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梅雨の時期に思い出すのは20××年……都会の中の田舎みたいな場所でぼっちソロ充大学生をやっていた頃の思い出である。
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スカイ
黒髪美少女大学生に変換されたスカイはそんな事を思いながら1人歩いて帰路に就いていた。
スカイ
そう思い空を見上げれば……分厚い雲が覆い尽している。しかし今すぐ降るような感じでは無かった為、少し寄り道をする事にした。
その日は給料日。当時独り暮らしのスカイが今月の生活をどうするか考える指標にしたいのもあって、ATMまで幾ら入ったか見に行きたかったのである。
スカイ
後日行う買い物の為に多少下ろし、そのまま帰ろうとした時である。LI●Eの通知音が鳴ったのは。 ぼっちにメッセージを送って来るのは大抵公式アカウント。何かと思って見れば……
スカイ
それはその日までのLI●Eクーポンを再び通知する内容だった。 思わず空を見上げると曇天ではあるものの、雨はまだ降っていない。
スカイ
結局スカイはそう思い、予定してなかった買い物に出掛ける事にした。 この買い物であんな出会いがあるなんて……この時は思いもしなかった。
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都会の中の田舎みたいな場所の自宅周辺にはコンビニ位しかない。ちょっとした買い物に出るのもバスで行く必要があった。 幸いなのはバスの本数が多い事。雨が降る前に乗り込めた。
しかし買い物先に到着した頃、遂に雨が降り出した。
スカイ
そんな事を思いながら傘を差して買い物を続けるが、バス代を考えると再び来るのは勿体無い為……予定していたよりも買い込み過ぎてしまう。
遂に荷物で手が塞がり、傘を差す事が困難になった。
スカイ
雨は嫌いでは無いし寧ろ好きな方だ。 しかし荷物が多い時である。当然思う事は1つだ。
スカイ
しかしそんな願いも空しく……どんどん雨は強くなる。 正直辛くはあるが……
スカイ
そう必死に自分に言い聞かせ、何とか乗り切ろうと気合を入れた。 しかし雨が降ると道が混み、バスは遅れるものである。思った以上に待たされていた。
気付いたらびしょ濡れになっている。かなり寒い。
スカイ
体温が奪われれば気力も落ちる……疲れ切りながらそんな事を思った。ヘッドホンから流れる曲で何とか目の前の現実から気を逸らしていた。
しかしバスが来なければ帰宅出来ない現実が変わる訳もない。スマホの時計と睨めっこをしながらその時を必死で待った。
それから数分が経過した時、1人の同い年か少し上位に見える男性が傘を差しながら歩いて来たのが見えた。 彼はスカイの近くで足を止める。どうやら同じバス停からバスに乗る予定のようだ。
同じバス停で2人きりバスを待つ。 それでも彼とスカイは赤の他人なのだ、特にコミュ障スカイが話し掛けられる訳もない。
結局会話する事も無く時間は過ぎる……が、やけに視線を感じた。
男性
スカイ
とても居心地が悪い。しかし見られる理由はわかっている。
スカイ
そんな事を思うが別に声を掛けようとしている訳でも無いだろう。気にしない振りでスカイはスマホの時計と睨めっこをし続け、バスが来る筈の方向を時折眺めて待った。
しかし結局彼の視線は気になってしまう。そこで曲も聴いているのだから、そちらに集中しようと思った。
そうして再び時間は経過する。 そんな時だった。
男性
優しい声で男性が訊いて来た。
スカイ
スカイは美少女に変換されていてもただのコミュ障である。心臓が飛び出るかと思った。
驚きながら何とか相手に視線を向けたが、顔から火が出そうだ。
スカイ
大事な事だからもう一度言おう。スカイはコミュ障である。 こんな場面では考えれば考える程頭の中は真っ白になり、ドツボにハマるだけだ。何にも浮かんではくれない。
スカイ
そんな事を思ったが、返答を待っている男性を無視する訳にもいかない。 結局諦めて事実をそのまま話す事にした。
スカイ
スカイ
何を言われるのかと考えると恐ろしすぎて……もう死にたいどころじゃない。誰か殺してくれと思わずにはいられない。
しかし待っても待っても男性は何も言わない。代わりに自分の差している傘にそっと入れてくれた。
スカイ
スカイが驚いたのがわかったか、それとも自分も恥ずかしくてその気持ちを誤魔化したかったのか……その後男性は静かに続けた。
男性
彼の発言のお陰で生きてお礼を言わなければとはなったが、恥ずかしいのは変わらない。
スカイ
結局スカイは慌てて国会議員の演説さながら連続でお礼を言う気持ち悪いコミュ障を晒しつつ男性を見て、やっぱり死にたくなりそうだったからすぐに全力で視線を逸らした。 男性は無言で頷く事でお礼に応えてくれていた。
それ以降は互いに無言で明後日の方向を向きながらバスを待つ。お陰で逆に状況を意識しなくても良くなって、気が楽だった。 後でヘッドホンを外さなかった事は失礼だったと猛省したが、人生でも2度とあるかわからないこの状況でそこまで気が向く筈も無い。
更に数分が経過した後にバスはやっと到着した。
スカイ
その男性に次いでバスに乗る時にスカイは再びお礼を言い、それに彼は再び無言で応えた。
スカイ
バスに乗れたことに安心したせいか、遅れて温かい気持ちが込み上げてくる。
そうして無事家の風呂に入って完全に生き返ったスカイは……
スカイ
そう思いながらパソコンの電源を入れたのだった。
ブログ記事から物語に修正した今もあの時感じた感謝の気持ちは薄れない。
日本も捨てたもんじゃないと思った優しい雨の日の出来事だった。
THE END