テラーノベル
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一限目の現代文。 先生が朗読する教科書の声をBGMにしながら、私の心臓はさっきからうるさいくらいに脈打っていた。 すぐ右隣の席には、頬杖をついて気怠げに黒板を眺めている榛野くんがいる。 今朝、壱也から「昨日、吏玖と帰った?」と聞かれたときの動揺が、まだ頭から離れてくれない。 私を助けるために自分は右肩をびしょ濡れにしながら送ってくれた。 その事実が、胸の奥をじんわりと熱く、甘く締め付ける。 ノートを取るフリをしながら、チラリと榛野くんの方を盗み見た。 すると、視線に気づいたのか、榛野くんがふっと首をこちらへ傾けた。 長い前髪の隙間から、あの掴めないクールな瞳が私を捉える。 榛野くんは少しだけ口元を緩めると、シャープペンシルを手に取り、自分のノートの余白にサラサラと文字を書き込んだ。
榛野吏玖
スッと差し出されたノートを見て、私は息を呑んだ。 見てないようで、朝のやり取りをちゃんと見ていたんだ。 私は自分のノートを少し榛野くんの机に近づけ、小さく文字を返す。
山中絃花
書き終えてノートを戻すと、榛野くんはそれを一読し、ふっと声を殺して笑った。 それから、少し考えるようにトントンとペン先をノートに跳ねさせ、新しい文字を紡ぐ。
榛野吏玖
山中絃花
そこまで書いて、私は少し躊躇した。 でも、どうしても気になって、その下に小さな文字を付け足す。
山中絃花
ノートを滑らせると、榛野くんは私の書いた質問をじっと見つめた。 少しだけ、彼のペンを持つ手に力がこもる。 やがて、榛野くんはノートに文字を書くのをやめ、机の上に両肘をついて、お互いの顔が10センチも離れていないくらいまで、私の方にそっと顔を近づけてきた。 周りのクラスメイトには、ただお互いのノートを見せ合って勉強しているようにしか見えない絶妙な角度。 だけど、私にしか届かない低い、掠れたような優しい声が、耳元に直接滑り込んでくる。
榛野吏玖
山中絃花
榛野吏玖
悪戯っぽく、でもどこか愛おしそうに目を細めて囁く榛野くん。 榛野くんの吐息が私の頬に触れそうなほど近くて、頭の中が真っ白になる。
榛野吏玖
山中絃花
心臓が、今日一番の大きな音を立てて跳ね上がった。 榛野くんはそれだけ言うと、何事もなかったかのようにパッと身体を離し、真面目な顔で黒板の文字をノートに書き写し始めた。 私の顔は、きっとトマトみたいに真っ赤になっている。 隣から伝わってくる榛野くんの体温と、冗談なのか本気なのか分からない、でも確実に私の心を揺さぶる優しい言葉。 壱也の後ろを歩いていた時には知らなかった、甘くて、少しだけ息が苦しくなるような新しい恋の予感に、私はただノートの余白を見つめて、ペンを握りしめることしかできなかった。
コメント
1件
この回、めちゃくちゃ良かった!教室のノートのやり取りから耳元の囁きまでの流れ、距離が一気に縮まる感じがたまらんかったわ。特に「次は手を繋いで帰ってみる?」って台詞で心臓止まるかと思った。榛野くんのクールなのに甘いギャップが刺さるし、絃花のトマトみたいに赤くなる気持ちが痛いほど伝わってくる。続きが気になりすぎる〜!