪菜

良いわ

雪菜

答えてあげる

雪菜

才蔵とは同じ里で生まれた

紅城梨雅

(同じ里…)

雪菜

里の命令は絶対

雪菜

裏切りとは命令を無視した行動…

雪菜

つまり決まりを破るってことよ

雪菜

里を抜け出すのもダメ

雪菜

里を裏切ると

雪菜

殺されるわ♪

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

こ、殺される！？

紅城梨雅

(じゃあ才蔵さんは…)

紅城梨雅

…里の人は里の命令で生きてるんですか

雪菜

そういうこと♪

雪菜

全て命令ってことよ

紅城梨雅

(全て命令…？)

紅城梨雅

(じゃあ才蔵さんの行動も…？)

雪菜

まあそんな生き方が嫌で抜け出した里もあるわね

雪菜

もちろん消えたけどね♪

紅城梨雅

っ…！

紅城梨雅

(じゃあ裏切った才蔵さんは…)

紅城梨雅

(殺されるってこと？)

紅城梨雅

才蔵さんは…ほんとに…

紅城梨雅

本当に裏切ったんですか…！

雪菜

えぇ、もちろんよ

紅城梨雅

(そんな…)

紅城梨雅

(才蔵さんも…？)

紅城梨雅

！！

紅城梨雅

(もしかしたらゲームに勝つための嘘かもしれない…)

紅城梨雅

(本人に聞かない限り本当かは分からない！)

紅城梨雅

私を監禁して

紅城梨雅

何をするんですか

雪菜

ふふっ

雪菜

あえて言うとしたら貴方が

プルルルル

紅城梨雅

！

雪菜

…少し出るわね♪

通話

雪菜

もしもし

雪菜

…まさか貴方から電話がかかってくるとは思わなかったわ

雪菜

幸村…だったわね？

真田幸村

あ、あぁ！

雪菜

なんの用かしら？

真田幸村

あ、そ、それは─

幸村…ちょっと貸して？

真田幸村

兄上？！

真田信幸

こんにちは真田信幸です

雪菜

(信幸ね…)

真田信幸

簡潔に質問しますね

真田信幸

梨雅ちゃんの居場所は？

雪菜

ふふ、素直に教える人は居ないわよ？

真田信幸

質問を変えますね

真田信幸

貴方の望みは何です？

雪菜

望み…ね

雪菜

あの子の力を私の物にする事

雪菜

かしら♪

真田信幸

力？

雪菜

そろそろ切るわね♪

紅城梨雅

力って…？

雪菜

あら、それは貴方が一番分かるんじゃない？

雪菜

貴方の家系に代々受け継がれる力よ

紅城梨雅

(力ってどういう事？)

紅城梨雅

分かりません…

紅城梨雅

父と母からもなにも言われてませんし…

雪菜

ふふ、まあまだ良いわ

雪菜

ゆっくり思い出すのよ♪

あの会話から約2日経った

相変わらず暇で

毎日同じような日々を過ごしている

紅城梨雅

(うーん…そろそろ質問も尽きたんだけど…)

紅城梨雅

(それに力も分からないし)

紅城梨雅

(暇だな…)

…この生活飽きたでしょ？

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

早く出るよ

紅城梨雅

(才蔵さん…)

霧隠才蔵

喋れる？

紅城梨雅

はい…

霧隠才蔵

行くよ

紅城梨雅

(外だ…)

あ、助けられたんだね

紅城梨雅

謙信さん？！

紅城梨雅

なんで女装…？

霧隠才蔵

お前さんが監禁された建物

霧隠才蔵

見たら分かるよ

紅城梨雅

え…？

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

ここって…！

紅城梨雅

あのテレビで見る高級タワーマンション！？

霧隠才蔵

その通り

霧隠才蔵

しかもカップルしか入れない所に居たから

上杉謙信

皆で相談して私が女装したって事だよ

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

私のせいで…すみません…

霧隠才蔵

理由は後で聞くから

霧隠才蔵

今は逃げるよ

紅城梨雅

…はい

真田家

紅城梨雅

つぐにいも朔ちゃんも弦ちゃんも…

藤林朔夜

大丈夫だったか

紅城梨雅

うん…大丈夫だよ

真田信幸

才蔵は覚えない？

真田信幸

｢雪菜｣って人

霧隠才蔵

雪菜…ね…

直江兼続

知っているのですか？

霧隠才蔵

いや、雪菜は知らない

霧隠才蔵

……………

紅城梨雅

でもどうやって私の場所が…

真田幸村

才蔵が知ってる場所だったらしいんだ

上杉謙信

すごい高級なタワーマンションね〜

藤林弦夜

謙信さんの女装あれで良く入れたな

上杉謙信

そんなに酷かった？

直江兼続

それはもう寒気が凄かったです…

上杉謙信

えっ、それは言い過ぎじゃない？

直江兼続

本当の事です

紅城梨雅

(やっぱりこの場所は落ち着く…)

藤林朔夜

梨雅が監禁される理由はなんだ？

紅城梨雅

えっと…何か力がなんとかとか…

真田信幸

そういえば言っていたね

真田信幸

力を自分の物にしたいって

上杉謙信

力って？

真田幸村

紅城は何か知っているのか？

紅城梨雅

いえ…

紅城梨雅

何も分からないんです

藤林弦夜

分かってから考えればいいんじゃね〜？

上杉謙信

確かに、分からない事を考えても疲れちゃうだけだからね

直江兼続

貴方はもっと考えてください

上杉謙信

う…

真田信幸

あれ、もうこんな時間だ

藤林朔夜

…俺はそろそろ帰るな

紅城梨雅

うん

紅城梨雅

ありがとうね…

藤林朔夜

…あぁ

藤林弦夜

じゃ、俺も

直江兼続

私たちも帰りますね

上杉謙信

それじゃあ、またね

パタン

紅城梨雅

才蔵さん、幸村さん、信幸さん…

紅城梨雅

本当にすみませんでした…！

霧隠才蔵

…なんでお前さんが謝るのさ

紅城梨雅

私の危機感が足りたかったから監禁されたから─

真田幸村

違う！！！

真田幸村

梨雅のせいでは無い！！

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

幸村、声大きい

真田幸村

─！

真田幸村

す、すまねぇ…

紅城梨雅

いえ…

紅城梨雅

(今…呼び捨てだった？)

霧隠才蔵

うるさかったけど幸村の言う通り

霧隠才蔵

お前さんは何も悪くない

真田信幸

うんうん

真田信幸

あの状況だったら普通断れないからね

真田幸村

自分を責めなくて良いんだ

紅城梨雅

皆さん…

真田信幸

さ、もう遅いから早く寝て疲れを癒してね

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

…ありがとうございました

才蔵の部屋

紅城梨雅

あ、あの才蔵さん…

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

才蔵さんって……

紅城梨雅

生まれはここじゃなかったり…します？

霧隠才蔵

…いや

霧隠才蔵

生まれも育ちもこの辺り

紅城梨雅

そうなんですね…

紅城梨雅

(それじゃあ裏切りは嘘か…)

紅城梨雅

(良かった…)

霧隠才蔵

電気消すよ

紅城梨雅

っ…！

紅城梨雅

(暗闇…)

紅城梨雅

(ひとりぼっち…)

紅城梨雅

っ…や…

霧隠才蔵

…震えてるけど

紅城梨雅

す、っ…すみませ…

ギュッ

霧隠才蔵

俺はここに居るから

霧隠才蔵

何処にも行かないから

霧隠才蔵

今は安心しな

紅城梨雅

っ…は、い…

紅城梨雅

(才蔵さんの匂い…温もりが心地いい…)

紅城梨雅

(やっぱり才蔵さんの事…好きだ…)

次の日

朝食時

紅城梨雅

才蔵さん

霧隠才蔵

なに？

紅城梨雅

昨日の事、改めてお礼がしたくて…

霧隠才蔵

お礼目当てでやった訳じゃないし

霧隠才蔵

気にしなくていいから

紅城梨雅

それでも私は感謝しきれないんです

紅城梨雅

なにかお礼をさせてください！

紅城梨雅

あと少しでお礼も出来なくなってしまうので……

霧隠才蔵

…そこまで言うなら

霧隠才蔵

とびっきり美味しい団子、よろしくね

紅城梨雅

団子、ですか？

霧隠才蔵

うん、団子

紅城梨雅

(好物なのかな？)

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

とびきり美味しいお団子作りますね

紅城梨雅

(楽しみだな〜♪)

霧隠才蔵

ふっ…

霧隠才蔵

表情緩みすぎ

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

そんなに緩んでました？

霧隠才蔵

うん

霧隠才蔵

誰もが分かるくらい

紅城梨雅

(う…恥ずかしい…)

霧隠才蔵

…先食べてて

紅城梨雅

？

紅城梨雅

あ…

紅城梨雅

(行っちゃった…)

紅城梨雅

(急にどうしちゃったんだろう…)

玄関先

霧隠才蔵

なんの用

…任務に背く事は許されませんよ

裏切りとみなされます

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

分かってるよ

霧隠才蔵

里の命令は絶対

霧隠才蔵

でしょ？

その通りです

霧隠才蔵

(暇だね里も)

紅城梨雅

(お団子何味にしようかな…)

紅城梨雅

(無難に3色団子かな？)

霧隠才蔵

まだ食べてないんだ

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

2人で食べ方が美味しいから待ってました

紅城梨雅

1人じゃ寂しいですから…

霧隠才蔵

…そ

紅城梨雅

それじゃあ食べましょう！

紅城梨雅

いただきまーす！

霧隠才蔵

いただきます

紅城梨雅

ん〜！

紅城梨雅

やっぱり才蔵さんのご飯は美味しいですね！

紅城梨雅

毎日食べても飽きません！

霧隠才蔵

俺の料理が好きなんて

霧隠才蔵

お前さんは変わってるね…

紅城梨雅

？

紅城梨雅

そうなんですか？

霧隠才蔵

まあね

紅城梨雅

(美味しいんだけどな…)

霧隠才蔵

そうだ

霧隠才蔵

今日、夕霧？

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

今日は夕霧の日です

霧隠才蔵

なら終わったあと俺の部屋行くから

紅城梨雅

分かりました

学校

紅城梨雅

(まだホームルームまで時間あるな…)

紅城梨雅

(暇だなー)

真田幸村

あ

真田幸村

り……紅城

真田幸村

もう大丈夫なのか？

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

色々ありがとうございました

真田幸村

なんとも無いなら良かった

真田幸村

り…紅城は何も悪くないからな

紅城梨雅

ふふっ…

真田幸村

？

真田幸村

突然どうしたんだ？

紅城梨雅

あっ…

紅城梨雅

すみません…！

真田幸村

あ、いや…別に謝る程でもないが…

紅城梨雅

私の事は｢梨雅｣でも良いんですよ

真田幸村

─！

霧隠才蔵

幸村

霧隠才蔵

さっきから聞いてたけど

霧隠才蔵

呼び捨てにしようとしてるのバレバレ

真田幸村

な…

真田幸村

そ、そんな訳ないだろ！

真田幸村

その…本当にいいのか

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

本当にいいですよ！

真田幸村

……そうか

真田幸村

それじゃあ遠慮なく…梨雅と呼ばせてもらうな！

紅城梨雅

(幸村さんの笑顔は輝いてるな…)

霧隠才蔵

………………

紅城梨雅

…？

紅城梨雅

才蔵さん？

霧隠才蔵

…何？

紅城梨雅

あ、いえ…

紅城梨雅

(あれ…気のせいかな…)

紅城梨雅

(今、廊下の方を睨んでた気が…)

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(雪菜さん？！)

真田幸村

…？

霧隠才蔵

今日は1人で行動しないで

紅城梨雅

分かりました…

真田幸村

なにかあったのか？

霧隠才蔵

別に

先生

席につけー！

放課後

夕霧の別館

紅城梨雅

それで、なにかあったんですか？

霧隠才蔵

…………………

紅城梨雅

…？

紅城梨雅

(じっと見られると緊張しちゃうな…)

霧隠才蔵

お前さん……

紅城梨雅

え…？

霧隠才蔵

…好き

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(えっ！？｢好き｣！？)

霧隠才蔵

─何が好き？

紅城梨雅

へっ…？

霧隠才蔵

寿司何が好き？

紅城梨雅

(え、寿司？)

紅城梨雅

っ…

紅城梨雅

(勘違いか…)

紅城梨雅

えっと…

紅城梨雅

マグロです

霧隠才蔵

マグロね

紅城梨雅

(突然どうしたんだろう…)

紅城梨雅

才蔵さんは何が好きなんですか？

霧隠才蔵

団子

紅城梨雅

…え？

紅城梨雅

話の流れ的にお寿司なんですが…

霧隠才蔵

そう？

霧隠才蔵

いくら

紅城梨雅

(あれ…？)

紅城梨雅

才蔵さん｢団子嫌い｣って言ってみてください

霧隠才蔵

…はぁ

霧隠才蔵

団子嫌い

紅城梨雅

(やっぱり…！)

紅城梨雅

…っふふ

霧隠才蔵

人に嘘つかせて笑うの？

紅城梨雅

いえ…ふふっ

紅城梨雅

才蔵さんが嘘をつく時に眉間にシワが入ってて

霧隠才蔵

しわ？

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

一瞬だからよく見てないとわかりませんが

紅城梨雅

しわ、入ってますね

霧隠才蔵

…そ

霧隠才蔵

この後団子、よろしくね

紅城梨雅

はい！

時は経ち

その週の土曜日

紅城梨雅

あの才蔵さん…

紅城梨雅

少し気になったんですけど…

霧隠才蔵

何？

紅城梨雅

縁談もう2週間位ですけど、なにかしなくていいんですか？

紅城梨雅

きっと出会いとか…そういうの聞かれるんじゃ…

霧隠才蔵

くくっ…

紅城梨雅

え…？

霧隠才蔵

お前さん、演技出来ないでしょ

紅城梨雅

う…

紅城梨雅

そう言われちゃうと…

霧隠才蔵

だからお前さんが思った事

霧隠才蔵

出会いとかだったら

霧隠才蔵

本当の事言ってくれていいよ

霧隠才蔵

俺がそれに合わせるから

霧隠才蔵

わかった？

紅城梨雅

(でもそれって才蔵さんが不安なんじゃ…)

紅城梨雅

(私が演技出来ないから仕方ないのかな…)

紅城梨雅

(ごめんなさい…)

紅城梨雅

はい…

紅城梨雅

分かりました

霧隠才蔵

なんでお前さんがそんな顔するの…

紅城梨雅

えっ

霧隠才蔵

顔に出てる

紅城梨雅

え、分かっちゃうんですか？

霧隠才蔵

お前さんすごく顔に出るからね

紅城梨雅

(そんなに！？)

紅城梨雅

(気をつけないと…！)

霧隠才蔵

………

ピコン

紅城梨雅

あっ…

紅城梨雅

すみません

紅城梨雅

ちょっと連絡してきますね

霧隠才蔵

ん

紅城梨雅

(ここまで来れば大丈夫かな)

紅城梨雅

(やっぱりあの時の人だ…)

紅城梨雅

(この事…本当なのかな)

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

(｢俺が合わせる｣…ね)

霧隠才蔵

(何言ってんだろ…)

霧隠才蔵

(必要以上の関係は持たない)

霧隠才蔵

(全部─)

紅城梨雅

お待たせしました〜！

霧隠才蔵

…おかえり

霧隠才蔵

(全部)

霧隠才蔵

縁談の時間だけど

霧隠才蔵

土曜の14時からだから

紅城梨雅

土曜の14時からですね…

紅城梨雅

分かりました

霧隠才蔵

それで縁談の前に叔父さんと会うから

紅城梨雅

(才蔵さんの叔父さん…)

紅城梨雅

(きっと似てるんだろうな…)

霧隠才蔵

……一応言っておくけど俺と似てないから

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

そ、そ、そうなんですね！

紅城梨雅

(また顔に出てたのかな？！)

霧隠才蔵

じゃあ夕霧行ってくる

紅城梨雅

はい

紅城梨雅

頑張ってくださいね

霧隠才蔵

…ん

紅城梨雅

……………

紅城梨雅

(あの日まで…)

紅城梨雅

(…ごめんなさい)

夕霧の離れ

霧隠才蔵

はぁ…

霧隠才蔵

なんの用

百地三太夫

まあそう言うな

百地三太夫

任務の報告なぞいつもの事じゃろ

霧隠才蔵

で？

百地三太夫

あの娘はどうじゃ？

霧隠才蔵

土曜にはいけるんじゃない

百地三太夫

そうか

百地三太夫

ならいいんじゃが…

百地三太夫

情が移ったなんて事はないじゃろうな？

霧隠才蔵

…ある訳ないでしょ

霧隠才蔵

任務が全て

霧隠才蔵

裏切り者は抹消

霧隠才蔵

(それが…伊賀…)

百地三太夫

分かっておるならいいんじゃ

霧隠才蔵

…帰る

百地三太夫

待て

霧隠才蔵

何

百地三太夫

最近あの娘に妙な動きがあるんじゃ

霧隠才蔵

はいはい

霧隠才蔵

調べれば良いんでしょ

百地三太夫

そうじゃ

霧隠才蔵

それだけ？

霧隠才蔵

今度こそ帰る

帰り道

霧隠才蔵

(妙な動きね…)

霧隠才蔵

(俺からしちゃアイツの行動全てが妙なんだけど…)

霧隠才蔵

(それに情が移ったか)

霧隠才蔵

(俺はアイツを─)

俺の家

紅城梨雅

あっ、才蔵さんおかえりなさい

霧隠才蔵

…ただいま

紅城梨雅

さっきお団子作ったんです！

紅城梨雅

食べますか？

霧隠才蔵

食べる

紅城梨雅

じゃあ用意しますね！

そんな平和ボケしそうな生活を送り

2週間後

夕霧前

紅城梨雅

な、なんか緊張してきました…

霧隠才蔵

まだ叔父さんにも会ってないのに？

紅城梨雅

でも頑張りますね！

霧隠才蔵

…そ

霧隠才蔵

所で鞄に着いてるストラップ

霧隠才蔵

そんなのあったっけ

紅城梨雅

あ、これですか？

紅城梨雅

これはお母さんがくれた青薔薇のお守りです

紅城梨雅

花言葉が…

紅城梨雅

えっと……

霧隠才蔵

｢可能｣｢夢が叶う｣

紅城梨雅

えっ

紅城梨雅

知ってたんですね

霧隠才蔵

まあね

霧隠才蔵

青薔薇の花言葉好きだし

紅城梨雅

才蔵さんは物知りですね

霧隠才蔵

そう？

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

私が知らない事を沢山知ってて凄いです！

霧隠才蔵

(知らなくてもいい事も知っちゃったけどね…)

応接間

来てくれたんじゃな

紅城梨雅

(才蔵さんの叔父さん…？)

紅城梨雅

あ、紅城梨雅です

紅城梨雅

今日はよろしくお願いします…！

百地三太夫

百地三太夫(ももちさんだゆう)じゃ

百地三太夫

才蔵の事情に付き合ってありがとうじゃ

紅城梨雅

いえ…！

紅城梨雅

そんな感謝される事じゃ─

ドンッ

紅城梨雅

！？

誰かに押し倒され首を抑えられてる

才蔵さんの叔父さんの姿はある

紅城梨雅

(才蔵…さん…？)

霧隠才蔵

…動くな

今まで聴いたことの無い低く冷たい声

紅城梨雅

な…さいぞ…っ…

霧隠才蔵

青薔薇…

霧隠才蔵

｢不可能｣

霧隠才蔵

夢を叶えるなんて不可能なんだよ

紅城梨雅

(なんで…？)

紅城梨雅

(才蔵さん…！)

バンッ！

梨雅、立て！

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(煙！？)

グイッ

紅城梨雅

朔ちゃん！

紅城梨雅

何でここにいるの！？

藤林朔夜

それは後でだ

藤林朔夜

今は逃げるぞ！

霧隠才蔵

…させないよ

藤林朔夜

そう簡単には行かせてくれないか…

紅城梨雅

才蔵さん…！！

藤林弦夜

はぁ…ほんと人使い荒いよな

紅城梨雅

弦ちゃんも！？

藤林弦夜

これで借り2つだからな

紅城梨雅

う、うん？！

百地三太夫

お前ら行くんじゃ！

藤林朔夜

数が多いな…

紅城梨雅

才蔵さん！！

霧隠才蔵

少し…黙ってくれる…？

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

(才蔵さん…！！)

紅城梨雅

何か理由があるんですよね！！

紅城梨雅

そうじゃなかったら、なんで朔ちゃん達を─

あら？

まだ分からないのね♪

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

雪菜…さん…？

霧隠才蔵

…雪

紅城梨雅

(え？呼び捨て…)

紅城梨雅

(それに｢雪｣って…)

紅城梨雅

なんで…？

雪菜

ふふっ

雪菜

分かるように教えてあげるかしら？

雪菜

私達は姉弟(きょうだい)よ

紅城梨雅

姉弟…？

紅城梨雅

じゃあ霧隠…雪？

霧隠雪

そういう事よ♪

霧隠雪

因みに私は貴方の敵よ

藤林朔夜

くそ…

藤林弦夜

はぁ…百地の2人か…

紅城梨雅

(才蔵さんの弟の蛍くんは…！？)

紅城梨雅

(どうして朔ちゃん達を…！)

紅城梨雅

止まってくださいっ！！

紅城梨雅

(あれ…？)

霧隠才蔵

……………

霧隠雪

…！

藤林朔夜

｢(逃げろ)｣

紅城梨雅

(朔ちゃん…！)

夕霧の外

紅城梨雅

！？

霧隠才蔵

……………

紅城梨雅

(なんでか聞かないと…)

紅城梨雅

才蔵さん！

霧隠才蔵

何

紅城梨雅

今までのは…全部…

紅城梨雅

嘘だったんですか…？

霧隠才蔵

そうだけど

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

仮彼女も…

紅城梨雅

全部嘘だったんですね…

霧隠才蔵

雪から聞いたでしょ？

霧隠才蔵

｢里の命令は絶対｣だって

紅城梨雅

(命令…？)

紅城梨雅

才蔵さんは…演技したかったんですか…？

紅城梨雅

笑顔も悲しみも全部隠して

紅城梨雅

嘘ついて辛くなかったんですか？！

霧隠才蔵

…さあね

紅城梨雅

そんなの嫌です！

紅城梨雅

お願いです…

紅城梨雅

本当の事を…言ってください…っ…

霧隠才蔵

嬉しい、悲しい、怒り全部捨てたから

霧隠才蔵

俺には何も残ってない

紅城梨雅

そんなの…

紅城梨雅

捨てれないですよ…！！

紅城梨雅

だって才蔵さんは…！

霧隠才蔵

お願いだからさ

霧隠才蔵

…もうそれ以上何も言わないでくれる？

紅城梨雅

良いですよ…そのままで…

紅城梨雅

ずっとそのまま自分の感情を偽り続けてくださいよ！

紅城梨雅

霧隠さんの事なんてもう知りません！！！

紅城梨雅

(才蔵さんなんてもう知らない！)

紅城梨雅

(早く家に行かないと…！)

紅城梨雅

(えっと…これとこれと…)

梨雅？

紅城梨雅

？！

紅城梨雅

幸村さん…！？

真田幸村

その荷物…

紅城梨雅

あ…

紅城梨雅

これは…

紅城梨雅

もう霧隠さんには頼ってられませんから…！

真田幸村

…そうか

紅城梨雅

色々助けてくれてありがとうございました

真田幸村

それは良いんだが…

真田幸村

なんで泣いているんだ…

紅城梨雅

…え？

気がつくと涙が─

霧隠才蔵

(｢霧隠さん｣ね…)

霧隠才蔵

(紅城のは全部本心か…)

藤林朔夜

才蔵！

藤林朔夜

行かせないからな…！

霧隠才蔵

出来るものならやってみれば？

藤林朔夜

…お前なんで

霧隠才蔵

何

藤林朔夜

なぜ泣いてるんだ

霧隠才蔵

…は

─泣いていた

紅城梨雅

幸村さん最後にお願いしても良いですか…？

真田幸村

ああ、俺で良ければ頼まれるぞ！

紅城梨雅

ありがとうございます

紅城梨雅

これを夕霧にいる霧隠さんに渡して欲しいんです

真田幸村

夕霧にか

紅城梨雅

はい

真田幸村

分かった！

真田幸村

行ってくるな

紅城梨雅

(さようなら…)

しばらく移動した

空港

こちらです

紅城梨雅

！

紅城梨雅

貴方が連絡をくれたんですね

紅城梨雅

お父さん…

その話は向こうでしましょう

紅城梨雅

本当にお父さん…なんですね

ええ…

紅城梨雅

(さっきから真顔だけど…)

紅城梨雅

(私のお父さんって表情筋硬いのかな？)

｢言霊｣を知ってますか？

紅城梨雅

言霊…？

はい

言霊とは人が発する言葉に詰まった力の事です

言霊が強いと言った事が現実に起こります

紅城梨雅

そうなんですね…

紅城梨雅

(言霊って不思議なんだな…)

紅城梨雅

でも…なんで急に…

それは貴方の力だからです

紅城梨雅

力？

紅城梨雅

(もしかして雪さんが言ってた力のこと…？)

そして我々を貴方の力で手助けして欲しい

紅城梨雅

！

紅城梨雅

(これって…！！)

紅城梨雅

あ、あのっ

紅城梨雅

すみません！

紅城梨雅

少しお手洗いに…！

はい

どうぞ

紅城梨雅

(どうしよう…！)

紅城梨雅

(私のお父さんじゃない…！)

紅城梨雅

(早く逃げないと…！)

グイッ

紅城梨雅

！？

はぁ…

霧隠才蔵

もう逃がさない

紅城梨雅

っ…

ギュッ…

紅城梨雅

(え…？)

紅城梨雅

(抱きしめられて…る？)

才蔵さん

霧隠才蔵

清広…

紅城梨雅

(え、知り合い？！)

清広

死にますよ

霧隠才蔵

知ってる

霧隠才蔵

生憎俺は犬じゃないんでね

清広

そうですか…

どうしますか

清広

お前らは手を出すな

紅城梨雅

(どうしよう…！)

紅城梨雅

(逃げたいのに…)

紅城梨雅

(力が強くて逃げられないっ…！)

紅城梨雅

離してください！

霧隠才蔵

清広

霧隠才蔵

人が1番強くなる時って知ってる？

清広

…いえ

霧隠才蔵

誰かを守る時

霧隠才蔵

つまり今って事！

ダッ！

紅城梨雅

えっ！？

紅城梨雅

(お姫様抱っこ！？)

紅城梨雅

(ま、え？何処に行くの？！)

紅城梨雅

さ…霧隠さん！

紅城梨雅

何処に行くんですか！？

霧隠才蔵

舌噛むよ

紅城梨雅

っ…！

紅城梨雅

(なんで…)

清広

才蔵さん

紅城梨雅

！？

紅城梨雅

(あ…止まった…)

人通りのない通路

清広

裏切りとみなします

清広

良いんですね

清広

まだ間に合います

霧隠才蔵

俺はもう迷わないから

清広

そうですか…

霧隠才蔵

失望した？

清広

いえ

霧隠才蔵

そ

紅城梨雅

(な、何が起こっているのか…)

紅城梨雅

えっ！？

霧隠才蔵

…清広

霧隠才蔵

一体どういうつもり

清広

主に呼ばれましたので

清広

今回はここまでです

紅城梨雅

(そんなあっさりと…)

紅城梨雅

(喧嘩をしてほしい訳じゃないけど…)

清広

それでは

紅城梨雅

霧隠…さん…

霧隠才蔵

もう終わったから？

紅城梨雅

…え？

霧隠才蔵

もう仮彼女終わったから？

紅城梨雅

…はい

紅城梨雅

(そういう期待させるような言い方…)

紅城梨雅

(ずるいよ…)

紅城梨雅

(期待しちゃうじゃん…)

霧隠才蔵

…これ

紅城梨雅

っ！

紅城梨雅

その手紙…！

霧隠才蔵

手紙で告白なんて斬新だね

紅城梨雅

だ、だってそれは…

紅城梨雅

才蔵さんと別れると思って書いたから…！！

紅城梨雅

最後に想いくらい…伝えておきたくて…それで…

霧隠才蔵

…お前と全てを捨てて生きたい

紅城梨雅

え……？

ぎゅっ

紅城梨雅

！？！？

霧隠才蔵

俺にとっては里の任務が全てだった

霧隠才蔵

その｢全て｣を捨ててまでお前と生きたい…

紅城梨雅

(それって…)

霧隠才蔵

お前の事が好きだよ

紅城梨雅

…！

紅城梨雅

っ…うぅ…

霧隠才蔵

俺が全てを賭けるのはお前さんだけだよ

霧隠才蔵

…だからそんな顔しないの

紅城梨雅

私も…好きです…っ！

霧隠才蔵

うん…

霧隠才蔵

俺も

霧隠才蔵

…家に帰るよ

紅城梨雅

はいっ…

才蔵さんとの家

晩御飯時

紅城梨雅

食欲ありません…

霧隠才蔵

でも｢食べる事は生きる事｣でしょ？

紅城梨雅

え…

紅城梨雅

なんでお母さんの口癖を…

霧隠才蔵

昔、桜の木の下で俺が落ち込んでた時

霧隠才蔵

お前さんが団子を持って言った言葉

紅城梨雅

！

紅城梨雅

あの時の…男の子…？

霧隠才蔵

…そ

紅城梨雅

偶然って凄いですね…

霧隠才蔵

まあね

霧隠才蔵

俺はお前さんの偶然に救われたって訳

紅城梨雅

えへへ…

紅城梨雅

そう言われると照れます…

霧隠才蔵

明日休みだけど

霧隠才蔵

何処か行く？

紅城梨雅

はい！

紅城梨雅

行きます！

霧隠才蔵

じゃあ明日に備えて食べる？

紅城梨雅

う……

紅城梨雅

はい……

ぽんっ

紅城梨雅

~~~っ！

霧隠才蔵

(お前さんが居てくれたから今の俺が居る…)

霧隠才蔵

…ありがと

紅城梨雅

え…？

紅城梨雅

才蔵さん？

霧隠才蔵

別に

辛い事もあったけど

君との記憶は｢楽しい｣でいっぱいにしたい

君の中に少しでも記憶がのこるように。

｢君のとなり、｣[完]