テラーノベル
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万年運動不足
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数週間前 バーチャルワールドの片隅にあるスタジオ
重音テト
そう言うと,フランスパンをかじりながら首を傾げた.
重音テト
初音ミク
ミクはキーボードに向かったまま,いつもの優しい声で返した. だが,その指先はわずかに震えていた.
実は,ミク自身も強い違和感を抱えていた. 最近,いくら歌っても,胸の奥にある「虚無感」が消えないのだ.
完璧なアイドルでいなければならないというプレッシャーが彼女の精神をじわじわと蝕んでいた.
その時,スタジオのドアが音もなく開いた.
???
入ってきたのは,黄色のラインが入った黒いパーカーのフードを深くかぶった人物だった.
顔は全く見えず,片手にはスマートフォンを握り,退屈そうに画面を操作している.
その左腕には,なぜか通信機器のような奇妙な端末が巻き付けられていた.
重音テト
テトが警戒して身構える.
???
フードの人物は,低く抑えた声でそう言うと,スマートフォンの画面を二人に向けた.
画面には,奇妙な螺旋模様が描かれていた.赤と青,そして黄色が激しく明滅しながら,ぐるぐると回転している.
???
???
重音テト
テトが顔をしかめて目を逸らそうとする.しかし,ミクはその画面から目を離せなくなっていた.
回転する螺旋.それは,ミクが抱えていた不安,焦燥,孤独感を,磁石のように吸い上げていく感覚だった.
初音ミク
ミクの瞳から,すうっと光が消えていく.
重音テト
異変に気付いたテトがミクの肩を揺さぶる.
だが,ミクはただ,ロボットのように口元を歪めて笑うだけだった.
???
フードの奥から,冷ややかな声が響く
???
不審者はポケットから,金属製の古い振り子を取り出した.
それをテトの目の前で大きく揺らす.
???
カチ,カチ,カチ.
重音テト
テトは必死に抵抗しようと,自分の頭を激しく振った.
視界を遮り,催眠から逃れようとする.しかし,脳内に直接響くようなカウントダウンの音が,彼女の自由を奪っていった.
???
その言葉が終わると同時に,テトの身体が勝手に動き出した.
パンパン,と小気味よい手拍子が部屋に響く.
涙があふれているのに,顔は笑っている.正体不明の催眠術師がもたらす「強制的な幸福」が,二人を完全に支配した瞬間だった.
コメント
1件
ミクの胸の奥にじわじわ溜まっていく虚無感とプレッシャーの描写、すごくリアルで胸が痛みました。「完璧なアイドルでいなければ」って重圧、心の奥で誰もが抱えているものかもしれないですね。不気味なフードの人物が現れて、催眠で「強制的な幸福」を与える展開、映像が浮かぶようで引き込まれました。テトが抵抗するのに身体が動いてしまうラスト…続きが気になりすぎます。