母親
メリエン
母親
母親
母親
メリエン
母親
メリエン
母親
母親
母親
母親
母親
母親
母親
メリエン
メリエン
メリエン
母親
そしてアタシは、生まれ故郷のファーデンの町を出た。
人々の喧騒が、遠いものに聞こえてくる。
リュックサックは、幼いアタシを潰しそうなほど重かったの。
ファーデンの象徴である煉瓦造りのファーデラ・ブリッジを渡ると、森が見えた。
鬱蒼とした恐ろしい森だ。
魔物が出るような森だ。
そう、アタシたちのようなおぞましい妖精にお似合いの森なの。
アタシは、地図を見て歩いてたけど入り組んだ森の中で迷ってしまったわ。
もうファーデンの町も遠くなっちゃって、森は永遠に続くようにすら見えたの。
追い討ちをかけるように霧までかかってきて、春なのに異様に寒かったわ。
わずか8歳の少女にしてみれば、恐ろしいとしか言いようがなかった。
メリエン
知らないうちに涙まで溢れていた。
メリエン
メリエン
メリエン
森の風景が涙でぼやけて全く見えなかった。
バシンっ!
狭い道で、誰かに押された。
りん
体が横転して、木にぶつかった。
メリエン
メリエン
りん
りん
メリエン
りん
メリエン
メリエン
なんて言う名前の街だったかは覚えてなかったけど、綺麗なシャンデリアに憧れていたのでその情報だけ覚えていて、そう答えたの。
りん
りん
りん
メリエン
りん
男前な巫女は、微笑んだわ。
鬱蒼とした森には、夜が訪れたの。
メリエン
りん
りん
メリエン
りん
りん
そうかもしれない。精霊族の名前だから。
メリエン
りん
りん
メリエン
りん
メリエン
りん
りん
本当に真っ暗だ。
でも突如、ひとつだけ木の影になっていたところから明かりが見えたの。
メリエン
メリエン
りん
りん
りん
そうだろうか。
綺麗な時計塔と、大きな洋館がひとつだけ。
シャンデリアもないわ。
ここがリーファーなわけない。
メリエン
りん
メリエン
メリエン
りん
りん
アタシはね、ファーデンから来たの。
なんて言えないや。
ファーデンには何人か妖精がいるなんて、誰でも知ってる。
もしも妖精だとバレたら、りんちゃんに嫌われちゃう。
りん
メリエン
メリエン
りん
りんちゃんは豪快に笑い飛ばした。
りん
りん
りん
メリエン
りん
りん
もしかしたら、空き家かもしれないわね。
メリエン
メリエン
りん
りんちゃんは、洋館の重い戸を開いたわ。
扉が開いた途端、シャンデリアが見えたの。すごく綺麗だったわ。
りん
りん
うん、アタシすごく心が躍るの。
昔、絵本で読んだことがあるわ。
踊るのってすごく楽しいんでしょ?
メリエン
りん
メリエン
ガタ ガタ
ギィィィィ
メリエン
りん
ガチャ
りん
奥の部屋から、誰かが現れたの。
タキシードを着た、白髪頭に皺ひとつない美しい顔の、年齢もわからない男よ。
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
この人は、この洋館の、所有者?
怖かったの。
明らかにその人は殺意を持っていた。
りん
りん
りん
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
その人の笑うような目つき。
勝ち気であっても逆らう術のない少女を嘲るような表情だったの。
りん
りん
りん
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
りん
アタシはりんちゃんがこの人に怯まなかったのがすごいと思ったの。
ヴァロ
ヴァロ
りん
りん
りん
メリエン
ヴァロ
ヴァロは、アタシの経歴に触れなかった。すごく安心したの。
でも彼が何かを悟ったような目つきをした気がしたの。
恐らく、この人への恐怖心のせいだろうけどね。
りん
りん
メリエン
りん
りん
メリエン
この部屋も、不気味なほどに美しかった。
美しさは、時に恐怖になるの。
りん
りん
メリエン
りん
りんちゃんは、あんまりここから逃げるのに賛成じゃ無かったみたいだったの。
りん
メリエン
りん
りん
りん
メリエン
りん
りん
メリエン
メリエン
りん
りんちゃんは優しかった。
アタシはその時、りんちゃんに守られているという安心感があった。
りん
りん
メリエン
りん
ガチャ
ガチャ
りん
りん
メリエン
りん
メリエン
りん
メリエン
メリエン
りん
りん
メリエン
メリエン
りん
りん
メリエン
りん
ギィィィィ
ガチャ
途端扉が開いたわ。そしてヴァロが顔を出したの。
ヴァロ
りん
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
りん
メリエン
なんだ、閉じ込められたわけじゃ無かったのね。
アタシたちの声が偶然聞こえなかったのかしら。
晩餐は豪華だった。
ステーキもあったし、彩り豊かなサラダもあったし、アタシが大好きなサンドイッチもあった。
飲み物としてアタシにはオレンジジュース、りんちゃんにはワインが用意してあったの。
メリエン
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
りん
りん
ヴァロ
りん
りん
メリエン
りん
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
こんないい物を食べれたのだから、きっと明日も力が出るでしょう!
ヴァロさんには感謝しかないわ。
メリエン
りん
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
どういうこと?
だってアタシ、妖精なんだよ?
なのにどうして、ママがあの場所を勧めたの?
ヴァロ
りん
本当なの?
じゃあアタシ……
ねえ、ヴァロさんのこと信じればいいの?
それともママのこと信じればいいの?
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
安心したわ。
そういえばフィオーテってママも言ってた気がするの。
りん
ヴァロ
ヴァロ
りん
確かにそうだ。
アタシが明日までに食われていてもおかしくないもの。
りんちゃんがアタシが精霊だと知ったらどう思うんだろって、怖かったわ。
まあ、そんなわけないんだけどね。
りんちゃんは、精霊の踊り食いに憧れているのかもしれないけど、アタシは食べない。
そんな悪い人じゃないわ。
ヴァロ
りん
ヴァロ
りん
りんちゃんが、左手を出した。
ヴァロ
りんちゃんの両手をヴァロさんはぐっと掴んで、縄をかけたの。
りん
りん
メリエン
突如ヴァロさんがアタシに膝蹴りをしたの。
アタシは膝から崩れ落ちたわ。
メリエン
ヴァロ
メリエン
メリエン
腹を抑えながら問いかけるアタシを無視するヴァロさん。
ヴァロ
メリエン
メリエン
りんちゃんがいなくちゃ、もう無理だよ。
ヴァロ
りん
りん
ヴァロ
そうだ、アタシ今日、魔法薬をぬっていない。
じゃありんちゃんは……
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
手を出さなかったアタシに、無理矢理ヴァロさんは縄をかけたの。
メリエン
ヴァロさんは、りんちゃんの身動きを取れなくしたの。
でもアタシも、柱にくくりつけられたせいで身動きが取れなかった。
そうよ、自分でやらなきゃ!もう一人でも、大丈夫だから!
メリエン
メリエン
ヴァロ
ありえない!一瞬でアタシの炎が消えるなんて。
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
ヴァロさんがりんちゃんの方へ行ったの。
どうしよう、りんちゃんが!
酷い悲鳴が館には響き渡った。そして血で牙を汚した吸血鬼は、アタシを嘲って笑っていた。
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロさんが背後に回った。
そして、嫌な音が聞こえて、酷い痛みが身体中を駆け巡ったわ。
血液の生暖かい感覚が背中に染みた。
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロさんは笑った。
後々聞いた話だが、ママはアタシをリーファーの街に連れて行くつもりだったらしい。
魔物殺しの街に、愛娘をママが連れて行こうとした理由は、自分を助けてもらうため。
愛娘をリーファーに連れて行けば、自分の命は助かると言われた。
一人で行くように納得させろと言われた。
もちろん娘をリーファーに連れて行かせようとしているかの見張りもいた。
もう、どうしようもない状況だった。
でも、ママはアタシを見捨てたわけじゃなかった。
あえて地図を間違ったふうに描いて、アタシを惑わせた。
そして、「シャンデリアの街」という他の街の情報を渡した。
もちろん、アタシがシャンデリアが大好きだということも知った上で。
そして、ママはアタシが通行人にリーファーでなく「シャンデリアの街」の場所を問うことも考えていた。
そうすれば通行人はきっと、「ああ、フィオーテね。」と教えてくれるはずだ。
アタシのママは、人の心が読めるし、未来も見えるからこんな計画を考えついたんだと思う。
でもね、一枚上を行く者がいたの。
それが、男前な巫女、「りんちゃん」だったの。
りんちゃんは、魔法薬を塗り忘れたアタシの姿を見るなりリーファーに連れて行こうとした。
でもね、アタシは大丈夫だった。
ヴァロさんが、りんちゃんを失血死させたから。
ヴァロさんは、同じ魔物として、最初からアタシを守るつもりだった。
未来が見えたから、先に動けたんだ。
でもね、なんで未来があの人に見えたと思う?
それはね…………
あの館で夜を越して、明るくなった頃に出発した。
少し歩くと賑やかな街に着いたの。
ヴァロ
リーファーは、魔物殺しの街とだけでなく、勇者の故郷とも呼ばれているらしい。
勇者を育てるためのいろんな施設があるらしいわ。
ヴァロさんが言うには、リーファーにはまだ、薬屋がないらしいの。
でも、シャンデリアの街フィオーテは薬屋が多くて、薬師じゃ暮らしていけない状況なんだって。
だから、危険を犯すことにはなるけどここで働くことにした。
ちなみにアタシはヴァロさんからさっき羽を切り落とされてしまったので見た目では魔物だとはわからない。
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
アタシは、りんちゃんを傷つけたこの人は許せなかったけど、
言う通りに動けばきっともう誰にも騙されないだろう、そう思ったの。
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
含みのある言い方が、子供ながらに気になったわ。
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
ヴァロ
ヴァロ
ヴァロ
メリエン
メリエン
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