香
ねえ、ちょっとさ。話聞いてもらいたんだけど

お昼休みのひと時、私は友人、東雲塔子と机をくっつけて
一緒に昼食をとった後、向いの彼女に話かけた。
塔子
あによ、改まって。そんな事気にするガラじゃないじゃん

香
うん。ちょっと、込み入った話っちゅうか……

塔子
なに? 何か誰かとトラブってんの? 誰とよ

香
違う違う。別にクラスメイトとじゃないし、トラブルっていう程でもないんだけど、ちょっとすっきりしないことがあってさ……委員会での事なんだけど

塔子
委員会って、図書委員会だよね。何があったの?

香
うん。あのね……

私は起きた出来事を振り返りつつ話をした。
トーコは途中余計な言葉を挟まず、
適度にうなずいたり相槌を打ちながら最後まで聞いてくれた。
塔子
ふーむ。その本が入れ替わっているって事がそんなに気になる訳だ

香
まあね。大したことじゃないって想うかもしれないけど、一度気になると気にしないでいられないんだよ。それに……先輩の様子もおかしいし

あの事を指摘した後のあまね先輩は明らかにおかしかった。そして、あの後、ノッコ先輩の他何人かの図書委員にも確認したが
「わからない」という返答だったのだ。
塔子
そんで皆に嘘つかれているって感じてる、ってわけ?

香
いや、図書委員だってさ全部の本に目を通している訳じゃないし。
元の本がどうだったか知らない人もいるとは思うよ。
それは仕方がないんだけど……でも、だからこそ覚えている私の記憶の方が正しいってことじゃない?

塔子
それはちょいと苦しい理屈に思えるけどな~。人の記憶は当てにならないもんだしね

香
な、何? じゃあ、私が嘘ついているとか、記憶違いだとかってトーコも想う訳?

塔子
いや、私は信じるよ

香
え……。そう、ど、どうして?

塔子
……友達だから

香
う……。ありがと

塔子
まあ、それに記憶の捏造をするにしては、確かに内容がピンポイント過ぎる様に想うしね

香
うん。それに、図書室のデータベースを調べたら該当の本は一冊だけだったの

塔子
という事は、貸出件数が多くて人気があるから在庫を増やしたって線も無い訳ね

香
と、想うんだよね

塔子
例えば何らかの理由で元あった本を入れ替えるって事例はあるのかな

香
ああ、汚れて読めなくなっちゃったりした場合は買い替える事もあるよ

例のページが貼りついてる本に関しては現在も市販されて手に入る本だったので買い替えるという対応をした筈だ。これが既に品切れや絶版になっていたらそれも難しいだろうが。
塔子
っていう事は、通常考えられるのはその本も同じように入れ替え対応がされたって事じゃない?

香
で、でも。それなら記録に残る筈だし、他の委員が知らない筈ないと思うけど

塔子
逆に考えると、それを誤魔化せるのも図書委員だけって事になるよね

香
じゃ、じゃあ。やっぱり皆で私の事を騙してるって事?
