「助けに来たよ。」
そうやって笑うお前はもう、
俺の記憶の中でしか生きていない
ずっとヒーロー気取って、辛かったくせに
ごめんな。
後悔したってもう遅いんだ
お前のこと、全然知らなくて
お前の全部、知ろうとしなくて
ごめん。
こんなんしか出てこんわ。
ごめんな。
すぐ、逢いに行くから。
ガタンッ...!!
静かな放課後の教室に
似合わない大きな音が鳴り響いた
あー、もう来るんじゃなかった
俺は頭に手を置いた
クラスメイトA
甲高い女子の笑い声がひびく
教卓に手をつけて、机に倒れ込む女の子を見下すように笑っている
複数 対 1人って卑怯な真似すんなぁ
えっと倒れてる子誰や?
顔を下向けとったら見えへんよォ?
クラスメイトA
クラスメイトA
えらい上から目線で言葉を吐き捨て
女子達は出て行った
志麻
俺は、女子共に見つからないように一旦、階段へ移動した
クラスメイトB
俺とは反対方向に遠のいていく声を背中に
教室に入っていった
志麻
とりあえず、倒れてる女の子を起こして体を揺すってみる
???
頬に傷を負いながらも笑ってグッと親指を立てるその子は
俺の幼なじみのアイツだった
志麻
露骨にガッカリする態度をとると
涼夏
涼夏
志麻
キーキー喚き散らした
こいつにこんな態度をとるとダメなのは
昔から変わっていない
志麻
涼夏
あ、はぐらかした
にっこにこ笑顔で俺の話遮りやがって
志麻
ここでとやかく言う必要は無い
俺はロッカーからお目当てのものも取り出し
ヒラヒラと見せてやった
涼夏
涼夏は興味無いって感じで見てすらいない
志麻
なんてことは幼なじみだろうと言わない
だって俺は
紳士だから (キラーン*°)
涼夏
さっき、素っ気ない返事を返したくせに
涼夏が口を開いた
志麻
ちょっと怒ってるよって感じで涼夏の目を見る
涼夏
それを感じ取ったのか、オドオドしながら話し始めた
涼夏
涼夏
ゾクッッ.....
志麻
背筋に冷たいものが走る
涼夏のひややかな視線
あいつは本気だった
志麻
なんとか保った平常心で聞き返すと
涼夏
あいつはまた笑った
志麻
俺はそんなことを気にも留めずに課題をカバンに入れる
涼夏
制服に着いた汚れをはらいながら涼夏も立ち上がり教室を出た
志麻
涼夏
,........
志麻
俺はさっきから無言で着いてくる後ろのやつに聞いた
涼夏
眉をひそめ、言い返してくる涼夏
志麻
涼夏
志麻
俺は一瞬で納得した
小学校の頃はよく一緒に登下校したもんだ
同級生にからかわれたりして。
中学になると何か恥ずかしくって
なかなか話さなかった
言っちゃえば高校生になってから
一緒に帰ったのは初めてかも。
幼なじみって時として仇となるんですね
めちゃんこ気まずい
もう、3秒で帰りたい
でも?
帰れなァい☆
だって3秒で帰れたら困ってないもん
志麻
涼夏
うん。ほんとに話すことない
無理に話題作った方がいいのかな
志麻
俺は咄嗟に思いついた話題を涼夏にぶつける
志麻
涼夏
涼夏
突然のことに戸惑いながらも涼夏はしっかりと返してきた
志麻
涼夏
志麻
涼夏
あ、だめだこれ
振り出しに戻ったわ
涼夏
少し静かに涼夏が俺に聞き返す
志麻
どんなつまんない話でも、沈黙さえなければ何でも良かった
涼夏
涼夏
はぁ?
俺はバカにされたような質問に苛立ちがつのる
思うだけなら良かったけど
志麻
なんと俺は口に出していた
涼夏
それでも表情1つ変えずに質問を続ける
志麻
反抗期の息子バリに否定してやった
涼夏
涼夏
お前はオカンか
あ、ちゃんと友達はいるよ?
うるさいのが3人だけど。
人数なんて関係ないのさ!
ハハッ...!!
涼夏
気づけばもう涼夏の家の前にいた
あんなに帰りたい帰りたい言ってたのに
あっという間だな。
志麻
俺は軽く手を振った
涼夏
涼夏も手を振り返す
その後は少し躊躇って、家に入っていった
「うん。ばいばい....」
俺はさっきの言葉を何度も何度も思い出していた
志麻
家に入る前の涼夏は
なんというか、
「辛そう」な顔をしていた
「からそう」じゃないよ?
「つらそう」ね。
家に帰りたくない。みたいな?
なんでだろ。
志麻
うん。きっとそうだ
俺は自分に言い聞かせるようにして、心に留めていた
それに、また聞けばいい。
この時はそんな、浅はかな考えだった
志麻
放課後、俺はまた教室を覗いて見た
荒れているわけでもなく、涼夏もいないので
いじめは終わったのか?
いやー、いい事だ。
良かった良かった。
志麻
涼夏がいないのならここに用はない
と、言っても過言ではない。
俺は少し、茜色に染まった教室を横目に
廊下に出た
志麻
靴のドロを玄関で落としながら誰も居ないはずのリビングに声を向ける
お母さん
扉から母がひょっこり顔を出す
志麻
驚くのも無理はない
だっていつもなら仕事なんだから
お母さん
お母さん
俺の肩をがっちり掴んだ母は目に少しの涙を浮かべながら口を開いた
志麻
俺は枕を軽く叩いた
「ねぇ、志麻?」
「落ち着いて聞いてね?」
さっきの母の言葉がもう首の辺りまで出てきている
もう、思い出したくないよ。
そう思っても虚しく、その言葉は出てきてしまった
「涼夏ちゃんが亡くなったんだって」
聞けば、颯汰と屋上から飛び降り自殺を図ったらしい
なんでだよ、
相談くらいしてくれたっていいじゃんか。
そんなに俺、頼りない?
置いてかないでよ。
久しぶりにその日は小さい頃の夢を見た
志麻
公園から少し離れた場所
草木が生い茂っている所で小さな男の子が身を縮めて泣いていた
志麻
目から涙を零しながら、必死に叫ぶが
辺りは静まり返り、誰かが来る気配もない
ガサガサッ.....
志麻
不意に草木をかき分ける音がして
小さな男の子は音がした方におしりを向け、頭を抱えた
???
志麻
聞き覚えのある声に
涙と不安でぐっちゃぐちゃの顔を上げる
涼夏
髪もぼさぼさのまま、泥だらけの手を小さな男の子に差し出すと
涼夏
と、暖かい笑顔で笑った
志麻
小さな男の子は少しいじけて手を取り、立ち上がる
涼夏
涼夏
なんて、いたずらっぽく鼻の下をくすぐった
志麻
俺は屋上で夢を思い出していた
涼夏がいなくなったと知ったからか
授業は全く入ってこない
だから、午前の授業は諦めた
午後もここにいるつもり。
志麻
俺は誰もいない屋上でぽつり呟いた
吐き出した言葉はふわふわと空に浮かんで綺麗に消えていく
どうせ、誰も来ないのだから
どうせ、あいつに届かないのなら、
もういっそ全部出してしまおう
志麻
志麻
俺はひとつずつ、愚痴とも取れるような言葉を吐き捨てていった
志麻
高校に入ってできた友達でもきっとこの穴は埋めてくれない
お前だけの席だったんだよ
「どん底ヒーローだ!」
ふと涼夏の言葉が目の前によぎった
志麻
志麻
震える声でそんなこと言ったって
どうせ届いてないんだろうな
「助けに来たよ。」
志麻
柵の向こうから涼夏の声がした気がした
待ってて、今行くから。
終わり。
コメント
3件
とりあえずいじめた人達許せない!
泣ける…。いじめって辛いんだなって改めて知ったわ。
わぁ…好き、前回と繋がってる感じがして好き(*´`)♡