天望
ん...?ここは...

天望
圭...

目の前には空泉 圭、そして
側には空中に浮かぶディスプレイ
があり、その中には...
天望
柘榴...

後輩且つ蘭丸を含む抗体人間を
創った張本人、兎隠 柘榴がいた。
圭
およ?どうしたの、天望。急に名前呼びなんて...告白するの?

天望
...別に、気が変わっただけだ。気にするな

今まで見てきた世界も
死ぬ前に少しブランクが
あったから、ここも
持って数分だろう。
天望
おい、柘榴。聞こえて見えるか?

柘榴
《は、はい‼︎聞こえて見えます、天望先輩‼︎》

天望
悪いが時間がない、手短に言う

天望
あっしと圭のことはもう放っておいてくれ

天望
自分の計画に集中するんだ

柘榴
《無理ですよ‼︎2人も一緒に逃げるんです‼︎》

天望
だが、ひとつだけ。これだけは絶対に忘れるな

天望

天望
“空”を見落とすな

あっしはそう言い残すと
繋いであったコードを
勢いよく引き抜いた。
圭
えっ?えーッ!?何してくれてんのーッ!?

天望
ん?何か問題でもあったか?

圭
いやいやいや‼︎いくら何でもぶっ飛びすぎでしょ‼︎...って

圭
『“空”を見落とすな』ってどゆこと?

天望
発煙筒を上げるんだ、あっしと圭が生きているってな

圭
え?忘れたの?“アレ”のこと

天望
覚えている

圭の言う“アレ”とは
この部屋の扉が風圧によって
爆発が起こるというものだ。
圭
じゃあ、無理でしょ

天望
実は、あっしは未来から来たんだ

圭
...ん?ごめん、ファンタジー過ぎて...え?

天望
証拠はこのボイスレコーダーにある

そして、あっしは蘭丸から
受け取った伝言を流した。
蘭丸
《空泉さん、未来の流鏑馬 蘭丸っす》

蘭丸
《時間がないので手短に俺達の未来を伝えていくっすね》

蘭丸
《まず俺は小鹿と結婚して、花澄っていう6歳になる娘がいるっす》

蘭丸
《今日、俺が通り魔に刺されそうなところを鉄砲ヶ原さんに助けてもらったんすよ》

蘭丸
《鬼塚(おにづか)さんはレディースの暴走族の初代総長らしくて、今では人に迷惑をかけない範疇で活動してるとか?っす》

蘭丸
《柊さんは去年、人間になったんすけど、よく笑うようになってこちらも嬉しいっす》

蘭丸
《鹿王院さんは絵鳩 ルナさんと一緒に廃研究所で暮らしてるっす》

蘭丸
《それで

圭
あ、電気が復旧し始めたね

圭
今、未来の蘭丸のメッセージ聞いてるけどさ、これいつ作ったの?面白いね

天望
黙って聞いてろ

蘭丸
《黒野(くろの)君、魃(ひでりがみ)さん、御子柴(みこしば)君、ニーナ...この4人は亡くなったっす》

圭
えっ?

蘭丸
《でも、今ならやり直せるっすよね?》

蘭丸
《2人なら...“全員”を人間に戻すことも可能っすよね?》

圭
っ⁉︎どうして、私と天望の約束が⁉︎

蘭丸
《あの頃の俺は逃げながらも周囲の音を全部拾ってたんすよ》

蘭丸
《だから2人の話してたことも筒抜けだったんすよ》

蘭丸
《これで疑いは晴れたっすよね、空泉さん》

蘭丸
《俺達と鉄砲ヶ原さん達の未来に幸あれっす》

「おい、何だこの部屋は」
「っ⁉︎鍵が掛かっている‼︎」
圭
はぁーあ、何だかなー

圭
蘭丸達は今頃、逃げてる筈だもんね

圭
だとしたら私達の約束を事前に取り入れることは不可能...か

圭
じゃあ、未来の天望。どうすれば良いの?

天望
信じてくれるのか⁉︎

圭
あまりにも非科学的で信じ難いけど、信じた方が面白そうだし?

天望
理解に苦しむが信じてくれるなら良かった

「そこにいるのは分かっている‼︎」
「大人しく開けろっ‼︎」
天望
まず、爆発は間違いなく成功だ

圭
おっ、未来が潰えた

天望
諦めるな

天望
この部屋にある棚をできるだけ一箇所に集めろ

天望
そうすれば爆風でも避難経路があまり塞がれない

圭
凄い、ガチャガチャされて開けられそうだけども?

天望
口より手を動かせ‼︎

そして、あっしは協力して
車輪付きの棚をできるだけ
一箇所に集めた。
圭
あちゃー、あと3つだったのにー

天望
しゃがめ‼︎圭ッッッ‼︎‼︎
