理想じゃなくても ①

キスをするのに

理想の身長差は12cm.

君と私の身長差は

それとは程遠い.

スマホの画面をこちらに見せながら

理穂が言った.

彼との身長差はいくつだろうと

考えて、やめた.

小春が楽しそうに

腕を組んでくる.

私が彼女を見上げるような位置.

160cmは超えている

小春たちが羨ましい.

私の身長は

小数点以下を四捨五入して

やっと155cmになる.

女子の中でも圧倒的に小さい.

それに対して、君は。と

バカ騒ぎする男子の集団に

目をやった.

男子の輪の中心で笑う、野村.

確かこの間の身体測定で

186cmになったと言っていた.

10cm私にくれても、176cmだ.

メッセージアプリで

そうぼやいたときに

彼はからかうようなことを

言っていたけれど.

私は本気だ.

そこで、あることに気がついた.

10cmくれたら、

私との身長差は12cmになる.

ますます、彼の身長が欲しくなった.

ニュッと脇から理穂の顔が

のぞいてくる.

知らないうちに、野村の事を

目で追っていたみたいだ.

なんだか悔しくなって.

何もなかったように

視線を理穂たちに戻した.

目が合え、と思っても

いつも野村は

私を見つけてくれない.

悔しい.

『見つけてよ』

そんな重いこと

言えるワケない.

野村が私を見つけられないのは

この身長のせい.

恨みに思いながらも

私はこれを避難所に

しているんだろうな、と思った.

野村が私を見ないのは？

チビだから.

野村が私を見つけられないのは？

チビだから.

小さすぎて見えないんでしょ？

ほら. 私は、弱虫だ.

コンプレックスとか言いながら

何かがうまくいかないときは

大体押し付けて.

ないものねだり.

タラレバ.

私の良くない癖.

大きくため息が漏れた.

❤️きたら続き出します!!🙌 読んでくれて📖 ありがとです!!😁 ぜひ他のも 見てみてください!!🥀