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べらんだ

1 - べらんだ 1話

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38

2021年02月18日

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私は今夜、自分の人生を終わらせるつもりだ。

遺書をベランダに遺して

自分の住んでいる8階の部屋から飛び降りて

あいつらを死ぬほど後悔させてやる。

そのつもりだったのに

ベランダの壁越しに少しだけ見えた、隣の部屋に住む男の子のせいで計画が狂ってしまった。

私が見た時、少年はベランダに膝を抱えて座っていた。

今私が飛び降りてしまったら、私はこの子のトラウマになってしまう。

誰にも迷惑かけずに死にたかった私は一旦家の中に戻ってお風呂に入り、髪を乾かしてかっちりと制服を着た。

それからベランダに出ても、まだ少年は同じところにうずくまっていた。

ひまり

佐々木少年?

少し勇気をだして話しかけてみると、その子は驚いたように顔を上げてこちらを見た。

少年

は、はいっ

ひまり

急にごめんね

ひまり

佐々木くんであってた?

少年

えっ、あ、な、な、なんですか?

ひまり

いや、さっきからずっとベランダいるよね

ひまり

なんでかなーと思って

少年

あ…

少年

あの、あの、僕は…

ひまり

うん

少年

…わかりません

ひまり

わからないの?

少年

はっ、はい

ひまり

そっか〜

ひまり

家の中に入れないの?

ひまり

寒いでしょ

少年

大丈夫、です

ひまり

あれ、きみ、名前は?

少年

佐々木海人です

ひまり

へー

ひまり

たしかお姉ちゃんいたよね?

少年

あ…はい

ひまり

お姉ちゃんの名前ってなんだっけ?

少年

…あ、あの

少年

お姉ちゃんのことは、あんまり……

ひまり

ひまり

ごめん

ひまり

じゃあ、きみ、何歳?

少年

12歳

ひまり

じゃあまだ小学生なんだ?

少年

……い、いえ、中1です

ひまり

あーそっか

ひまり

早生まれなの?

少年

…はい

ひまり

そっか、私もだよ

少年

……あの

ひまり

ん?

少年

…なんで僕なんかに話しかけるんですか?

少年

大前さんは家に入ればいいのに…

ひまり

きみ、私の名前覚えてくれてたんだ

ひまり

なんか嬉しい

ひまり

ありがと

少年

…質問に答えてください

ひまり

え?あー…

ひまり

私はベランダに用があるのだよ

少年

…じゃあ、その用を、さっさと済ませて

ひまり

違うの違うの、きみがいたらできないようなことだから

少年

え…

少年

たとえば、どんな?

ひまり

…んー、言えない

ひまり

人に言えないようなことなんだ、ごめんね

少年

…そうですか

ひまり

きみはどうして中に入れないの?

ひまり

締め出されちゃったの?

少年

……

ひまり

ひまり

そうだ

ひまり

昔なんかのドラマで見たんだけど

ひまり

ベランダの窓がオートロックになってて、うっかり外に出て窓閉めちゃったから出られなくなっちゃって

ひまり

結局その人は、5階から飛び降りたんだよね

少年

…そ、それで、どうなったんですか

ひまり

全然無傷で家の中に戻ってた

ひまり

まあドラマだからっていうのもあると思うけどさ

ひまり

5階からじゃ死ぬ時と死なない時があるんだろうね

少年

……はい

ひまり

まあでもここは8階だし

ひまり

飛び降りたら確実に死んじゃうと思うよ

ひまり

8階は死ぬのにちょうどいい階数とも言われてるから

少年

…そうなんですか

ひまり

そーそー

ひまり

当然もっと高くても死んじゃうと思うけどね

少年

……僕も

ひまり

ん?

少年

…僕も、ここから飛び降りたら

少年

楽になれますかね

ひまり

……んー

ひまり

そうだね、なにか変わるかもしれないよね

少年

少年

そうですね

ひまり

じゃあ私、もう家ん中入るから

ひまり

風邪ひかないようにね

少年

ありがとう、ございます

ひまり

うん、じゃ

私はそう言ってドアを閉め、ふと今日、自殺ができなかったことに気がついた。

ひまり

(…あー)

ひまり

(せっかくこんなに準備したのになあ)

ひまり

まあいいや、明日にしよ

私は自分に言い聞かせるようにそうつぶやいて、制服のままベッドで眠ってしまった。

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