赫月真依
あっ…すみません…

天鷲燈莉
お姉さんさ、我慢してて辛くないの?

赫月真依
え?

天鷲燈莉
笑ってるけど…声震えてるじゃん

天鷲燈莉
ここには俺しかいないから…泣いていいよ?

赫月真依
……グズッ

そのときの『泣いていいよ』がとても私を楽にさせてくれた
どれくらい泣いたかわからないけどその間なにも言わず彼女は側にいてくれた
天鷲燈莉
はい、お水いる?

赫月真依
ごめんなさい…水はちょっと抵抗が…

天鷲燈莉
じゃあ、牛乳なら飲める?さすがにこれは頭から被ったりしないでしょ?

赫月真依
どうして水を頭から被ったって…

天鷲燈莉
髪の毛とか服がびしょ濡れなのは頭から被らないと無理でしょ

赫月真依
(この人なら聞いてくれるだろうか…)

赫月真依
私…3、4年前に両親を通り魔に殺されたんです

赫月真依
それも目の前で…

赫月真依
2人とも私を庇って…死んでしまいました

赫月真依
その日…音楽祭があってそれを外から聞いてて今はこう思います

赫月真依
私があのとき音楽祭の歌を聞きたいなんて言わなければ2人が殺されることはなかった

天鷲燈莉
そっか…それはそう思っちゃうよな…

赫月真依
それから噂で私が近くにいると不幸になるとか

赫月真依
あの子は疫病神だからとかって広まってしまって

赫月真依
学校でいじめが始まりました

赫月真依
毎日、教室の扉を開ければ水を被って

赫月真依
酷いときは水を張った入れ物に顔を押し付けられたりして

赫月真依
最初は大丈夫?って聞いてくれてた人たちも

赫月真依
クラスメイトに流されて私をいじめるようになった

赫月真依
もう…心が壊れかけてどうでもよくなってたんです

赫月真依
同調してれば苦しくても笑えば終わるかもって

赫月真依
でも耐えきれなくて…逃げてきました

天鷲燈莉
…まずお姉さんって幸運だよな…ある意味

赫月真依
どこが幸運なんですか…

天鷲燈莉
俺は音楽祭を直接見に行ったんだけどさ

天鷲燈莉
会場が壊れたとき俺ね動けなくてさ家族がどこにいるとかわからなかった

天鷲燈莉
だから俺は家族の死に目に会ってねぇの…

天鷲燈莉
でもお姉さんは最後まで親の姿を見ることができた

天鷲燈莉
知らない間にいなくなってる方が辛いよ?後悔しかないから

赫月真依
………

天鷲燈莉
それと俺は疫病神の本当の姿をその人たちは知らないんだなって思った

赫月真依
え?

天鷲燈莉
疫病神って本当は商売繁盛の神様なんだよな

天鷲燈莉
一説によればある商人がな商売繁盛の神様を地下の牢屋に閉じ込めたって話があって

天鷲燈莉
その日からその商人は他の人を寄せ付けないぐらい大儲け大儲け

天鷲燈莉
誰もが商売繁盛の神様を欲しがり中には傷つけて従わせようとした者もいた

天鷲燈莉
神様は本当は人間が好きだから助けるために力を貸していた

天鷲燈莉
しかし人間たちは自分を利用したいだけで愛してくれてはないと悟り人間を憎み疫病神になった

天鷲燈莉
疫病神と化した神様は自分を最初に閉じ込めた商人を始めに

天鷲燈莉
次々と自分を利用した人たちを不幸にしていった

天鷲燈莉
そんなある時に神様に手を差し伸べる少女が現れ自分を心配してくれる彼女に人間が好きだった頃の心を思い出す

天鷲燈莉
神様はその少女に恋をしてまたきれいな姿に戻りましたとさ…めでたしめでたし

赫月真依
なんか…それって……

赫月真依
(まるで私みたいじゃ…)

天鷲燈莉
お姉さん、俺のところに来ない?

天鷲燈莉
お姉さんを綺麗な姿に戻してお姉さんことを俺が照らしてあげる

天鷲燈莉
俺がお姉さんの道に灯りを灯してあげる!

今までこんなことを言ってくれる人は両親以外にいなかった
やっと私のことを理解してくれる人が目の前に現れたんだ
天鷲燈莉
それにさそんな簡単に心が変わる人なんてアテにしない方がいいよ?

天鷲燈莉
憔悴してる人間ほど騙しやすい人はいない

天鷲燈莉
思い出してみてその人は本当にお姉さんに優しくしてくれた?

天鷲燈莉
こうやってタオルを貸してくれたことあった?

赫月真依
……ない、です

どうして自分はあんな人たちを信じようとしていたのか
それに気づかせてくれたこの人なら…話をちゃんとに聞いてくれたこの人なら…
赫月真依
私は赫月真依といいます

赫月真依
お願いです、あなたのところに連れていってください!

天鷲燈莉
俺は天鷲燈莉、これからよろしくな!真依さん

赫月真依
はい、こちらこそよろしくお願いします、天鷲さん
