語り手
風のように馬をかり、駆ゆくものあり。
語り手
腕にわらべおびゆるを、しっかりばかり、抱けり。
父
ぼうや、何故顔かくすか。
子
お父さん、そこに見えないの?
子
魔王がいる。怖いよ。
父
ぼうや、それはさぎりじゃ。
魔王
可愛いぼうや、おいでよ。面白い遊びをしよう。河岸に花咲き、綺麗なおべべがたーんとある。
子
お父さん、お父さん!聞こえないの?魔王が何か言うよ。
父
なあに、あれは、枯れ葉のざわめきじゃ。
魔王
ぼうや、一緒においでよ。
魔王
用意はとうにできている。
魔王
娘と踊って遊びよ。
魔王
歌っておねんねもさしたげる。
魔王
良いところじゃよ、
魔王
さあおいで!
子
お父さん、お父さん!それそこに、魔王の娘が…。
父
ぼうや、ぼうや。ああ、それは枯れた柳の幹じゃ。
魔王
かわいや、いい子じゃのう、ぼうや。
魔王
じたばたしても、
つれてくぞ!
子
お父さん、お父さん!魔王が今、ぼうやをつかんでつれてゆく!
語り手
父も心、おののきつその子を抱きしめ。
語り手
からくも宿に着きしが、
語り手
子は既に息絶えぬ!
語り手
子は…
亡くなってしまった






