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──ピピピッ──
控え目なアラーム音が鳴った
いつもなら、煩く感じた目覚まし音だが
今だけは……酷く助けられた
ゆっくりと瞼を上げ、身体を起こす
まるで、泥沼の中に 永遠と沈んでいくかのような
重く、苦しく、ドロドロしたものが 身体中にまとわりついているみたいに、重い
何となく、視線を窓に向ける
カーテンの隙間から、僅かに覗く光──
その光が、薄暗い部屋の中に落ち 暗闇は物陰へと後退していく
時刻は、6:30
「夢から覚めた」と 頭ではしっかり理解出来ている
────だが 瞬きの度に、あの“惨劇”が蘇って……
一気に、鳥肌が立つ
“何か”が身を潜め、暗闇の中で、じっと…… こちらを見張っている……、
そんな気配が、部屋中に満ちているような 気がして、無意識に体が強ばる
Mr.ブラック
────上手く息が吸えない…、
バクバクと、痛みを伴う程 心臓が早鐘を打ち続けていて
突き刺すような顫動が 全身を激しく駆け巡る
ズキッ、と 手に染みる様な痛みが走った
────硬く握りしめていた手を そっと開くと
爪で皮膚が切れていたのか 手のひらには血が滲んでいた
じくじくと、次第に熱を帯び始め 炙られる様な痛みが襲い始める
Mr.ブラック
生暖かい血の熱も
頭に押し当てられた銃口も
何もかも──── 全部……鮮明に記憶に残っていた
リビングに移動して、身支度をする
傷の手当をしている間 何度も、あの光景がフラッシュバックした
どうにもならない重苦しい不快感が ズッシリと、背にのしかかり
押し寄せる吐き気に、顔を顰める
Mr.ブラック
────グラリ、と 視界が揺れた
夢だったと言うには…… 余りにも……、リアル過ぎて……
「悪夢だった」と、割り切れない
どす黒く染まった感情が 嫌になる程、ぐちゃぐちゃに渦を巻く
Mr.ブラック
Mr.ブラック
────途端、 スッと、空気が軽くなる
黒煙のように部屋中に漂っていた気配が 少しずつ、薄れていくように感じた
…呼吸がしやすい、
安堵に胸を撫で下ろし 深呼吸を数回、繰り返した
カチャリ、と 玄関のドアを開けた
雲間を洩れる日の光が 暖かくて、眩しい────
────思わず、目を細めた
ふわり、と風が頬を掠める その風は、どこか穏やかだった
────すまない先生に会いたい……
不安要素を一刻も早く、取り除きたくて
いつもより早く、家を出た