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蝶屋敷の朝は早い
すでに訓練場では、炭治郎たちの声が響き、
芙梛は、いつも通り薬室で瓶の整理をしていた
芙 梛
炭治郎が私の血を見たときの、あの一瞬の戸惑い
優しい眼差しは変わらなかったけど、
どこかで距離が出来たような、そんな気がした
芙 梛
ー ガラッ ー
声の主に振り返ると、そこにはカナヲがいた
いつもの無表情
でも、何か言いたげな瞳
芙 梛
栗 花 落
栗 花 落
一瞬、心臓が止まった
栗 花 落
栗 花 落
カナヲはじっと私を見たまま、続ける
栗 花 落
その瞬間
全身に冷たい水をかけられたような感覚が走る
心臓が音をたてて跳ねた
芙 梛
芙 梛
栗 花 落
栗 花 落
何も言えなかった
否定も、肯定も、どちらも今は出来ない
カナヲは黙ったまま、数秒だけ芙梛を見つめて
すっと踵を返した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
午後
訓練の合間の静かさ
芙梛は一人で縁側に座っていた
そこへ、空気のように静かに、彼が現れた
芙 梛
時 透
芙 梛
時 透
芙 梛
時 透
その言葉に、少しだけ胸が痛んだ
無一郎の瞳は、変わらず真っ直ぐ
けれどその奥に、何かを探すような迷いがある
時 透
芙 梛
芙 梛
時 透
少しだけ視線を逸らした無一郎が
ほんの少し人間らしく見えた
それが、何故か嬉しくて
芙 梛
けれどその想いは、すぐに打ち消した
芙 梛
芙 梛
蓮の花が静かに風に揺れる
それはまるで、今にも散りそうな儚い命のように
静かに
美しく