もしかしたら前のお話のコメント見れてないかも.....またハート押しにいきます!!!
2024/04/24投稿
第48話
「失いたくないよ」
シャクシャクと、氷菓子の音が響く。
風が横に通り抜けていって、暑さが一瞬消え去る。が、またすぐ戻ってくる。
桃
桃
水
桃
水
水
桃
水
7月中旬現在。気温は日々上昇中。 記憶に新しい節目は里帰り辺りだろうか。そこからもう半年以上経ってしまったと思うと時の流れは恐ろしい。
スカイで過ごす初めての夏なのだが、みんなで話し合った結果なぜか「ちょっと旅してみよう」という結論に至った。
なぜか。本当になぜか。 理由は分からない。
ただ「楽しそうだった」から。 そんなノリで1ヶ月王都を離れてると思うとバカバカしいが、まぁ6人らしい旅で楽しいので悪くない。
水
そんな旅の中、なぜ2人でアイスを食べているのかと言うと、ただ普通に白魔さんがねだってきたから。
俺は財布かなんかなの?ねぇ?
まぁ旅と言っても冒険者パーティーなので、もちろんクエストがメインである。 つまり2人でサボり中だ。
水
桃
水
水
桃
多分怖いんだと思う。 今手の中にある幸せが俺に見合わないって、神様が崩してくるのを無意識に想像してしまっている。
自分の幸福度を調整しようとしている自分が居る。 俺が幸せになりすぎないように。
桃
桃
水
つまりそういうことである。 ほとけっち理解が早いなぁ.....バカとか言ってごめんね。
水
水
桃
自分の中では足りない。 足りてるって信じたくない。 ただ、本当に慢心が怖い。
水
水
アイスの棒をピシッと俺に向ける。 まだ食べ終わっていない俺はアイスを口に入れたまま固まる。
水
水
水
水
桃
水
水
桃
だから、そのみんなを失うのが怖いって言ってんじゃん。
みんなが俺の幸せなんだよ。
桃
水
水
〈ただいまーっ!!!
紫
水
桃
紫
紫
黄
オーバーオールの農作業服的なものを着た2人が俺らを指さす。
麦わら帽子に首かけタオル。 土で汚れた頬。 なんだか似合っているスタイルだ。
泊まらしてもらっている民家の家主の人が持っている畑をたまに手伝っているらしい。実に2人らしい。
紫
紫
桃
水
水
水
黄
紫
桃
水
2人で顔を見合わせる。 と、向こうも2人できょとんとした顔を合わせ鏡のように向き合った。
桃
黄
紫
紫
桃
水
紫
黄
桃
水
ドサッ(野菜
桃
青
赤
昨日よりはマシだが、まだだいぶ疲れてそうだ。昨日は喋れないほど疲労困憊してたからな....w
桃
青
青
水
青
ほとけっちが言うには魔力と体力には繋がっているところがあるらしい。 体力が無ければ魔力の戻りは遅いし、 魔力が無ければ体力の消費が早くなる。
昨日のクエストはとにかく持久戦だったので、2人の魔力消費は尋常じゃなかった。
まろはアニキに肩担がれながら自力で歩いて帰ったけど、声を発する気力も無かったみたい。今日のお昼まで無言。
りうらは終わった瞬間ぱったり倒れてしまった。正直焦り散らかしたがなんとか外面だけ冷静を保ち、1番体力が残っていた俺が担いで帰ったのである。
水
青
青
水
まろらしいな。 なにかとりうらを1番気にしているのはまろなところがある。
水
水
青
桃
紫
桃
桃
紫
桃
黄
桃
黄
桃
黄
桃
紫
青
水
桃
紫
黄
青
水
赤
赤
黄
桃
赤
赤
水
いただきます!!
水
赤
桃
水
青
赤
黄
紫
桃
水
赤
桃
黄
桃
赤
青
桃
桃
桃
早朝6時。 夏は朝が早い。明るいからどうしても起きてしまう。
みんなはまだ寝てたから、起こさずそーっと外に出てきた。
まろもりうらも顔色は良かったし、明日には全員でクエストも復活するだろう。 この街ももう少しでお別れかな。
桃
泊まらせてもらっている家が高台に近いのもあって、家から少し離れたところでは街の絶景が鑑賞できる。
自然があって、のどかで、静かな街。
いずれ6人がよぼよぼになって、パーティーも解散して..... 穏やかで落ち着いた日常になるときは、
桃
もっとほぼ森みたいなとこに住むのもいいな。みんなで自給自足とかして。 あの時の野宿みたいで楽しそう。
それで、死ぬ時は....きっと俺が最初で.....
いや、ただの願望か。 そんなに年の差は無い。年寄りになってしまえば1歳差も2歳差も変わらないだろう。
最初がいいのは、寂しいからかな。
桃
畑の方から煙が.....野焼き?
違うか。火が広がりすぎだ。
桃
理解した瞬間背筋が凍る。 すごい勢いで広がっているあれは野焼きじゃない。
「火事」だ。
ガラララッッ
青
黄
桃
青
桃
桃
黄
アニキの顔が凍りつく。 彼にとって火事はトラウマかもしれない。その話は春に聞いたばかりだ。
"最悪"になる前に早く逃げないと.....
青
黄
焦りながらも部屋を出ていくまろ。 アニキは思考が止まっているようで、混乱状態に陥っている。
桃
桃
黄
荷物の置いてある部屋に走っていった。 武器は相当重いだろうから大変だけど、任せるならアニキしかいない。
桃
まだ布団に潜っている3人を叩き起す。 布団を剥ぐと、「う"〜」という唸り声が聞こえる。が、そんなの知らない。
桃
紫
水
桃
紫
俺の剣幕が凄かったのか、本当にやばいんだと理解したらしく、急いで着替えに走っていった。
家主
向こうの襖から着替えながら飛び出してきた家主のおじいさん。 顔は混乱に満ちている。
桃
桃
家主
家主
そう言って仏壇の部屋に行く家主さん。 「そんな場合じゃない」と声をかけようとしたところを、まろに止められた。
青
青
身内の大切さを、親に突き放されたまろが訴えている。 彼は必死に分かろうとしてる。
意見を突き通すことはできなかった。
桃
家主
桃
青
家主
桃
その気持ちを理解できる人間でありたかったから。理解してるつもりだったから。
桃
桃
青
桃
家主
俺が「はい」という前に取りに行ってしまった。 まぁ1つ2つ増えたところで同じだ。
桃
桃
青
青
桃
桃
まろも無理してる感じはするが、起きた時のりうらは体が動かしにくそうだった。
一緒に行くと家主さんを避難させるスピードが遅れるだろう。 別行動の方が混み合わなくて無難だ。
青
青
心底心配そうな顔で言われる。
桃
桃
家の裏側にある荷車を取りに走る。 正直どう階段降りるのとか考えてないけど、なんとかしてやる。
俺は今まで生きてきた。 これからも守りながら生きるんだ。
ガラララッッ
桃
赤
俺の肩借りながら何言ってんだか。
黄
赤
桃
赤
桃
黄
桃
赤
しぶしぶ仏壇を手で固定するりうら。 火の手は回るのが早いようで、結構危ないところまできていた。
やはり家主さんを先に避難させてよかったと言える。
黄
黄
桃
階段は結構長い。登り終わったらしんどくなるくらいには。
この街は坂が多いし....下った後も考えなければもたもたして火に飲まれてしまう。
桃
そうだ。
桃
キュッ(荷車に括り付ける
赤
桃
黄
桃
黄
握るところを固く持つ。 足の見せどころだ。
桃
赤
黄
桃
ゆっくり階段へ向かっていく荷車。 前進していくそれに、思いっきり体重をかけ続ける。
赤
黄
桃
赤
落ちるッッ!!!
※もうちょっと横幅広い階段です
赤
黄
桃
落ちる瞬間に板を足で蹴ってタイヤの下に滑り込ませ、同時に飛び乗った。 今は階段をスキー状態である。
前からくる風がオールバックにしてくるが、異様に暑い風なのは炎のせいだろうか。
降りながら見える街は、まさに火の海だった。
桃
悟った。広がりすぎている。
人間が消せる範囲じゃない。 水系の上級魔法でも使わないと消火しきれないだろう。
桃
この街の人達の幸せは、崩れ落ちてしまったのだろうか。
桃
赤
黄
役場に来てみると、ほとんどの街の人達が避難しているようだった。
うちのメンバーはなんせ髪型がカラフルなもので、一瞬で見つかった。
水
青
桃
桃
家主
向こうで話していたっぽい家主さん。 りうらの腕の中の仏壇を見て、目を輝かせた。
家主
桃
桃
役場と逆の方を振り返る。 ハッキリ見える火の海は、どんどん向こうまで広がっているようだった。
桃
家主
家主
家主
悲しそうな表情。 そりゃそうだ。住む家も、故郷も、一瞬で焼けてしまうなんて誰も想像していなかっただろう。
紫
桃
家主
住民
紫
桃
まさか....
住民
泣き叫ぶ妊婦さんらしき女の人。 絶望した顔で膝から崩れている。
紫
桃
初兎ちゃんに手を引かれて女性のところへ走る。 なんとなく予想はできたけど、本当、どこまでも優しいな。
紫
住民
住民
桃
場所によればただの火の海だ。 足場も8歳の子供が歩くには悪すぎるし、熱さで倒れてしまう。
紫
住民
桃
見たことあると思ったら、ご近所さんだったのか。
桃
紫
なのにこの子はこんなこと言うし。 いや分かってたけど。 流石に今回は許可は下せない。
桃
紫
自分を押し通せる気満々だな。 俺がしぶしぶ許可を出してくれると思っているのだろう。
紫
桃
桃
紫
桃
きつい口調で言っても全然聞いてくれない。ワガママだって分かってくれない。 でも、意地でも行かせたくない。
紫
桃
紫
1番にアニキに頼みに行くあたり、よく考えているなと思う。 アニキが許可したら、みんなOKするのは想像できる。
黄
紫
黄
桃
黄
黄
桃
黄
黄
謝られてしまった。 でもまだ許可したのはアニキだけだ。
桃
アニキが許可したら......
水
水
赤
青
3人の許可と1人の沈黙。 反対は俺だけ。
初兎ちゃんは目を輝かせた。 俺の顔は多分焦りで満ちている。
桃
紫
紫
剣を装備して盾を持つ。 あれでどうにかなると思ってるのだ。
ほんと分かってない。
桃
紫
桃
ダメだ。行ってしまう。
黄
黄
名前を叫んだのが原因だろう。 アニキが初兎ちゃんと俺を交互に見て、焦り気味に謝ってきた。
無意識に自分の息が上がっていた。 鼓動もクエストの時より早い。
崖っぷちの恐怖。
桃
赤
桃
桃
何もせずに失うなんてこと、 繰り返したくないんだ。
桃
階段のすぐ横まで火が来ている。 これ、登った後どう降りればいいんだろう。火に飲まれる。
初兎ちゃんはそんなこと考えてないんだろうな。感情的すぎる。 後先考えて動かないと、1人の判断でみんな死んじゃうかもしれないのに....
桃
階段を駆け上がるスピードは俺の方が速かったようで、家の前に立っていた初兎ちゃんが見えた。
紫
ガシッ(手首を掴む
紫
桃
さっきまでみんなで泊まっていた家はもう燃え始めてしまっている。 熱風がすごい。
初兎ちゃんは立ちすくんでいたようで、後ろから近づいた俺にはまったく気づいていなかった。
桃
桃
紫
紫
桃
8歳と言えど流石に業火に飛び込んでいくようなことはしないだろう。 見間違いではないかと言おうとしたところ、家の中から微かな音が聞こえた。
ニャー...
桃
紫
紫
桃
紫
桃
桃
桃
紫
紫
桃
紫
紫
紫
桃
桃
紫
桃
桃
桃
桃
桃
紫
バツが悪そうに目が泳ぐ初兎ちゃん。 言い返せないことが悔しそう。
初兎ちゃんとこんなに言い合いしたのは初めてだと思う。 小さい頃から知り合っていたが、ずっと仲良しで喧嘩なんてしたことなかった。
今は両方が爆発して止まらない。 俺が許すか、初兎ちゃんが諦めるか。
どちらかにならないと終わらない。
紫
桃
紫
紫
桃
紫
紫
紫
ほとけっちと同じようなことを言う。 ほんと、どこまでも真っ直ぐすぎる瞳。
俺を反転したようなその姿が自分にとって眩しすぎるのは、充分理解していた。
桃
桃
それを理解してほしくて紫の瞳を真っ直ぐ見て言ったつもりだった。
彼の酷く傷ついたような顔に、 俺の息が止まる。
紫
桃
桃
紫
紫
バシッッッ(手を振り払う
桃
紫
火の中に飛び込んでいく姿を、痛みを帯びたままの手を伸ばしながら見つめる。
眠り花に囲まれていた時のように、赤龍に追いかけられていた時のように、いつもなら躊躇なく追いかけていただろう。
「追いかけないで」と言われた以上、 俺は簡単には動けない。
助けに行っていい資格が無い。
桃
俺....どうしたらいい.......?
黄
桃
息きれぎれに駆け寄ってくるアニキ。 少しだけ見える階段は、もうほぼ火に飲まれている。
黒くなった顔は、そこを通ってきた何よりの証だった。
黄
桃
桃
黄
桃
桃
そう思いたくないけど、さっきの喧嘩を振り返れば否定できなかった。
一刻も早く連れ戻すか初兎ちゃんの考えに協力するかしないと、酷く危険な状況だと言うのに、俺は何も動けない。
アニキは怪訝な顔で俺を見つめた後、 ひとつ、ため息をついた。
黄
桃
走って戻ってきた時間は約30秒。 バケツと....あれは、俺の上着...?
黄
黄
どこから持ってきたのか知らないが、俺の上着をずいっと差し出してきた。 よく見たら上着から水滴が滴っている。
黄
黄
桃
黄
桃
ここで受け取らなかったら、これからどう生きていけばいいと言うのだろう。
桃
バサッ(上着を羽織る
黄
安心したような顔で自身の上着も羽織るアニキ。 一旦地面に置いたバケツを持ち直した。
バッシャーンッ
頭から思いっきり水を被る。
黄
黄
桃
「兄さんを超える」というのは、大切な人を助けられなかった状況を繰り返さないということだろう。
実際の景色を見た分怖いはずなのに、 躊躇なく助けに行こうとしている。 なんて良すぎる仲間を持ったのだろうか。
桃
桃
黄
桃
桃
黄
火の中を見ていた目線をメンバーに戻す。目が合ったことにより、失ってしまうかもしれないという崖っぷちの恐怖がまた襲ってきた。
黄
桃
でも行くしかない。 だって彼は覚悟が決まっているから。
業火の中に飛び込んだ。
桃
事前に水を纏ったと言えど、火に囲まれるとなかなかに熱い。 入口はまだマシそうだが、奥はもっと燃えているようだった。
あの初兎ちゃんがこの業火の中を 子供1人抱えて出てこれるとは思えない。
花畑の時も、赤龍のときも、 たしかに俺は助けてきた。
散々振り回されてきたよ。
でもね
一緒に寝たり、りうらに出会えたり.... 君が居たからたくさんの楽しいことができたと思うんだ。
困るけど.....嫌いじゃないんだよ、初兎ちゃんの無鉄砲。
桃
だからこそ...
桃
続け
コメント
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はぁっ⤴どないしよ…神作すぎて目から滝が…(?) 続き待ってます!✨
遅れましたッ。ほ、ほんとに…もうやばいですね、兄の前で泣いてしまい恥ずいわwそれほどこの作品は神作って事ですね!続きが楽しみです