ある施設の屋上
雄也
誠(まこと)、噂は聞いたか?
雄也(ゆうや)が青い空を仰ぎ見ながら言った
誠
聞いてる
誠
大量破壊兵器のことだろう?
雄也
流石に聞いているか
雄也
よく今まで都内の高校に隠し持っていたよな
誠
全くだ
雄也
……どうなると思う?
誠
どうって
誠
いつもと変わらない、少人数の諜報(ちょうほう)活動さ
雄也
……だよな
雄也
いつも通りやるしかないか
誠
弱気になるなよ
誠
雄也らしくない
雄也
すまん
雄也
そういや、そろそろ司令の所に行かないとだな
誠
あぁ
司令室
広いくせに空気が悪い部屋にいたのは、司令だけではなかった
司令
二人ともきたな
誠
司令、これは
司令
各部門のリーダーたちは怖いか?
誠
……いいえ、任務をこなすだけです
司令
はっ!
司令
心の準備はできているようだな
誠
はい
司令
早速だが、君は明日都内の学校に編入してもらう
誠
明日、ですか
司令
事態は急を要する
司令
都内、彩生(さいせい)高等学校内に大量破壊兵器の存在が確認された
司令
情報によると、8日後に起動する
誠
大量破壊兵器……
司令
誠、君は大量破壊兵器の正確な座標の取得をしてくれ
誠
……
司令
胃が縮み上がったか?
誠
起動の阻止はしなくてもいいのですか?
司令
それは雄也の仕事だ
司令
高校という性質上、大事にはするなよ
誠
わかりました
司令
それとだ
司令
君のサポート役として情報部の人間を用意している
司令
すでに高校に編入しているよ
誠
バックアップなんて必要ないですよ
司令
文句をいうな
司令
生徒として潜入するんだ、一人じゃ動きづらい
司令
互いの顔は確認するな
司令
クラスメイトの誰が相棒かわからない状態で任務を行え
誠
なぜです?
司令
向こうの教頭が元諜報員だ
司令
アイコンタクトでバレる
誠
まさか
司令
腕は君より上だ
司令
十分に気を付けなさい
数時間後
再び屋上
雄也
誠、大役だな
誠
お前もだろう
雄也
俺は兵器の無力化だけだ
雄也
それに隊長がいるからな
雄也
対してお前は一人だ、正直尊敬する
誠
別の部門からサポート来るらしいけどな
雄也
情報部門の人間か?
雄也
朝から夜までモニターを見ているような連中だ
雄也
潜入じゃ役に立たないだろうさ
誠
それじゃあ、黒板を見るのも辛そうだ
誠
大丈夫だろうか……
雄也
心配すんなよ!
雄也
お前たちの身が危険に晒された時は、俺らが突入するから
誠
そうなのか
雄也
あぁ、救難信号を発信してくれ
雄也
ただ、兵器の使用が防げる場合だけだ
雄也
兵器の場所も見つかっていない時は、助けにいけない
誠
わかってる
誠
もう大丈夫だ
雄也
お互いやってやろうぜ、誠
誠
任務中は「ドッグ」と呼べよ
雄也
わかっているさ
誠
よろしく「モンキー」
翌日
学校の教室
担任
今日は転校生を紹介する
誠
(ここか)
担任
自己紹介できるか
誠
はい
誠
(ここは爽やかに)
誠
みなさん初めまして!
誠
誠と言います
誠
趣味は運動
誠
どうか仲良くしてください、よろしくお願いします!
女子たち
結構カッコよくない?
女子たち
どうしよう声かけようかな
誠
(よし、好印象だな)
誠
(情報収集させてもらうぞ)
担任
それじゃあ、空いてる窓際の席に座ってくれ
誠
はい
誠
(あの女子の隣か)
誠
(出来るだけ仲良くならないと)
誠
誠です、よろしく
茜
……
誠
君の名前は?
茜
……茜(あかね)
誠
そ、そっか
隣の席に座る茜は、不機嫌そうにそっぽを向いてしまった
この時、俺と茜の運命は大きく変わっていたのだった