主。
主。
主。
主。
Akの様子に違和感を感じた次の日の土曜日、 午前授業がある俺はいつもより早く登校して Mzを連れずに1人で図書室に来ていた
Pr
元々そこまで人が多くない図書室であるが、 現在が始業前である影響か本を読みに来ている生徒は少なく、 普段より静かな空間がそこにある
どうしてこんな時間に図書室に来ているのかと思われるかも知れないが、 特にそこに意図はなく、自然と足が図書室に向かったのだ
文庫本を漁るでもなくぼーっとAkの異変について考えながら 俺が時間を浪費していると、 いつも早くに出勤しているらしいTg先生が声をかけてきた
Tg
Tg
Pr
俺が彼の方を振り向くと、 彼はしばらく俺の表情を見て何かを察したかのように微笑み、 読書スペースの椅子をひいて俺の隣の席に座った
Tg
Pr
図星を刺されて俺が戸惑っていると、 Tg先生はやっぱり、とつぶやいて優しい笑顔を浮かべる
Tg
Tg
Pr
俺が的確なことを言ってくる彼に驚いてそう尋ねると、 先生は俺の全てを見透かしているように笑ってこんなことを言ってきた
Tg
Tg
Tg
Pr
Tg
Pr
俺の了承の返事を聞いたTg先生は、 にこりと笑って彼の高校時代の話をしてくれた
高校時代のおれは、本を読むのが大好きだったこと以外は 特に特筆することのないいたって平凡な高校生だった
Tg
特別仲がいい友達がいるわけでもなかった当時のおれにとって、 学校での楽しみといえば昼休みに図書室でゆっくり読書をすることぐらいで、 おれは毎日昼休みが待ち遠しくって仕方がなかった
キーンコーンカーンコーン…
Tg
4限目終了の合図を示すチャイムが鳴った瞬間、 あらかじめ買っておいた購買のおにぎりを高速で胃に納め、 図書室に直行する
そんな毎日を送っていたおれが 今後誰よりも大切な人となる男の子に出会ったのも、図書室だった
おれと彼が出会ったのは、なんの変哲もない平日の昼休みの図書室
おれと彼が同じ本を同時に取ろうとしたのがきっかけという、 今でも漫画みたいだと2人で笑ってしまうような出会いだ
Tg
Tg
おれが探していた本を見つけて その本が見せてくれるであろう新しい世界にワクワクしながら手を伸ばすと、 視界の端から誰かの手が伸びてきた
Tg
Kty
驚いてその手が伸びて来た方向に目を向けると、 おれと同じようにびっくりした顔をした、のちの恋人が立っていた
Kty
Kty
Tg
当時のおれは驚いてパニックを起こしていたので、 彼の物言いがどうにも自嘲的であることに気が付かなかった
しばらく2人でどうぞどうぞと譲り合いを繰り返していたが、 やがて根負けしたおれが先に本を借りることにした
Tg
Kty
そう言っておれに本を譲ると彼は、 近くの棚から同じ作者さんの別の本を取り出す
Tg
おれが世間話のつもりで本の表紙に書かれた著者の名前を 指さしながらそう尋ねると、彼はキラキラした笑顔で返事をする
Kty
Tg
当時のおれは全然気が付かなかったけど、 今覚えばこの時点でおれは彼に心を奪われていたのだ
Tg
Tg
Kty
Tg
Tg
なんかおすすめのやつとかありますかね、?
おれがそう尋ねると、彼は嬉しそうに目を輝かせてマシンガントークを始める
Kty
Kty
Kty
幸せそうに本の話をしている彼の言葉をおれがうんうんと聞いていると、 数分後に彼はハッとしておれにこんな謝罪をした
Kty
Kty
Tg
Tg
Kty
Kty
Tg
Kty
ちょっと嬉しそうな顔をしている彼におれも嬉しくなって、 そういえばと彼の名前と学年を尋ねる
Tg
Kty
Tg
Kty
Tg
Kty
Tg
Kty
Tg
Tg
Kty
Kty
Tg
その後おれは昼休みは読書をしながらKtyと話すようになり、 今までよりも一層昼休みが待ち遠しくなった
しばらくおれ達の間のコミュニケーションといえば本の話ばかりだったけど、 やがて仲良くなったおれ達は期末前に2人で勉強会をしたり、 街の図書館に2人で行ったりもするようになった
そんなある日おれが次の授業の準備をしていると、 自身の筆箱の中にKtyの消しゴムが入っていることに気がついた
Tg
Tg
教室の壁にかけられた時計を確認したおれは、 まだ次の授業までは時間があると判断し、Ktyにその消しゴムを 返しに行くことにした
Tg
おれは事前に彼から聞いていた彼のクラスに出向き、 一番ドアの近くにいる生徒に声をかけた
Tg
Ktyのクラスメイト
Tg
Tg
Ktyのクラスメイト
Tg
Ktyのクラスメイト
Tg
Tg
Ktyのクラスメイト
嘘告罰ゲームの対象なんかにしたら可哀想ですよー?www
Tg
Tg
Ktyのクラスメイト
Ktyのクラスメイト
本当に知り合いなのかよ?w
Kty
窓際の奥の方に座っていたKtyは読んでいた本から顔をあげて、 扉に目を向けておれの姿を認識する
すると彼は少し驚いたように目を見開き、 本を机の上に置いてこちらに向かって歩いてきた
Tg
Kty
Ktyのクラスメイト
自分の消しゴムその人の筆箱に放り込んだわけ?w
Kty
Ktyのクラスメイト
Ktyのクラスメイト
Ktyのクラスメイト
手を出したってお前みたいなやつが見向きされるわけねーだろwww
ニヤニヤと意地の悪そうな笑顔を浮かべる彼らに、 おれはなんとなくKtyが置かれている状況を理解した
Ktyをばかにするような物言いと今までのおれらの関係を 全て嘲笑うような発言に怒りが湧いたおれは、はあ、とため息をついて 気がついたらこんなことを言い返していた
Tg
Tg
Ktyのクラスメイト
予想外の方向から反論が飛んできて彼らは驚いているのか、 目をまんまるにしてこちらを見ている
今まで平穏な学校生活を送ることを信念としていた 理性的な自分が焦って口から飛び出る言葉を抑えようと試みるが、 荒れ狂う感情の波はそれらを全部跳ね除けてしまった
Tg
そこをとやかく言うつもりはないけどさ
Tg
それに関してどうこう言われる筋合いはない
ポカンと口を開けておれを見ているKtyのクラスメイト達から目を逸らし、 同じく呆然としているKtyに満面の笑みで声をかけた
Tg
Kty
おれが教室から出て自分のクラスに向かった後、 少し上擦った声でKtyに何かを聞く彼らの声が聞こえたが、 Ktyに対する悪口ではなさそうだったので放っておいて教室に戻ることにした
その日の昼休みにおれは、 休み時間に思わずあんなことを口走ってしまったことを後悔しながら Ktyが今日も来てくれるか不安な気持ちで本を読んでいた
Tg
Tg
後から冷静になってみればめちゃくちゃ恥ずかしい、、、)
Tg
当時のおれはまさに百面相をしていたのであろうことは 今考えてみても明白なことであった
図書室にいると言うのにそわそわと落ち着かない気分になっているおれが 全然進まない読書をしていると、いつもの時間より少し遅れてKtyが来た
Kty
Tg
Tg
Kty
Kty
Tg
特にクラスにはいなかった気がするから
Tg
Kty
Tg
その場にしばらく沈黙が落ちるが、 やがてKtyがその空色の瞳を揺らしながら不安げに聞いてくる
Kty
Tg
Kty
あんなふうに言われたりすることも少なくないんだけど、、、
Kty
Tg
思いもよらない質問におれが間抜けな声をあげると、 Ktyはぎゅっと目をつむって続ける
Kty
Kty
Tg
Kty
Tg
あんなふうに言い返したりしなくない?
Kty
Kty
Ktyのその言葉を聞いて少し喜んでいたおれは、 ちょっとひどいよなと今でも思う
Tg
Tg
おれは今後Ktyに対する態度みたいなのを変えるつもりはないよ
Kty
Kty
Tg
Tg
Tg
Tg
いつかKtyと一緒にやってみたいなと思ってる
Kty
Kty
今まで溜まってきた痛みが全部あふれてしまっているのか、 彼は少しだけ泣きながらおれにぎゅっとくっついてきた
おれはその頭をよしよしと撫でながら、 まあおれはKtyともっと先にも行きたいと思ってるけど、なんて 考えていたが、そんな口説き文句を口にする勇気なんてあるわけがなく、 あくまで先輩として彼に寄り添っていた
Tg
その後おれ達は以前と同じように2人で仲良く学校生活を過ごしていき、 おれの高校の卒業式の日にKtyが告白してくれて晴れて恋人になった
彼とは現在も交際を続けており、 今は2人で一緒に同じ家で暮らしている
Tg
おれは今でも図書室って場所が大好きで、
司書の先生になったんだ
Pr
Pr
Pr
Tg
Tg先生から昔話を聞いて判明した様々な新事実に驚愕している俺を見ながら、 彼は楽しそうに笑い転げていた
Pr
Tg
Tg
別に大好きな恋人について惚気たかったわけではなくて
Tg
それを隠しがちなんだけど、心のどこかでは助けてほしい、だったり
気づいて欲しい、って気持ちがあるんだって言いたかったの
Pr
Tg
彼らにとっては偽善に見えることも少なくないけど、、、
Tg
彼の一番の親友だよね
Tg
きっとAkくんだって本当は気づいて欲しいと思ってるよ
Pr
Tg
Prくんに問い詰められて
嫌だって思うなんてことはないんじゃないかな
Tg
言い方とか問い詰め方は気をつけなければいけない
Tg
Prくんなら彼の傷に触れてもいいんじゃないかと思ってる
Tg
今後どうするかはPrくんの判断に任せるけど、、、
Pr
いろいろなことを経験してきた“大人”であるTg先生の言葉には 大人ならではの安心感と説得力があって、 その優しい表情からも彼が本当に俺達のことを考えてくれていることが伝わる
Pr
寄り添ってあげたいし俺を頼ってほしい)
それでも迷っていたAkに関することの決断を、 今のTg先生の言葉がそっと後押ししてくれる
Pr
Pr
Pr
Pr
Tg
Pr
Pr
Pr
Tg
どうしようもない不安がずっとまとわりついてくるよね
Tg
大きくなるし、相手のキモチが見えないから億劫になってしまう
Tg
Pr
Tg
それとなーく聞いてみるっていうのはどうだろう
Tg
ちょっとした事情と名前しか知らないから、、、
Tg
Akくんのことを誰よりも知っている君次第だよ
Pr
Tg
Tg
Tg
そう優しく言ってくれるTg先生に俺が目を見開いた時、 予鈴が鳴ってもうすぐ朝礼が始まるということを知らせた
Tg
Pr
俺は図書室の扉を開けて外に出る時、 Tg先生の方を向いて感謝の言葉を告げた
Pr
Tg
そう言いながら優しい笑顔を浮かべた先生にぺこりとお辞儀をして、 俺は図書室をあとにした
図書室から外に出ると、 そこには見覚えのあるツートンカラーの髪の毛をもつ男子がいた
Pr
Mz
Pr
俺がそう尋ねると、どうやら感情表現がヘタクソらしい友人は 気まずそうに視線を逸らしながら言った
Mz
Pr
Pr
Mz
Mz
Mzはしばらく瞳を泳がせながらあちらこちらに視線を動かしたあと、 気恥ずかしげにうつむきながらこんなことをつぶやいた
Mz
Mz
Mz
Mz
Pr
Pr
あまりにも不器用すぎる友人に俺が笑いを堪えていると、 Mzは不服そうに文句を言ってきた
Mz
Pr
Mz
そう叫んでずんずん歩いていくMzに、俺は笑いながらついていく
目の前を歩いていく彼のおかげで、 俺は少しだけ数時間後の自分に勇気を持つことができた