アヲが後ろにいると気づいたのは、
読んでいた本に彼が影を作った時だった。
アヲ
…こんな本、面白いのか?
ヰロハ
……面白い、のかは分からない
アヲ
じゃあ面白くないのか?
ヰロハ
面白くはない。……でも
ヰロハ
興味深い、が一番しっくりくるな
アヲ
まるで学者じみてる発言だな……
ヰロハ
隣いいよ。座る?
本を見る為に伏せられたまつ毛が煌めいた気がした。
彼の粗雑な印象とは正反対の感情を覚える。
ヰロハ
(…綺麗)
アヲ
……僕も昔は、
アヲ
本読むの好きだったんだけどなあ
アヲ
今は真っ平御免だ。
ヰロハ
…読む?
アヲ
この話の流れでその提案するか?
まあ少しなら、と
俺の肩にもたれ掛かるアヲ。
…体温、というものが
これ程愛おしく、
これ程嬉しくなるのはおかしいのだろうか。
アヲ
……顔が赤い
アヲ
熱?
ヰロハ
…アヲ
アヲ
ん?
この言葉の重みを知らずに、
俺は軽々しくこの言葉を口に出した。
ヰロハ
好き
ヰロハ
…かも、しれない
アヲ
……はあ?
ヰロハ
恋愛的に
アヲ
…展開早くないか?
アヲ
長年のブランク?
アヲ
…そうかそうか、今まで滅多に喋らなかったもんな…
アヲ
他の人と。
ヰロハ
違う、そうじゃない
ヰロハ
……俺が悪かった、うん
アヲ
…なんか段々と笑いに走ってる気が…
ヰロハ
走ってない
アヲ
……混乱してるな、ヰロハ
アヲ
……昔の"彩"みたい…ははっ
そうやってからかう様に、
アヲは笑う。
─なんでこんなに可愛らしいのだろう
この生き物は。
アヲ
…ハグくらいなら、
アヲ
何時間でもどうぞ?
ハグをすると、背中にぎゅ、と腕を回される。
アヲ
……暖かい?
ヰロハ
嫌なほど暖かい
アヲ
……素直じゃないヤツ
ヰロハ
次は俺から、ね
アヲ
はいはい…
end