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そろそろ潮時か。
自分の口でしっかり説明しなくては。泣いてはいけない。
あの人のために。
このライブのために。
野乃子
ステージの周りで涙を流すお客さんたち。
一番泣きたいのは私の方よ。
彼が病で亡くなったって報告が来たのはまだ遠くない話だった。それどころか病だったことに気づいてなかった。
しばらく彼の姿が見えないと思ったら、病によって亡くなっていたことを亡くなってから知らされたのだ。
そして今に至るというわけだ。
泣きたいけど最後ぐらいは笑って終わりにしたいよ。
だから……。
野乃子
宗治
私はこの声に聞き覚えがあった。何かが聞こえる。
後ろを見た。
スクリーンが下ろされて、映像が映る。
野乃子
私は思わず声を出してしまった。
そこには亡くなった彼が映っていた。
いつ撮ったのだろうか。
宗治
宗治
私は周りにいる男三人を見る。
親指を立てて笑顔でこちらを見ている。
宗治
彼の歌声が鳴り響く。
宗治
(ドラムがリズムよく叩きこまれる)
1.俺は四人の仲間たちと バンドを組んだ 熱い思いが 俺らの絆を燃えさせるんだ 俺たちはまだ無名だった けんかしたよね でもお互い 謝ったんだ~ Ah~ もう一度だけ願いが叶うなら お前たちに会いたいんだ そして一緒に曲を奏でるんだ だから奏でてくれよ
(周りの男三人も彼のリズムに合わせて奏で始めた。いつ、彼らはこの歌を練習したんだろう)
2.俺は一人の女神に 恋したんだ その歌声を もう一度聴きたいんだ 俺たちは仲間が増えた 最高だよと でもお礼が したいんだ~ Ah~ もう一度夢を見れるなら ステージの前に立ちたい そして一緒に盛り上げるんだ だから言わせてくれよ Ah~ 先に逝ってごめんね そしてありがとう 最高の仲間たちよ
曲が終わった。
宗治
野乃子
野乃子
私はそう言った瞬間、私の目から一筋の涙がこぼれた。
絶対泣かないって歌う前に決めてたのに。
男性客たち
女性客たち
っていう声がかかる。
そうよね、泣いたら歌えないもんね。
私は袖で涙を拭いた。