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リーファーの薬草師

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リーファーの薬草師

2 - リーファーの薬草師と自殺志願者の賢者

♥

9

2022年04月08日

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メリエン

フンフンフーン♪

リーファーの街は、勇者の街だった。

メリエン

わぁ、あそこに
可愛い魔女がいる!

ヴァロ

そうか。

ヴァロさんは、こんな賑やかな街にも無反応で、ずっと静かなの。

メリエン

楽しくないの?

ヴァロ

目の前の生き物がすべて
食い物に見える。

ヴァロ

食欲を
押し殺しているんだ。

ヴァロさんは、吸血鬼なの。

だから、人間を見ると血を吸いたくなるの。

ヴァロ

はぁ、もうダメだ。

ヴァロ

あそこの魔法師に
噛みついてやりたい。

はたから見たら、この人ただのヤバい人だ……。

ヴァロ

さあ、あの場所は
楽市だ。

ヴァロ

売り物の薬とやらは
あるのか?

メリエン

ないの。

ヴァロ

はぁ?

ヴァロ

じゃ、じゃあ今日
何を食べるのさ。

ヴァロ

金がなければ
生きていけないだろ。

メリエン

なんでアタシが
ヴァロさんの分まで
稼がなきゃならないの。

ヴァロ

いや、
私は大丈夫だ。

ヴァロ

君は大丈夫か。

メリエン

ちゃんと朝昼晩
食べないとしんどいかな。

ヴァロ

じゃあ決まり!

メリエン

な、なに?

ヴァロ

用心棒でもやろう。

メリエン

え、用心棒?

メリエン

それって危ないんじゃ。

ヴァロ

危ないなら金になるだろ。

案外この人は豪快な人だ。

ヴァロ

それに、お金を
暗いところで受け取って
あとは、軽く噛みついても
怒られはしないさ。

メリエン

噛みついたら
正体バレるよ!

ヴァロ

そっか……

ヴァロ

ならばどうする。

メリエン

じゃあ今から、
薬草を取りに行く!

メリエン

どう?

アタシがそう言うと、ヴァロさんも同行すると言ってくれた。

ヴァロ

迷わないようにな。

メリエン

大丈夫だよ!

ヴァロ

言っておくがリーファーに
「シャンデリア」は
ないから夜はそんなに
明るくない。

メリエン

むぅ。

この人はすぐ、ひとをおちょくるようなことを言う。

ヴァロ

もし夜になったら
一人でここを
抜けてもらわねばならぬ。

メリエン

え、なんで?

ヴァロ

理性を失ったコウモリと
一緒には
帰りたくないだろ。

メリエン

あ、たしかに。

メリエン

じゃあ、日が暮れる前に
さっさと帰ろう!

ヴァロ

そうしろ。

メリエン

ここは?

ヴァロ

魔物の森さ。

ヴァロ

薬になりそうなものが
たくさんあるだろ。

ヴァロ

特にワライタケなんか
おすすめだ。

メリエン

ワライタケ?

聞いたことないの。

ヴァロ

食べると
笑いが止まらなくなって
笑い死ぬんだ。

メリエン

なにそれ怖い。

ヴァロ

笑いながら死ねるなんて
最高じゃないか。

やっぱりこの人は狂っているわ。

ヴァロ

はは、冗談さ。

ヴァロ

さあ、薬草を取って
帰るぞ。

メリエン

うん!

メリエン

これとこれは傷薬になるから
ヴァロさんも採って来て!

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

ワライタケも入れていい?

メリエン

ダメです。

そんなこんなで、まあそこそこの薬草は回収できたの。

でもね、高級な、とびっきりの効能があるものはなかったわ。

だからだろう。この場所には「アルジ」の気配がない。

そう、「アルジ」とはその場所の精霊のことよ。

薬草など、その場所の大切なものを奪うと、遠慮なく襲いかかってくる。

この場所はすでに、ヴァロさん以外の人にもう忘れ去られているのかもしれない。

この場所は、もう薬草も無くなってしまうかもしれない。

メリエン

ねえ、この場所では
薬草が取れなくなるかも
しれないね。

ヴァロ

どういうことだ。

メリエン

だって精霊が
いないもの。

ヴァロ

精霊は君じゃないか。

メリエン

そうだけど、
こういう
神聖な場所に住んで、
その場所を護る精霊も
世の中にはいてね、
でもここには
その気配がないの。

ヴァロ

つまり。

メリエン

きっともう、この場所は
忘れ去られた土地。

ヴァロ

そうなのか……

ヴァロ

私が館に隠居していた
この200年でこんなにも
変わってしまっていたのか。

ヴァロ

ここは、200年前は
賑わっていたし、
明るかった。

ヴァロ

それに精霊もいた。

メリエン

じゃあ……

ヴァロ

ああ。

ヴァロ

この200年で、
この場所は
朽ち果ててしまったんだ。

そんな……

メリエン

まさか、
リーファーで有名な
精霊の踊り食いで……

ヴァロ

ありえるな。

メリエン

じゃあどうすれば……

ヴァロ

知らぬ。

メリエン

え……

メリエン

メリエン

じゃあアタシ、
この森を助ける!

ヴァロ

あぁ?

メリエン

絶対、精霊様を
見つけ出して、助けるの!

ヴァロ

生きてるかも
分からないぞ。

メリエン

生きてるわ!

メリエン

この森が呼吸してるの。
それがアタシには
聞こえる。

それは嘘ではなかった。精霊としての本能だろうか、何かの感覚があった。

メリエン

ここの精霊は誰なのか。
アタシはそれを、
見つけるんだ。

メリエン

よかった!まだお昼だよ!

ヴァロ

腹が減った。

メリエン

そうだね。

ヴァロ

あ、あの人噛みついても
許してくれそうだな。

メリエン

絶対許してくれません!

ヴァロ

はは、だよね。

腹をすかせたままだと少しこの人危ないので、アタシはある場所に向かったの。

メリエン

ついた!

ヴァロ

勇者食堂か!

ヴァロ

ここなら格安で
食べ物が食べられる。

店員

じゃあ、お二人とも
勇者証明書を
お出しください。

メリエン

ありません!

ヴァロ

ないです!

店員

え!?

店員

あ、じゃあ
お引き取り下さい。

ヴァロ

雇い兵になりたいんです!

ヴァロ

ここに困ってる
勇者の方は……

店員

いません!

店員

お引き取り下さい!

ヴァロ

はぁ。

ヴァロ

美味しそうな
「食べ物」が
たくさんあったのにさ。

メリエン

物騒すぎる

これは苦労しそうね……

ヴァロ

ヴァロ

薬作りにとりかかるか。

メリエン

ヴァロさんは
薬作り、詳しい?

ヴァロ

まあ、多少は心得ている。

ヴァロ

睡眠薬なんかは得意だ。

ヴァロさんなんでも出来るんだ!

ヴァロ

精霊の薬作りには、
やはり魔法を使うのか?

メリエン

うん!

メリエン

出来上がった薬に
回復魔法をかけるの!

メリエン

そしたら
効果が強くなるでしょ

ヴァロ

なるほど。

ヴァロ

ならば、メリエン。

メリエン

なぁに?

ヴァロ

私がそこの奥の部屋を
借りておいた。

メリエン

ありがとう!

ヴァロ

だから、
一人で生活するんだ。

メリエン

へ?

ヴァロ

薬作りも一人でやれ。

ヴァロ

お前は一人で生きろ。

一人で、生きろ?

メリエン

なんで、じゃあアタシ、
一人?

ヴァロ

一人で生きろ。

ヴァロ

私のようなゴミクズに
頼るな。

メリエン

ヴァロさんは
ゴミクズじゃないよ。

メリエン

アタシのこと
守ってくれた……

ヴァロ

私を信じるな。
常に目の前にいる
人間を疑え。

メリエン

アタシ……

ヴァロ

一つ問おう。

ヴァロ

お前がどうやって
私の役に立てる?

メリエン

…………

ヴァロ

ほら、無理だろ。

ヴァロ

私を殺してくれるなら、
協力してやるけど。

メリエン

ヴァロさん……

メリエン

アタシ、ヴァロさんが
どう思ってるかは
知らないけど、

メリエン

アタシはヴァロさんと一緒に
立派な薬師になりたいの。

メリエン

そして、ママみたいに
なるの。

ヴァロ

…………

ヴァロ

お前は私のような
屑の手を
取ってくれるのか?

メリエン

うん。

メリエン

ヴァロさんは屑、
そういうことにしておくの

メリエン

それでもいいから、
アタシに協力して。

ヴァロ

…………うっ

ヴァロ

ヴァロ

ならば役に立つ。

ヴァロ

この身朽ち果てても
お前に尽くす。

メリエン

大袈裟だよ。

ヴァロ

ただし、私の提案を
飲んでくれ。

ヴァロ

私の館はここから
少ししたところに
あるだろ。

メリエン

うん。

ヴァロ

だから、そこで
寝泊まりして、薬作って、
ここで売るんだ。

メリエン

いいね!

ヴァロ

そうすれば家賃も
いらないだろ。

メリエン

うん!

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