十三形
(この世界は俺が作り出した世界)

十三形
(全て俺の思い通りに動く、俺にとって都合の良い世界なんだ)

十三形
(だから、最初からお前達が勝つのは不可能なんだ)

十三形
(せっかく、欲望のままに他人を操れる絵本をくれてやったのに、まさかこうして結託して、主の俺に歯向かってくるとはね)

十三形
(世の中、本当に変わってしまったな)

十三形
(昔はもっと欲望に満ちていたのに)

一宮
――解答はどうしたんだ?

一宮
さっきから黙ったままだが。

十三形
まぁ、そう慌てるなよ。

十三形
いや、死に急ぐな……と言ったほうがいいか。

十三形
(そうは言っても、あちらから仕掛けてくる様子はない)

十三形
(やはり、お前達の中では、あくまでも2分の1なんだな)

十三形
(これまでの動きを見させてもらった中で、十二単だけ、いまだに誰ともやり合っていないことは分かっていた)

十三形
(つまり、ゲームが始まった時点で、ほとんどの人間が十二単の絵本が【ヘンゼルとグレーテル】であると認知していなかった)

十三形
(そこで俺はルール説明の際に、こう言った)

十三形
(10冊の内9冊が、ランダムでそれぞれの手に渡る――とな)

十三形
(この時点で、大半の人間は十二単の絵本を認知できていない)

十三形
(つまり、情報としては9冊の情報しか認知されていない可能性が高い)

十三形
(この状況でゲームを平等に成立させるのであれば、まず【ヘンゼルとグレーテル】は配られる絵本の中には入らない)

十三形
(十二単の近くにいた人間がどれだけ【ヘンゼルとグレーテル】を認知していたかは不明だが、少なくとも敵対していた連中は認知できていなかった)

十三形
(だから、俺は良くも悪くも平等にゲームを作り上げたんだよ)

十三形
(誰か1人でも、無意識に認知できていない絵本を、絵本当てに使えるわけがない)

十三形
(――つまり、除外された絵本は確定で【ヘンゼルとグレーテル】なんだよ)

十三形
(しかも、それを四ツ谷がわざわざ丁寧に、ゲームが始まってから確認してくれた)

十三形
(絵本を認知していない人間が多数いることをな)

十一月二十九日
なんか、やたらと勿体ぶるじゃねぇか。

十三形
あぁ、お前達の反応を見て楽しんでいるからな。

七星
ふん、答えるならさっさと答えればいいものを。

十三形
(そして【ヘンゼルとグレーテル】を除いてしまえば、俺の絵本はもう一目瞭然)

十三形
(見えている8冊から、残りの1冊を推察すればいいだけ)

十三形
(悪いが、俺は勝てる保証のないゲームはしないんだよ)

十三形
(確実に勝てるように、システムを利用した不正を仕込ませてもらった)

十三形
(正々堂々?)

十三形
(誰が負けるかもしれないゲームなんてやるかよ)

十三形
(お前達と一緒にするな)

改めて十三形は辺りを見回し、それぞれの絵本を確認。
十三形
(9冊の内、確認できないのは――皮肉だな)

十三形
(一宮、お前が最初から持っていた【桃太郎】だよ)

十三形
(殺されろ【桃太郎】に!)

十三形
(お前みたいな奴は、この絵本を持つべきじゃない!)

十三形
それじゃ、お望み通りに答えてやる。

十三形
俺の絵本は――。

十三形
【桃太郎】だ。

十三形
(勝ち!)

十三形
(これで俺の勝ちだ!)

十三形
(お前達は全員で負け犬となり、あわれにも絵本達に魂を喰われることになる)

十三形
(さて、次はもっと欲が深そうなやつを探さないとな)

十三形
ど、どうなってる?

困惑する十三形の表情を見て、七星が一宮のほうに視線をやる。
七星
一宮、うまく行ったな。

十一月二十九日
ったく、こんな三文芝居に付き合わせんじゃねぇよ。

四ツ谷
まぁ、結果的には思った通りになったな。

九条
やはり僕を倒しただけのことはある。一宮さんのアイディア、さすがでした。

二ツ木
まぁ、一宮と九条じゃ月とスッポンポンだけど。

十日市
九条、それ犯罪じゃん。

十二単
即席とは言え、ここまでうまくいくとはね。

みんなの視線が一宮に集まり、そして一宮は全員の代表であるかのごとく、ある一言を放ったのだった。
一宮
十三形……。

一宮
俺達の勝ちだ!
