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暗闇に差す光

第24話 - 【24話】お父さん

2022年12月26日

#難病

#家族

#友情

#恋愛

#切ない

ri 🌸 ri

朝倉

･･･もしもし

光

あの･･･朝倉くん

光

こんなの･･･
すごく勝手だけど

朝倉

うん

光

取り下げちゃ、ダメかな

光

私のこと忘れてって
言ったのも･･･

光

さよならって
言ったのも･･･

光

取り下げてもいいかな

朝倉

･･･いいよ

光

･･･私ね

光

ずっと怖かった

光

いつか絶対、
必ずこの幸せが
終わっちゃうのが
分かってたから･･･

光

みんなのためって
言いながら
逃げることしか
できなくて

光

私が、
弱かったんだよ･･･

光

私だけが･･･

朝倉

･･･うん、分かってるから

光

あとね･･･忘れて
ほしかったんじゃない

光

忘れさせてほしかったの

光

ごめんね･･･

朝倉

もう、謝らないで･･･

朝倉

泣かないでいいよ･･･

光

朝倉くん･･･大好きだよ

朝倉

･･･うん、俺も

朝倉

もう、大丈夫だから･･･

朝倉

だから光･･･

光

･･･

朝倉

──幸せでいよう。

朝倉

誰よりも。

数日後

光

先生･･･ありがとうね

黒沢

なにがだ

光

朝倉くんに･･･
伝えてくれて

黒沢

･･･

光

私には･･･
きっと無理だった

光

あのまま何も言わずに
私が死んでいったら･･･

光

一番大切な人を･･･
最後まで裏切って
終わるところだった･･･

黒沢

･･･俺は何もしてない

黒沢

彼が、どんなことでも
受け入れる覚悟です
って、そう言ったから

黒沢

伝えてあげただけだ

光

･･･あの日、久しぶりに
朝倉くんと会って･･･

光

すごく･･･嬉しかった

光

また、一緒にいよう
って言ってもらえて･･･

光

私は･･･こんなにも
愛されてるんだなって

光

あんなに素敵な人に･･･
幸せを願ってもらえて
るんだなって･･･

光

こんな人生でも･･･
生まれてきてよかった
って思っちゃったんだ･･･

黒沢

･･･そうか

光

だからね、先生

光

私、決めたんだ･･･

光

あのね･･･私･･･

光

──延命はしない。

黒沢

･･･

光

これ以上の治療は望まない

光

私の力だけで生きていく

黒沢

･･･

光

大丈夫

光

私は、
いっぱい力をもらった

光

杏香にも、美桜にも、

光

朝倉くんや、お母さんにも

光

･･･先生にも。

黒沢

･･･

光

だからもう、これ以上
生きられなくても
後悔はない･･･

黒沢

･･･延命をしないと
いうことは

黒沢

残りの時間が少なくなる
ということだぞ･･･

黒沢

君の生きる時間を･･･

黒沢

そんなこと･･･本当に･･･

黒沢

それでいいのか･･･

光

･･･ふふ、お医者さんが
患者さんの意見に
反対なんてしていいの？

黒沢

･･･すまない

黒沢

この頃、
どうも調子が変なんだ

黒沢

本来医者は、
常に平等に患者の意志を
尊重しながら治療に専念
しなきゃならない

黒沢

だけど･･･

黒沢

君がこの病院に
来てからというもの･･･

黒沢

俺は･･･

黒沢

君にばかり感情移入して

黒沢

君を･･･死なせたくない
なんて･･･思ってしまう

黒沢

どうしてもそんな迷いが
心から消せないんだ･･･

黒沢

俺はもう･･･医者じゃない

光

･･･ごめんなさい･･･

光

私が･･･怖いとか
言っちゃったからだよね

光

死にたくないって･･･
そんな無理な話･･･

光

困るよね･･･

黒沢

違う･･･

黒沢

君が･･･家族だからさ

黒沢

俺の娘だから･･･

光

･･･！

黒沢

すまない･･･

黒沢

こんな情けない父親で･･･

黒沢

君に何一つ･･･
してやれなくて･･･

光

･･･そうじゃないよ

光

私がこんな風にけじめを
つけられたのは･･･

光

先生のおかげだよ･･･

光

今でも不安なことに
変わりはないのに･･･

光

それでもいいって･･･
思えるのは･･･

光

先生がいるからだよ･･･

光

先生は、ちゃんと患者に
寄り添える医者だし･･･

光

誰よりも･･･私の力に
なってくれたよ･･･

黒沢

･･･

光

だからね･･･
残りの人生は･･･

光

私の大切な人たちと
過ごすために使いたい

光

呼吸器とかチューブとか
そんなものに縛られた
最期じゃなくて･･･

光

声も、匂いも、空気も･･･

光

全部の幸せを、
感じるために使いたい

光

だって私の命は･･･
私が幸せになるために
あるものだから･･･

黒沢

･･･

光

私のわがまま･･･
きいてくれますか･･･？

黒沢

･･･それが･･･

黒沢

君の、望みなのか？

黒沢

それが･･･

黒沢

俺に、できることなのか

光

･･･うん

黒沢

･･･わかった

光

ありがとう、先生

光

･･･いや･･･

光

──お父さん

黒沢

･･･！

光の母

ぅぅ･･･っ

部屋の外でこの会話をこっそり聞いて

母が人知れず泣いていたことは

知る由もなかった･･･

光

ねえ、お母さん

光

お願いがあるの

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