シュナ
さて、どう料理してやろうか?
山賊
才能があろうがズブの素人に俺が負けるわけねぇだろ!
山賊
まずは小手調べだァ!
シュナ
(素人でもわかる!あの大振りな攻撃受けちゃいけないやつだ!)
山賊
砕けろ!
地面に触れた途端その地が、振り下ろした方向にひび割れて崩れていきシュナの足元をグラつかせる
シュナ
くっ!
シュナ
(後ろに逃げたのにそれでもあの地割れここまでって……)
山賊
足元が不安定じゃあ踏ん張れないなぁ!
すぐに振り下ろした大斧を担ぎ直しシュナとの距離を詰める
シュナ
(あれ持ってるのに速っ…!?)
山賊
騎士の命であるその腕貰い受けたァ!
シュナ
(やられる!?)
シュナ
シュナ
(いや、やられるわけには行かない!!)
シュナ
(この程度の壁は超えないと!)
シュナ
シュナ
なめるなぁぁぁ!
気合と咄嗟の判断で手に持つ剣を上に投げその勢いのまま背中を反らせ攻撃を躱す
山賊
こ、こいつ!?
シュナ
落ちてくる剣を掴む勇気はまだないから
シュナ
代わりにその剣受け止めてよね
振り切る少し手前くらいで体を起こして大斧を両手で掴み自身の方に強く引く
山賊
(こいつ、その体のどこにこんなふざけた力を!?)
大斧だけでなくそれを持つ男を無理をした表情を見せずに自信が元いた場所まで引き付け、落下してくる剣はそのまま山賊の背中に突き刺さる
山賊
ぐがぁぁ!?
シュナ
しゃあオラァ!!
シュナ
私を女だからと甘く見たわね?
シュナ
そんな簡単にやられてたまるかっての!
悶絶する山賊にそう吐き捨てながら背に刺さる剣を引き抜き距離を置く
山賊
うがぁぁ!!?
シュナ
うへぇ…
シュナ
血まみれで汚ねぇ……
山賊
て、てめぇ……
山賊
女だからって手を抜いていたがもうやめだ
山賊
戦意を確実に失わせて俺のペットにしてやる
シュナ
今のところそれは怪しいわよ?
シュナ
なんせ、”ズブの素人”にやられてますからね
山賊
いい気になるなよ小娘がァァ!!
山賊
『才能開花 戦技大斧』
突然そう叫んだと思えばシュナの足元に突き刺していた大斧がいつの間にか山賊の手元に戻っていた
山賊
今からお前に本当の才能の使い方を見せてやる
先程まで両手で持っていた大斧を今は軽々と片手で持ち上げ再度シュナに襲いかかる
シュナ
(こいつ今さっき背中に剣をぶっ刺したのにまだ元気に動けんのヤバいって!?)
シュナ
(ほんとにズブの素人の私じゃこれ死ぬやつだよ!)
山賊
楽には殺さねぇ!
山賊
まずはこの柄の部分で片腕貰い受ける!
大斧の柄の部分を思いっきりシュナにぶつけ左碗部をへし折る
シュナ
……ぐぁ!?
山賊
ギャハハハ!!
山賊
どうしたぁ!?
山賊
やはりさっきの回避はまぐれだなぁ?
シュナ
………はぁ…はぁ……………
シュナ
(確実に骨はイカれた…)
シュナ
(よく悶絶しないで耐えてられるよ私……)
シュナ
(多分この生きるか死ぬかの瀬戸際でアドレナリンとかアホみたいに分泌されてるんだろうね)
シュナ
(なのに不思議と焦りはなく冷静にいられるのは何故かしら…)
シュナ
(なんにせよ、危機的状況なのは変わらない)
シュナ
(ここから私が勝つ道筋ってあんのかしら?)
シュナ
(私もアイツみたいに才能開花を”意図的”に引き起こせたりしないかな…)
シュナ
(アイツに限らず才能開花をした者は皆使えるはず)
シュナ
(だってあんな腐れ外道でも出来るんだもん)
シュナ
(私もできてもおかしくはない)
シュナ
(けど、それのやり方は一切わかんない)
シュナ
(1番それっぽいのは私自身が剣に対しての知識を深めて経験もあれば…)
山賊
山賊
……ほぉ?
山賊
腕を折られてなお立ち続けるか?
山賊
そのうえその絶望してねぇ瞳……
山賊
顔はいいがその性格はいけすかねぇ女だ
シュナ
……そりゃどうも
シュナ
私もアンタなんかに気に入られなくて結構よ
山賊
自分が置かれた立場を分かってねぇみたいだな?
山賊
お前の命なんて俺のさじ加減なんだよ
山賊
殺ろうと思えばいつでも殺れる
シュナ
なら、今すぐしてみれば?
シュナ
気に食わないならすぐに消すのが一番でしょ
山賊
そんなにわかりやすく煽って俺が乗ると?
山賊
何を企んでるのか知らねぇが
山賊
俺の趣味の一つに
山賊
相手の苦痛に歪む顔を見るってのがあってな
山賊
そのためならどれだけ時間をかけてもいいなって思ってんだ
山賊
それが使いものにならなくても
シュナ
性根はとことん腐ってるみたいね
山賊
”素敵な性格”と言って欲しいなぁ?
シュナ
じゃあ、私よりも素敵な性格してるのね
シュナ
シュナ
おかげで罪悪感ゼロでやれそう
山賊
腕が折れてなおその姿勢を保つのは褒めたいが
山賊
ここまで来ると哀れだなぁ?
シュナ
これが虚勢に見えてるなら三流の山賊ね
山賊
あ?
フィン
フィン
せー………の!!
逃げ帰ったと思ったフィンが山賊の後ろから勢いよく現れ、傷を負った背面に蹴りを入れる
山賊
うがぁぁ!!?
シュナ
ちょっ!?
フィン
あ、わりぃ
シュナ
シュナ
私諸共巻き込むつもりだったな!?
フィン
神回避してるからセーフ
シュナ
こっち来るのが見えて時間稼いでた時
シュナ
蹴るモーション見えたから奇跡的に避けれたのであって
シュナ
それ無かったら巻き添い確実にくらってたからな?
フィン
生きてんだしいいじゃん
フィン
それに僕の名演技によってお前がターゲットになったおかげで
フィン
こうして助けられたし
シュナ
代償として私の腕折れたけど?
フィン
え?まじ?
シュナ
うん
シュナ
しっかり左腕イカれてる
シュナ
今はまだ痛みとかはそれほどきてないけど
シュナ
多分アドレナリンとかが分泌されてるから
シュナ
激痛が走ってないだけで、落ち着いてきたら気を失うかも
フィン
まさかほんの少し離れてる間にそんな大怪我をするとは…
フィン
しっかりやらかしたな
フィン
なら早急にここを離れて町に行こうか
シュナ
アイツはどうすんの?
フィン
結構な勢いで吹き飛ばされてるから
フィン
今のうちに逃げ出そっか
シュナ
私走るのもきついよ?
フィン
じゃあ俺が担いでくから
シュナ
は?
フィン
フィン
よっこいせ
シュナ
ちょっ!!
シュナ
担ぎ方考えなさいよ!?
フィン
何が文句あんだよ?
シュナ
背におぶるとか、お姫様抱っこみたいなのじゃないのこういう時って!?
フィン
走りにくいから肩に担ぐでしょ
シュナ
アホ!
シュナ
じゃあ私自力で走るわ!
フィン
馬鹿言え
フィン
僕に担がれてる方が早いに決まってるだろ
フィン
変な才能開花(?)で身体能力強化を受けてんだから
フィン
脚力も並大抵の人よりかはマシだからね
シュナ
私は速さよりも自分の世間体を気にしてんの!
シュナ
こんなのでも私一応乙女よ!?
フィン
ゴタゴタ言ってねぇで行くぞ
シュナ
シュナ
お、おろせ!!
シュナ
下ろしてください!!
フィン
嫌だっての……
山賊
山賊
山賊
はぁ……はぁ…………
山賊
今のあの蹴りは…ほんとに……人か?
山賊
質量の違いみたいなのを感じたが…
山賊
それと俺を蹴り飛ばしたやつのあの声……
山賊
あの女を売った男の声だったな……
山賊
あの男の才能開花が気になる…
山賊
直ぐに追いたいが……
山賊
山賊
この傷じゃあ当分は難しいか
山賊
”アイツ”に頼んで傷の治療をしてもらってからだな
山賊
覚えてやがれあのガキども……