いつかの貴方へ

✉️

ー拝啓いつかの貴方へ 貴方は今、どこで何をしていますか？ 私は今、映画を作っています。 思い出したくない。忘れたい。けど消えて欲しくない。あの時の私たちを映画にしています。 この映画は、誰かに需要があるかと言われれば無いだろうし、人に見られると少し恥ずかしい。じゃあなんで映画にしてるんだって言われちゃいますが、その理由は一つです。 来世でも貴方との思い出を頭に焼き付けるため。貴方との忘れたく無い思い出をずっと覚えておくために。そのためだけに、映画を作っています。 貴方は、今進みたい道に進めてますか？ 貴方は、今かけがえの無い時間を過ごせていますか？今が楽しいですか？辛く無いですか？無理して無いですか？ ごめんなさい。つい質問ばっかになってしまいましたね。 一つ貴方にお願いがあります。 私が今作っている映画が完成したら、見に行ってください。そしていつものように笑って感想を聞かせてください。 ゆっくり、待ってますね。　　2019年11月15日

一通の手紙が来た

昔の友達からのものだった

その手紙は2019年で、6年経った今自宅の郵便ポストに入っていた。

ー2025年1月1日　自宅

考えてみれば毎年悲しい年明けを迎えていたと思う。

若い頃は楽しかった。

今じゃこんな枯れ果てて

仕事に脳が洗脳されて。もううんざりだ

そして年末年始になると、毎年思い出す。

一度死のうとしたことを。

自宅のマンションの屋上から飛び降りようとした。

でも誰かを思い出して死ぬのをやめた。

ーピピピピ

どうも思い出せない。

寒い朝。仕事以外じゃ滅多に来ないメッセージが来る年明け

5人からメッセージか。

返事をしている時ほど虚しい時はない

返してくうちに、どんどん自分が1人だって気づくから

同じ名前なのにこんなにも違う

そう思うと尚更虚しくなる

福袋なんてもう何年も買ってない

というか仕事以外で外に出ることはほぼなくなった

あるとしても食材を買ったり、生きるために出るのであって

自分の娯楽のためには外に出なくなった

外はどのくらい寒いのだろうか

そんなことを思いながら、外に出る準備をした。

ー2025年1月1日　外

そりゃそうだ。外は3℃で真冬だ。

関東にしては珍しい雪も降っている。

息を吸い込むと鼻が冷たくなる。

息を吐くと白くなる。

当たり前だけど、それが新鮮に感じた。

突然周りを見てそう思った。

親子、カップル、夫婦、友達。

みんな誰かと一緒にいて、一緒に時を過ごしてる。

じゃあ僕はどうだ。

何が幸せで、誰のために、どうして生きているんだ

突然そう思って出た言葉だった。

あまりの虚しさと恥ずかしさにその場から逃げ出したくて

逃げ道を見つけてはそそくさと逃げようと思った。

小走りでコンビニに向かい、レジで会計を済ませ、家に帰る。

それができれば僕の勝ちだ。

ーコンビニ　中

思わず口に出た

次々と商品の値段を確認してはカゴに入れる。

早く帰りたい。

その一心だった

ーコンビニ　レジ

定員さんがレジを進めていく。

その間に財布を取り出してお金をなるべくスムーズに出せるよう待機しとく。

人と関わりたくないからこそ、事前に準備しておくんだ

袋が3円。高くなった

思ったより高くてびっくりした。

2000円を出した。

今のところ順調だ。早く帰ろう。

おわった。僕はよくやったと思う。

自分で自分を褒めた。

ー外

終わった。やりきった。

家から出るのは簡単なことなのに

自分も大人なのに、どうしてか

すこし周りの大人が怖かった。

深呼吸をして一歩踏み出した。

周りの音が聞こえる。

冬の匂いがする。

人が多い。

人がたくさんいる。みんな笑ってる。

あれ

なんでだろう。

こわい

自分が惨めだ。

逃げたい。

離れたい

少しでも人のいないところへ

逃げたい

そう思う一心で走った。

ードン

ぶつかってしまった。

怪我をさせてたらどうしよう。

僕のせいだ。

よかった

心からそう思った

なんて優しい人なんだろう

僕とは違って

周りが見えてて優しい人だ。

驚いた

急に大声で言うから反射的に声が出た。

だれだ？なんで僕の名前を知ってるんだ？

やばい。思い出せない。どうしよう。

中高が一緒で、女性。同い年といえば1人しか思い当たらない。

けど、向こうが覚えてるはずがない。

違う。別人だ。別人なはず。