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テラーノベル(Teller Novel)

東京からはるか遠くに、その島はありました

歩いても一時間で島をぐるっと一周できるほどの大きさで、サトウキビや果物が主な産物です

小さいながらも、役場はもちろん、小学校や中学校もあります

今日は役場で、村長や村の人たちによる会議が行われています

議長

それでは次の議題ですが、村長

議長に呼ばれて、村長は立ち上がります

村長

えー、皆さんもご存じの通り、この島には現在、信号がありません

村長

これはのちのち問題になるのでは、と私は考えております

―どういうことだろう

村長の発言に、村の人たちが首をかしげています

彼らの様子を見ていた村長は、コホンと咳をしました

村長

疑問に思う方もおられるでしょう

村長

私たちの島は小さく、信号など必要ないのでは、と

村長

ところがですね、今、島には小学校、中学校合わせて15人の子供たちがおります

村長

私は、この子達の将来を心配しているのです

村の人たちはまだ村長の話がよくわからないようで彼をじっと見つめます

村長

なぜ心配しているのかと申しますと、これは私の体験によるものです

村長

実は私は、中学校を卒業後に島を出て、東京に行っておりました

村長

10年間だけですが、その苦労は大変なものでした

村長

人の多さ、物価の高さはもちろんですが、交通量もかなりのものでした

村長

私は、そのときはじめて、信号をみたのです

なぜ村長が信号について話しているのか、この時になって村の人たちも気がつき始めました

顔を見合わせ、うんうんと、うなずいている人もいます

村長

皆さん、お気づきになられましたね

村長

そうです、信号を実際にみたことのない島の子供たちにも、信号に慣れてもらいたいのです

村いちばんの長老が、大きくうなずきました。

長老

確かになあ、オラどもの島は牛車しか走ってねえけど、子供らが東京に行くことがあれば、信号を知らないのは危ないかもしんねえ

うんうん

そうだな

村の人たちは信号を作ることに興味を持ち始めています

村長

ですから私は、この島に信号を作ることを提案したいのです

マサオ

でもよお、村長

手をあげたのは、青年部のリーダー、マサオさんです

マサオ

オラたちの島には信号はもちろん、車もねえぞ

マサオ

車もねえのに信号を作っても、意味がねえんじゃねえか

村長

マサオくん、それは大丈夫です

村長

車も、信号と一緒に島に運んでくるのですよ

マサオ

車があっても、誰が運転するんだよ

村長

私が運転します

村長

東京で免許をとりましたから

マサオ

おお、それならバッチリだな

こうして、村の人たちの了承を取りつけ、村長が発案した「島に信号を設置する」案が認められました

ところが、いざ決めたものの島の予算には限りがあったり、先に道路の整備をしなければいけなかったりと、信号設置の計画はなかなか進みません

それでも、村長の熱意は消えることはなく、長い年月がかかりましたが、やっと実現したのです

しかしこの時、信号は必要ないものになっていました

この島にいた若者たちは皆島を離れ、島には老人しかいなくなっていたのでした

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