お父さんもお母さんも夜前に帰ってくることはほとんどない。
共働きというやつだ。
けど、何の仕事をやっているかは教えてくれない。
しかし、二人の話を聞く限り同じ職場な感じがする。
陸
ただいまー
虚無が返ってくる。
二人ともいないようだ。
陸
宿題しよ
母
ただいま
陸
あ、お母さん!おかえりー
母
宿題は終わりそう?
陸
うん。あとちょっと
母
あらそう。じゃあ、すぐに晩御飯を作るわ
母は羽織っていたコートを椅子に掛けると、すぐさまエプロン姿になり晩御飯の準備を始めた。
料理の音を聞きながら宿題を進める。
陸
お父さんは、まだ?
母
ええ。まだ仕事が長引いているのよ
母
今日は少し厄介な仕事が入ってね
陸
どんな……?
母
陸には難しいわ
母
それに、いずれわかるから
今日も教えてくれない。
誤魔化される。
ただ、吸血鬼という種族にしか出来ない仕事というのは予測できていた。
陸
そっか
陸
僕もそのお仕事をやるの?
母
そうよ。陸しか出来ないから
陸
僕……警察の人になりたい
母
それは、普通の人でも出来るでしょ
母
この仕事は、吸血鬼にしか出来ない。それに、時代と共に吸血鬼は減っていっているの
陸
そんなに大切なお仕事なの?
母
とっても大切
陸
陸
そんなに……僕のやりたいことが出来ないなら、吸血鬼に産まれなきゃ良かった
母
陸
陸
だって……!
母
吸血鬼は誇ることなの
陸
じゃあなんで学校にも、周りの人にも隠してるの!?
母
……
陸
やっぱり吸血鬼なんか……!
母
妬まれるから
陸
え?
母
手が止まってるわよ
陸
……うん
どこが妬まれる……?
こんなにも嫌なのに……?