晴人
月様…?
どうなされました?

月
…!
何でもないわ。
寮に戻るわ。

ー幼い頃
前女王である母が亡くなり
私が女王になった。
大好きだったお母様。
彼女に恥ずかしくない
女王になるため必死に
努力してきた。
事実私が女王に
なlちてからずっと
この世界は平和だった。
優秀な女王だと
崇められてきた
「アリス」である私が
命令すれば誰もが
服従した。
月
ねぇ、晴人!
どこに行くつもりよ!?

月
晴人ってば!

国民1
居たぞ!
女王だ!

国民2
捕まえろ!

国民3
殺せ、殺せ!

晴人
…もう、こんな所までっ
月様!?

月
何をしているの?
貴方達!
鎮まりなさいっ

国民1
…

国民2
…

国民3
…

国民1
殺せ!

国民2
殺せ!
女王を殺せ…!

兵士1
女王様!
ここは我々がっ

兵士2
どうか、お逃げ下さいっ

そんな…。
そして月は晴人に『鏡の間』まで連れて来られた。
月
(鏡の間…?
普段、私でさえも
入る事を禁じられている
のに何故…)

月
行き止まりじゃない。
どうする気なの?

晴人
月様にはしばらくの間
『白の世界』に行って
頂きます。

月
白の、世界…?

晴人
この世界と表裏一体
となっている別の世界
…と言えば良いでしょうか。
この黒の世界とは全く
別の理(ことわり)で存在している
異世界です。

月
そんな場所へ
行ってどうするの!?
逃げた所で現状は
何も変わらないわ!

晴人
ですが今、
月様の『アリス』は
暴走しようとしています。

月
…!

晴人
『アリス』は
強大すぎる力です。
抑えきれず暴走させれば
国や国民達にも影響が出ます。

月
…。

急な治安の悪化。
暴走と化した住民達。
現実と溶け出す白昼夢。
晴人
ですが
『白の世界』に行けば
『アリス』の力を
抑える事が出来ます。

月
…え?

晴人
白の世界の人間には
血の力という
概念はありません。
他者への影響もかなり
弱まるでしょう。

月
…アリスの力が
使えないということ?
そんな場所で。

晴人
ですから
あくまで
一時的な措置です。
『アリス』暴走が
治るまでですから。

月
…。

月
…分かったわ。

そうして『白の世界』での生活が始まった。
黒の世界と白の世界は表裏一体。
黒の世界ほど表立ったものではないものの
黒の世界の異変の影響を受け
白の世界もおかしくなってきているらしい。
だから私達が紛れ込んでも
誰も気にしないのだと
晴人に説明された。
事実急に現れた私達を
怪しむ訳でもなく
皆、以前からの
友人のように接した。
月
何なのよ!
あいつら…。
なれなれしいわね💢

晴人
月様のご友人に
なるご予定の方達ですね。

月
予定って何よ…。
大体何で私を前から
知っている風なの…?

晴人
さぁ…?

晴人
誰かと勘違いしている
んじゃないですか…?

月
勘違いって…。
そんな事ってあるの?

晴人
良いじゃないですか。
当分学生として生活して
頂くわけですし。

晴人
社会勉強だと思って。

月
何で私が
庶民の真似事
なんかしなきゃ
いけないのよ?

月
(それに友人だなんて…)

晴人
いかがですか?
学生生活は。

月
問題ないわ。
むしろ女王の仕事より
遥かに楽だわ。

晴人
それは良かったです。
では、ご友人は?

月
…最悪ね。
勝手に話しかけてくるし
遠慮はしないし…。
鬱陶しいったらないわ!

月
(けど、『友人』なら
無下に扱っちゃいけない
のよね…。
友人って難しい…。)

晴人
そうですか。

月
扱いに困るのよ。
友人なんて。

気さくに話しかけてくる
私と同年代の友人。
欲しいなんて思ったことすらなかった。
存在することすら知らなかったから。
だから初めてあの光景を
見た瞬間私は言葉を失った。
彼らはなんて
屈託のなく
笑うのだろう…。
なんて幸せそうな
世界なのだろう。
優花
ねぇー。
コレ、一緒に
食べない?
いちごチョコのクッキー!
新作なんだって。

月
(いちご!)

優花
やっぱり食いついた笑
本当に好きだよね、いちご。

月
ふ、普通よ!

明日香
いちごが好きな所
良いと思う。
可愛くて笑
だから隠さなくて良いの。

月は明日香にそう言われ
思わず顔が赤くなってしまった。
優花
赤くなった!

明日香
可愛い!

月
う、うるさい(照)

月
(もう、何なのよ…)

仮初の友人だと分かっていても
やっぱり落ち着かない…。
月
何で部屋まで来るのよ!?

優花
何でって
心配に決まっている
からじゃん!

優花
友達だもん。
当然でしょ!

晴人
(さすがに
月様も戸惑っているな。
無理もないか。)

だが1日も早く彼女を白の世界に
馴染ませなければ。
ここで新たな形の幸せを
掴ませる事が
私が現王女が出来る
最後の務めと
なるだろうから。
そのために出来ることは…。
月
…ショッピング?

優花
そう!
兎木坂(とぎさか)に
新しい雑貨屋がオープン
したんだって!
一緒に行かない?

月
…雑貨屋。
…。

月
…やめておくわ。

優花
えー。

明日香
優花。
無理強いはダメだよ。

優花
そうだね…。
また今度一緒に行こう!

月
ええ。

晴人
よかったのですか?
折角のお誘いなのに…。

月
…っ!

月
…当然でしょう。
楽しむ為にここに
来たわけじゃないもの。
それに、わざわざ庶民と
慣れ合う義理はないわ。

月
(夕焼けだっけ…?
黒の世界にはなかった。
やっぱり違う世界なのね…。)

月
(こんなところで
のんびりしている
場合じゃないのに…。)

月
…?
何かしら。

月
(何かいる!)

男子生徒
…なぁ。
あいつ見てみろよ。
怖くないか?

女子生徒
目を合わせちゃダメよ!
地縛霊かもしれないじゃない。
行きましょう。

月
(私もあまり
目を合わせない
ようにしよう…。)

千秋
あ、あの…。

月は目を合わせない!
と決め男性の前を通り過ぎた。
声をかけられてることもお構いなしに。
そしてしばらく歩いて
何気なく後ろを見ると…。
何と男性はついて来ていた!
月
(無視無視!)

そしてまたしばらく歩いて
また後ろを見ると…。
ついて来ていた…。
月
(む、無視無視!
無視無視無視無視無視無視っ!)

そして、3度目の正直として
後ろをもう一度見てみると…。
やっぱり。
月
(ついて来てる!!)

湊
地縛霊が
場所移動しちゃ
ダメだろ。

月
ツッコむとこ
そこ!?

月
って
誰あなた…。

晴人
おや、湊
もう来ていたのですね。

月
え?
知り合いなの?

晴人
はい。
私が呼び寄せたんです。

晴人
ご紹介します。
彼は帽子屋の湊。

月
帽子屋?
だからそんな
派手な帽子を
被っているの?

湊
言っておくけど
コレ、売り物だから。
触るなよ。

月
何で、売り物を
被ってるのよ。

湊
売り物だからに
決まってるだろ。

月
(訳が分からないわ。)

晴人
そしてあちらが
千秋。
女王直属親衛隊の
第一部隊隊長です。

月
…え?

湊
…は?
どこら辺が隊長なわけ?

晴人
剣の腕を買われたそうですよ。
それにトランプ兵といえば彼は
第二階層出身ですし。

月
(トランプ兵…。
そういえば。)

月
千秋!

千秋
は、はい…っ。

月
黒の世界は今
どうなっているの?
私が居なくて平気なの?

千秋
え…?
えっと、あの…。

月
答えなさい!

千秋
…っ!
で、ですが、その。
晴人様が…。

月
(え?)

晴人
…千秋。

月
(千秋の言葉を遮った…?)

月
晴人…。

優希
案外話せている
じゃないか。千秋!

月
!?
だ、誰!?

優希
僕の名前は優希。
チェシャ猫だよ。

優希
よろしくね。
女王様♪

月
チェシャ猫って…。
公爵夫人の飼い猫の?

優希
ご明察。

駿
俺もいるぜ。

月
…あなたは。
お城を出入りしている
商人だったわね。

駿
どーも。
女王様。
俺は三月うさぎの
ネロ。

優希
ほら!
千秋も隠れてないで
出て来なよ!

湊
こいつの事が
怖いわけ?

月
(こいつ…。)

優希
違う違う。
むしろ、女王様至上主義
なんだよ。
でも好きすぎて女王様の前
だと緊張で話せなくなるんだよ。

湊
…変わったヤツ。

月
失礼ね💢

千秋
…女王様は
素晴らしい
人です。

優希
ね?

月
『ね?』って
言われても…。

月
で…?
この人達は
何なの?

晴人
月様の
お世話係です。

月
は!?

晴人
黒の世界から
呼び寄せました。
さすがに私1人では
力不足ですから。

月
(…だからって
何でこの人選なの。
不安でしかない…)

月
(あれ…?
でも、どうして
青斗がいないの…?
女王の側近なのに。)

月
(それに、さっきの
晴人の態度。
私に知られてはまずい
事でもあるの…?

女王の側近である青斗と晴人。
実質彼らは女王の為というより
国の為にいるといっても
過言ではない。
月
(まさか2人で
何かを企んでいる…?)

そういえば例の禁固刑に
処した庭師。
彼は城の外で
血を流し事切れていたらしい。
それを発見したい民衆が逆上し
クーデターに至ったのだと聞いた。
庭師が収監されていたのは
城の奥深くにある牢屋。
何の力も無い
第三階層の者が
易々逃げ出せるような
場所じゃない
月
(…となると
誰かが手引きをした?)

例えば
第二階層の中でも
力の強い人間。
もしくは…。
看守もトランプ兵も
逆らえない者…。
月
だけどあの時
晴人は私といたし
だとしたら残るは…。

月
(…いえ。
今の『アリス』を
持つのは私だけ。)

月
(あの国を
治められるのは
私だけなのよ…。
その私を…。
女王を貶める理由は
ないはずよ。)

月
…お茶会?

晴人
はい。
月様のための
お茶会です。

晴人
…最近
忙しくて
開いていませんでしたから。
いかがですか?

月
(女王のための
お茶会…。
黒の世界では
恒例の行事だったわ。
…でも最後に開かれた
のはいつ頃だったかしら?)

月
(そんな事にも
気付いていなかった。
私、そんなに余裕が
なかったのね。)

晴人
月様?

月
!!

晴人
大丈夫ですか?

月
…
いちごはある?

晴人
もちろんです。

月
なら行くわ。
