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青年の後ろを歩きながら、ヒロは周りを見渡した。いわゆる“遊び人”と呼ばれるような人たちが、そこかしこにいた。 ふと、座り込む女の子に目を向ける。そこにピアスだらけの男が近づいて、声をかけた。 ヒロは慌てて視線を逸らした。見てはいけないものを見たような気分だった。
hr
小さく声をかける。聞き取れないかもしれないと思いながら、だけど青年は返答した。
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hr
否定はできない。雨風しのげる場所があるのなら、ヒロは今すぐにでもそこにしがみつきたい気分だった。
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突然、青年が後ろを振り向く。
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hr
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言ってから、軽々しく名前を教えない方が良かったのではと思い直す。
hr
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hr
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いきなり呼び捨てだ。でも、嫌な感じはしなかった。
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hr
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煩わしいものを追い払うような仕草で、うりが顔の前で手を振る。 また言葉に詰まった。ヒロは昔から、いきなり距離を詰められるのが苦手だ。
hr
小さく言うと、彼がまた嬉しそうに笑った。
ur
前を向き、再び歩き始める。
しばらく歩くと、奥まった場所にある半地下の店の階段前で、うりが止まった。他の店よりは比較的マシだが、古ぼけた極彩色の看板は、夜の店だと充分に分かる程には、かなり派手だ。 階段を降りて、扉の前で彼がちらっと振り返る。
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hr
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一瞬考えたが、ヒロは正直に頷いた。
hr
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思いの外、彼はあっさりと頷いた。軽く笑い、大袈裟な手つきで指を横に広げてみせる。
ur
hr
思わず声が漏れる。
hr
ur
言い切られたことが、逆にヒロを不安にさせた。
hr
さっきの金髪の男たちの手や、俯いた女の子のやつれた顔を思い出す。 ここで一人になる方が、もっと怖い。 ヒロは自分を落ち着かせるように、小さく息を吐いた。
hr
うりは満足そうに笑って、錆び付いたドアノブを回した。
店の中は、想像していたよりも落ち着いていた。 明るすぎない照明と、静かな音楽。木製のテーブルとカウンター席に、柔らかい光が反射する。
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カウンターの向こう側に、男が立っていた。 鮮やか過ぎない赤茶色の髪は、無造作のようできちんと整えられている。うりのような「作り物みたいな美形」ではなかったが、整った顔をしていた。 ネームプレートには「夏目」とある。 彼は、うりとヒロを交互に見つめ、呆れたように眉を顰めた。
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ur
夏目の問い詰めるような口調にも、うりは平然としていた。 やっぱりバレたじゃないか____と思いながら、だけどヒロは申し訳ない気持ちになる。
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jp
彼はカウンターから身を乗り出し、ヒロに視線を移した。
jp
思わず背筋が伸びた。バレていることは察していたが、言い切られると緊張する。
hr
条件反射みたいに謝ってしまう。 夏目は一瞬きょとんとして、それから表情を緩めた。
jp
ur
jp
夏目がぴしゃりと返す。 だけどうりは楽しそうだ。
jp
ur
子供が駄々を捏ねるような甘い口調だ。拗ねるように口を尖らせる仕草は違和感がなくて、とても可愛い。 まさかその顔のせいではないだろうが、夏目は口を噤み、少しだけ黙る。 完全には否定できない、という顔だった。
jp
ぼやくように言ってから、ヒロに視線を戻す。
jp
てきぱきとしているが、柔らかい声だった。
hr
jp
夏目は頷いた。 うりと違って、彼はすぐには呼び捨てをしなかった。だけど、全くの初対面にしては距離が近い呼び方だ。
jp
じゃぱぱが目を細めた。 笑うと雰囲気が変わるな、と思う。思っていたより、ずっと普通だ。 うりからは感じない親近感を覚えて、ヒロは少し安心した。小さく頭を下げる。
jp
じゃぱぱがうりに向き直った。またも声が厳しくなる。
jp
ur
うりがニッと笑う。ヒロにはありがたい言葉だったが、もちろん返答には全然なっていない。
jp
じゃぱぱが大きな深いため息をついた。 でも、追い出そうとする様子ではない。
jp
じゃぱぱがカウンターの端を軽く叩く。 ヒロは一瞬躊躇してから、近づいた。
jp
hr
答えるよりも前に、彼はグラスの中に氷を入れていた。何となくだが、酒用のグラスではなさそうだ、と思う。 目の前でそれが涼し気な音を立てて置かれてから、ヒロは自分の喉がからからに渇いていることを思い出した。
jp
こんなことが日常茶飯事なわけではないだろうが、じゃぱぱの動きは慣れたようにスムーズだった。 何となく受け入れてる。そんな感じがした。 ヒロはそれにありがたみを感じながら、こくんと頷いた。自分が犯してしまった罪も、家族のことも、今の状況で話せるようには到底思えなかった。 うりが、ヒロの隣に腰掛ける。
ur
得意気な表情だ。恩人ながらも、呆れて笑ってしまう。
hr
まだ、不安はある。 でも、さっきまでよりずっと良かった。 ここでなら、安心して休むことができる気がした。