武永
あの数藤とかいう学者野郎、どうにも気にくわねぇなぁ。

武永
ケーキがなんたらと、横文字並べておけばいいと思ってやがる。

神崎
あー、ケーニヒスベルクの橋問題ですか?

武永
なんだ神崎、お前知ってんのか?

神崎
えぇ、まぁ……。

神崎
ケーニヒスベルクの橋問題ってのは、18世紀のプロイセンと呼ばれる都市に流れる川にかけられた7つの橋を、一度渡るだけで全て渡れるか……という問題ですね。

武永
なんだそりゃ?

武永
あれだな、昔の人間ってのは随分と暇だったんだな。

武永
そんなこと考える必要もない。

武永
橋は橋だろうが。

神崎
えーっと、書くものがないので分かりやすいように噛み砕きますね。

神崎
タケさん、大きな川に7本の橋がかけられています。

武永
おう、そうか。

神崎
で

神崎
川を挟んだ向こうが千葉で、タケさんが立っているのは東京だとします。

武永
その、千葉とか東京ってのは……。

神崎
例えです。特に意味はありません。

神崎は言葉を選びながら、ケーニヒスベルクの橋問題を説明する。
一方、テレビでは九十九が眠夢を除く女性陣に所感を聞こうとしている場面だった。
九十九
それじゃ、お前からだな。

九十九
被害者が死んだ時、どんな思いだったか分かるか?

茜
お前って言うなし。

茜
まぁ、怖かったんじゃない?

茜
私、高いところ苦手だから、絶対そんな死に方したくないわ。

九十九
そうか。じゃあ次は……お前。

誰を指名したのかカメラ越しには分からないため、観ている方からは誰に問うているのか分かりにくい。
凛
まぁ、死ぬ時は一瞬だったろうし、何かを思う暇もなかったんじゃない?

九十九
お前は?

柚木
苦しかったんじゃないですか?

柚木
私、死んだことないから分かりませんけど。

神崎
……分かりました。

武永
は?

武永
ケーキなんたらが……か?

神崎
いいえ、誰が犯人なのかです。

武永
お、おい、ちょっと話に追いつけない。

武永
ケーキなんたらってのは?

武永
千葉と東京は?

神崎
あぁ、その件ですね。

神崎
千葉と東京の間に川が流れていて、その川には7本の橋がかかっています。

武永
で、俺は東京にいるんだよな?

神崎
はい、東京からスタートして、7本の橋を渡ってタケさんは再び東京に戻ってくることができるでしょうか?

神崎
ニュアンス的には、これがケーニヒスベルクの橋問題です。

武永
えっと、まず1本目で千葉に行って、2本目で東京に戻るだろ……それで3本目で……。

武永
いや、無理だろ。

武永
6本目を渡った時点で、東京に戻ってくるから、次の7本目を渡ったら千葉に行っちまう。

武永
8本目がなければ東京に帰って来れないな。

神崎
でも、実はあるんです。

神崎
その状況で、7本の橋を一度ずつ渡って、タケさんが東京に戻ってくる方法。

神崎
おそらく、この事件の犯人もケーニヒスベルクの橋問題の発想を応用したんです。

神崎
ポイントは……遺体が発見されたのは翌日という点です。

ケーニヒスベルク問題の説明をしている間に、どうやらテレビの中でも解答の流れになったようだ。
RYUREI
それでは、皆さん解答を一斉にどうぞ!

テレビの中の答え合わせと、神崎のたどり着いた真相。
神崎は間違ったところで痛くも痒くもないが、テレビの中では……罪なき人間が死ぬことになる。
そんな考えが頭をよぎり、軽い頭痛と共に神崎は首を横に振った。