琉貴
おはよう、草摩さん。
智咲
あ、おはようございます!
琉貴
ねぇ…あのさ、
智咲
あの!
智咲
クッキー作ったんです!どうぞ!
琉貴
あぁ、ありがとう。
智咲
あ、あと、
琉貴
…うん?
智咲
後で、家に来てくれませんか?
琉貴
なんで…?
智咲
見て欲しいものがあるんです。姉のもので。
琉貴
……。分かった。
琉貴
じゃあ、後でね。
智咲
はい!
噂を言い出した人間。
光太郎の話が本当なら…
もしかして…
智咲
すみません、いきなり来させてしまって。
琉貴
いや、いいんだ。
琉貴
ずいぶん都会から離れた所に住んでるね。
智咲
……はい。
智咲
琉貴さん、今日はずいぶん落ち着いてますね。
琉貴
……そうかな?
智咲
なにかあったんですか?
琉貴
ねぇ。
智咲
はい?
琉貴
美咲さんの呪いの噂を言い出したのって…
智咲
……
琉貴
君だね?
智咲
ふふふふふふふ。
智咲
そうですね。呪いの噂は、私が言い始めましたよ。
琉貴
なんでそんなことを……
琉貴
街の人はみんな信じてしまったんだろ?
智咲
えぇ。みんな面白い事が好きですからね。
智咲
呪いの噂なんてあっという間に広まりましたよ。
琉貴
それで?
智咲
私はね、姉が嫌いだったんです。
琉貴
……でも、君は北海道にいたからあまり知らないんじゃないのか?
智咲
そうですね。あまり知りません。
智咲
でも、母は姉ばかり気にしていました。人付き合いが苦手だったから。
智咲
私の事なんてなんにも気にしていなかった。
智咲
ひどいものですよ。無視されたり。
琉貴
だからって…
智咲
だから呪いの噂をたてたんです。
智咲
その時だけは、姉も無視されていました。
智咲
私も気にして貰えたんです。
智咲
なのに、すぐまた姉をかばう人がでてきた。
琉貴
親戚の人達?
智咲
えぇ。本当にイラついたんです。
智咲
それで私は思いました。
智咲
みんな……
その時彼女が言った言葉。
恐ろしい言葉だった。
智咲
私は思いました。
智咲
みんな……
死んでしまえばいい。
智咲
そうしたら、私はもっとみんなに気にしてもらえる。
琉貴
バカなのか?それじゃお前が殺人者になると思わなかったのか?
智咲
思いましたよ。だから噂を広めたんです。
智咲
姉の呪いの噂はますます広まって、殺人ではなく呪いと信じさせたんです。
智咲
とっても面白かったですよ。
琉貴
……お前、人の命をなんだと思ってるんだ!
智咲
命…ですか?
智咲
命なんて軽いものですよ。
智咲
人は刺せば死ぬんです。
智咲
私は全く疑われなかった。
智咲
だって北海道にいたんですから。
琉貴
どうやったんだ…
琉貴
どうやって殺したんだ!
智咲
呪いの力です。
智咲
人はとても面白い生き物です。
智咲
悪い噂が実際にならないと面白くない。だから真実にするんです。
琉貴
どういう意味だ?
智咲
私は誰も殺してませんよ。
智咲
みんなが殺したんです。
琉貴
自殺だってことか?
智咲
いいえ、違います。
智咲
街の人が殺したってことですよ。
琉貴
……まさか!
智咲
私はどんどん噂を酷くして、広めて、
智咲
その噂を「真実」にしたかった人が、みんなを殺したんですよ…
智咲
愚かなものですね
智咲
ふふ、人間はとても面白いです。
智咲
噂を真実にしたいという思いが人を殺したんですよ。
智咲
私はなにも…
琉貴
お前…!
琉貴
お前が殺したようなものじゃないか!
琉貴
街の人が殺しただと?
琉貴
そんなことを信じるとでも?
智咲
はぁ…
智咲
そうですね…。もう話すしかないですかね……
智咲
北海道にいたのは、私の双子の妹です。
琉貴
なんだと?
智咲
北海道に「私」として居させたんです。そして、私は東京に来た。
智咲
親戚と姉は私が殺したんですよ……
智咲
みんなの驚いた顔…本当に面白かった……!
智咲
楽しかったです…
智咲
アリバイもカンペキ。私は逮捕されることがないんです。
琉貴
お前…
琉貴
俺は警察だぞ!
智咲
知ってますよ……
クラっ…
琉貴
……え?
智咲
クッキー食べてくださったんですね。
智咲
嬉しいです。
智咲
殺しやすくて。
琉貴
……俺は…お前を許さないぞ……
智咲
無理しなくて大丈夫ですよ。
智咲
すぐ、楽にしてあげますからね。
琉貴
うっ…
智咲
さようなら、琉貴さん。
智咲
私は逮捕されませんよ。
智咲
全部噂が悪いんですから。
智咲
ふふ、
智咲
ふふふふふふふふふふ
ふふふふふふふふふふふ