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紫陽花が咲く頃に

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紫陽花が咲く頃に

1 - 紫陽花が咲く頃に Ep.1(君との梅雨)

2021年07月24日

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今日もまた、雨が降る

変わらない日々

小鳥の囀りが聞こえ

その囀りは

嫌な事を忘れさせてくれる様な気がした。

僕は...

梅雨が大好きだ

でも、僕の周りにこの想いを共感してくれる人は、誰一人居なかった。

基本的に、春や冬などが多かった。

やはり、僕は一匹狼の方が向いているのかも知れない。

そんな事を思っていると

いつも帰りに通るトンネルの 出口が見えてきた。

トンネルを抜けると

勢い良く雨粒が、僕に向かって降ってくる。

新島 蒼

また傘刺さなきゃ...

僕は黒色の折り畳み傘を手に取り、 慣れた手つきで傘を刺した。

ポツポツと、僕の折り畳み傘に当たる

僕は気分が良くなり、 鼻歌を歌い始めた。

新島 蒼

♪〜

雨音にはヒーリング効果があると 言われている。

その効果の影響なのだろうか...

新島 蒼

ん?

僕は足を止めた。

なぜかと言うと、僕が住んでいる マンションの入り口付近に、 傘も刺さずに女子が体育座りで 座っているからだ。

こんな所で何をしているんだ... そう思った。

でも、僕には関係のない事

それに僕は、人が苦手で、陰キャだ。

だから諦めよう...

そう思った...

けど、今日は調子が良いから 大丈夫かも知れないと、 謎に自信が湧いてきた。

それに、よく見ると 女子は少し震えている。

人は苦手だけど、流石にこれは 放って置けない。

お母さんも昔、「困っている人がいたら、助けてあげなさい」って 確か...言ってたっけ?

だから、話しかける事にした。

コツコツと女子に段々近づいていく...

新島 蒼

あ..あの...

座り込んでいる女子

.......

新島 蒼

風邪..引きますよ?

彼女はゆっくりと顔を上げて、 僕を見つめた。

その時、彼女の顔を見た瞬間 とても綺麗で、心を奪われそうに なったのだ。

座り込んでいる女子

.......

新島 蒼

え...えっと.....

座り込んでいる女子

.......

座り込んでいる女子

......?

新島 蒼

(どうしよう...僕...焦ってる)

僕があたふたしていると、 彼女がようやくポツリと何かを 言ったのだ。

座り込んでいる女子

こ...ち.......

彼女が放った言葉は雨音で全く 聞こえなかった。

新島 蒼

え....?何て?

座り込んでいる女子

こんにちは...

「こんにちは」と放った彼女の声は とても綺麗な音色をしていた。

とても透き通った声だった。

僕は相変わらず焦りながら、 彼女に返事をした。

新島 蒼

こ...こんにち..は....

新島 蒼

何...してるんですか?

座り込んでいる女子

.......

座り込んでいる女子

座ってるの....

新島 蒼

なるほど...

彼女は相変わらず美しい真顔で、 僕を見つめてくる。

僕は単純に心の中で、 「すっげー冷静だなぁ」と思った。

新島 蒼

あの..服濡れてますけど...
大丈夫...ですか?

座り込んでいる女子

うん....

座り込んでいる女子

別にいいの...

新島 蒼

あの...やっぱ風邪引くかも知れないから、良ければ...お風呂...貸しますよ?

正直、いつもの僕だったらこんな事言わないと思う。 てか、この発言大丈夫か?と 今更思った。

座り込んでいる女子

.......

新島 蒼

あっ...強制は...しないよ...

座り込んでいる女子

.......

彼女は一旦僕の目を逸らし、 もう一度綺麗な目で僕を見つめ、 言った。

座り込んでいる女子

別に...大丈夫...

新島 蒼

そ...そうですか...

新島 蒼

分かりました...

そう言った後、ふと1つだけ気づいた事がある...

何やら周りから声がするのだ。

(何、あの子達...)

(2人とも学生じゃね?)

(あんなずぶ濡れな子にナンパw?)

僕が苦手な、人々達の戯言が 聞こえてくる。

新島 蒼

あっ...どうしよう...

僕は今、究極の2択とかと言う奴に 迫られているのか?

彼女を無理矢理でも連れて助けるか...

彼女を見捨てて、自分の安全を優先 するか...

そう迷っていたら、さっきから 静かだった、彼女が僕の手を取って、 マンションの中へと連れて行ったのだ

新島 蒼

えっ!ちょ...!

座り込んでいる女子

いいから...来て...

紫陽花が咲く頃に

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