短編

ぬるい風が、顔を撫でる

空を見上げて、目を細めた

体育座りして、膝を抱える

顔を隠して、ただ息をした

意図的な呼吸は、案外苦しい

上手く、空気が吸えてない感覚がする

それでも、息をしないと死ぬ

だから、息をする

いつの間にか、下を見ていた

…空を見上げていたはずなのに

いつも、気がつけば下を見ていた

チャイムの音が響き

足音が聞こえる

……さて、切り替えないと

そう思って、顔を上げた

やっぱり空は、少し眩しい

そう思いながら

目を、開けた

気がつかないほど、普通の姿

だけど、どう見ても

ハイライトの無い

真っ黒な瞳

鏡ですら、きっと怯える

そんな、生きる気力の無い目に

懐中電灯の、光をいれた