TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

その日のクラス内のグループチャットは、朝から妙な熱気をはらんでいた。

男子A

――ってなわけ

男子A

すごくね?

女子B

セラーノベルだっけ?後で見に行く!

女子B

私もクライムロック、好きなんだよね〜!

女子C

わたしも!

男子B

立花さん、サインくれねえかなあ

あおい

え、みんな、本気?

男子A

そんなケンソンすんなって

男子A

有名人からサインを貰うってだけだし

あおい

いや、そうじゃなくて

あおい

あたしがヲタク趣味でキモいとか、思ったりしないの?

女子C

なんで?!

女子C

それって何か悪い事なの?

女子B

私達のお母さんの世代じゃないんだから、そんなので一々変な目で見たりしないって

男子B

そうそう!むしろ俺としては、もっと色んな絵を描いて欲しい!

あおい

あ……

あおい

あおい

ありがとうね、みんな!

あおいを取り巻く世界は一転した。

これまでは、クラスメイトから少しばかり距離を置かれていたのだが、今は違う。

二次創作に関する話題をきっかけに、女子生徒達があおいに積極的に話しかけてくれるようになったのだ。

女子A

ねえ立花さん、クライムロックは誰推しなの?

女子B

あおいちゃん!新作見たよ!すごく良かった!!

あおい

ほんと?嬉しい、ありがと!

女子C

あおいちゃん、美紅ちゃん、一緒に帰ろ!

あおい

うん!

美紅

わ、私も?

女子C

当然!ね、あおいちゃんもいいよね?

あおい

もちろん!

ああ、なんて心地いいのだろう!

あおい

目に映る誰も、あたしを褒めてくれる

あおい

あのサル親みたいに、あたしを否定しない!

声を上げて笑い出したい気持ちを抑えて、あおいは内頬(うちほほ)の肉を噛む。

そうして浮かれていた矢先――

黄実花

立花さん!?

あおい

うわ!

黄実花

……これ、どういう事なの?

あおい

は?主語もなんもないんだけど、どしたの?

黄実花

貴方が『望岡きなこ』だって事……

黄実花

本気で言ってるの?

あおい

いや……本気もなんも、事実なんだけど?

あおい

てか大丈夫?色々めちゃくちゃだし、なんか顔怖いし

黄実花

茶化さないで

黄実花

この絵も、今までのやつも、全部貴方が描いたって言うつもり?

あおい

そうだけど?

あおい

まずさ、それあんたに関係ある話だっけ?

あおい

なくね?

あおい

あたしの創作活動にケチつけるとか、マジであんた何様?

あおい

あたしが絵を描くことで、あんたに迷惑なんてかけてないよね?

あおい

ま!あんたにとやかく言われる筋合いなんて、こっちには無いんだよね

あおい

分かったら、どっか行ってくれない?

あおい

はっきり言ってあんた、めっちゃ不愉快だから

あおい

ねー、みんなもう帰ろ!

あおい

せっかくの午前授業なんだし、こんな奴に使って無駄にしたらもったいないって

女子B

あは、それもそうだね

女子C

吉岡さんってば、急にどうしたんだろう?

男子A

別のあいつのことなんてどうでも良くね?無視無視!

男子C

てかこの後どーする?

女子B

せっかくだし、どこか寄らない?

あおい

おっけー

あおい

じゃ、またね吉岡さん

あおい

そっちも早く帰んなよ

黄実花

黄実花

……ね

あおい

あおい

へ?

あおい

なんですかぁ〜?
声がちっさくて聞こえませ〜ん!

黄実花

今のうちに謝って、撤回した方がいいよ

黄実花

そうじゃないと、後悔すると思うから

あおい

はあ……?

あおい

ぷぷ、なにそれ、予言ごっこ?

あおい

やめなよ〜、厨二病は中2で卒業しとけってマジ!

あおい

見ててイタいんだよね!

あおい

あんたの予言の意味も、あたしってば1ミリたりとも分かんねーわ!

あおい

それとも何?もしかして、あたしがあんたより上って言いたいの?

あおい

そりゃーねーわ!

あおい

あおい

だってあんた、あたしの知る限りでは絵も描いてない、小説だって見た事ない!

あおい

それに美術で見たあんたの絵、めっちゃ下手じゃなかったっけ?

あおい

そーゆーのも分かんないとか、感性も人間性も終わってんじゃん!

女子B

ちょいちょい!言った張本人がそんなガッツリ絡むなし!

男子B

そんな厨二病ほっとけよ〜

あおい

あは、ごめんごめん

あおい

じゃあホントにまたね?

この後どこに行こうか、何をしようか。

楽しげに話し合うあおい達の背後で、ズッと鼻をすする音が聞こえた。

その音が何を意味するのか、あおいには知るよしもない。

その日の夜。

あおい

ふ〜っ!今日、超楽しかった!

あおい

久々に美紅以外の友達と遊んで、ちょっと疲たけど

あおい

だがしかぁし!それが今日のセラーノベルを巡回しない理由にはならない!

あおい

さあて、今日は何人フォロワー増えたかな……っと!

あおい

あおい

お、おお!?

あおい

15人!?

あおい

で、そのうちの何人かはクラスメイト、と

あおい

……っく、くく

あおい

あおい

あっははは!

あおい

単純すぎて面白くなってきたんだけど!

あおい

こんなに上手く行くなんて思ってもいなかったって、ホント!

あおい

たぁのし〜!

あおい

それになんか、なんかめっちゃ満たされてるって感じ!

あおい

褒められるってすごい!

あおい

ほんとありがとね、みんな!

あおい

あたしの踏み台になってくれて!

あおい

あんたらがフォローしてくれたお陰で、あたしはもっと目立てる!

あおい

あんたらだって嬉しいでしょお?

あおい

だからあたしを讃(たた)えろ!

あおい

バッチバチにいいねを押せ!!

あおい

無産のあんたらには、あたしの機嫌を取る事しか出来ないんだから!!

あおい

はー……っ、ヤバ、ちょっと1人で盛り上がり過ぎたかも

あおい

なのにあのサル、今日はあたしの部屋に怒鳴り込みに来ないじゃん?

あおい

めっっずらし!明日雪降るんじゃないの?

あおい

でも超嬉しいかも〜!

あおい

気分いいから、今日は初絡みのあの子の推しを載せちゃうぞ〜っと!

もうすっかり慣れた様子で、あおいは本物の望岡きなこのアカウントから、目当てのキャラクターがいる画像を探り当てる。

サクサクと高画質化し、適当な文章とともに投稿。それだけでいい。

あおい

ほ〜ら、お目当てのイラストですよ〜!

あおい

だからもっと、コメントちょうだいね!

あおい

別に減るもんじゃないし、いいじゃん!

もっと反応が欲しい。 もっともっと褒めて欲しい。

それはあたかも麻薬の中毒症状のように、あおいの脳みそを甘く揺さぶる。

あおい

その調子で、もっともっともっと!もっとだって!!

あおい

あははっ!

あおい

いつかは頂点に立つあたしを、ずーっと笑顔でいさせてよ!!

彼女の期待に応えるかのごとく、フォロワーやコメントは増えていった。

笑いが止まらないあおいを、邪魔する者は誰もいない。

そう、誰も。

その、はずだったのに。

望岡きなこ

皆さん、本日は悲しいお話があります

望岡きなこ

聞いた話なのですが、どうやら私のなりすましがいるようです

望岡きなこ

その人が活動しているWebサイトなど、詳しい話はまだ分かっていませんが……

望岡きなこ

もしもそのアカウントを見かけたら、ダイレクトメールを開放しますので、そちらで教えてください

望岡きなこ

なりすましアカウントの、プロフィール欄などのスクショを、貼り付けるだけでも構いません

望岡きなこ

すぐにとは言いませんが、速やかに対応します

望岡きなこ

ですので、皆さん、どうかご協力をよろしくお願いします

きなこフォロワー

了解です!

きなこフォロワー

なりすまし、許すまじ!

きなこフォロワー

ただでさえ受験生で、色々とストレスを抱えやすいってのに!

きなこフォロワー

ほんと、許せないよね!

きなこフォロワー

なりすまし、許すまじ!

きなこフォロワー

委細(いさい)承知いたしました。成り済ましアカウントを見かけたら、すぐに報告しますね

きなこフォロワー

私の知り合いにも、根回しした方が良いかな?

きなこフォロワー

そうだね、みんなで協力してやろう!

望岡きなこ

皆様、ご協力いただきありがとうございます。本当に心強いです!

きなこフォロワー

微力ながらお手伝いさせていただきます!

きなこフォロワー

調べ上げ次第、ご報告させていただきますね!

望岡きなこ

ご協力いただき、感謝にたえません

望岡きなこ

皆様に置かれましては……決して、決してですよ?

望岡きなこ

なりすましを刺激しないよう、慎重な対応をお願いいたします

望岡きなこ

それでは、本日のXYZの更新は、この投稿をもって終了させていただきます

望岡きなこ

明日は本格的に勉強したいと思っていますので、申し訳ございませんがお休みさせてください

望岡きなこ

また近いうちに必ず、XYZを更新しますので!

きなこフォロワー

お疲れ様です!

きなこフォロワー

勉強頑張ってください!!

きなこフォロワー

じゃ、私達は私達で、こっそりなりすましを見つけちゃいましょう!

きなこフォロワー

あの子の迷惑にならないように、ひっそりね

早々と、邪魔者達の足音は近付いていた。

この作品はいかがでしたか?

76

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚