コメント
1件
それからしばらくして、中原当主が中也を呼んだ。
中也は何かしてしまったのだろうかと肩をすくめて
当主の部屋へ入ったが、杞憂だった。
中原当主
中原当主
と、襖を開けて入ってきた人に、
中也は目を見開いて驚いた。
中原当主
中原当主
中原当主
ぺこりと頭を下げるのは、この間の美しい人魚の少年。
中也は驚きと嬉しさで言葉が出ず、
口をあんぐりと開けることしかできなかった。
中原当主
中原当主
中原中也
中原中也
中原当主
当主は中也に出て行けと手を払った。
中也はアツシと共に廊下へ出る。
にこりとアツシは微笑む。
中原中也
中也はふとアツシに声をかけた。
アツシは笑顔のまま首を傾げていた。
中原中也
アツシは驚いたような顔をした。
だがすぐに申し訳なさそうに微笑んで、首を横に振った。
中原中也
首をゆっくり静かに縦に振る。
中也は拳を握った。
中原中也
また、申し訳なさそうに首を横に振った。
中也は頭を鈍器で殴られたかのような衝撃を受けた。
まさか、覚えてもらえていないとは思っていなかった。
中也だけが覚えており、肝心の人魚の少年、アツシは覚えていないなんて。
まるで一人で舞い上がっていたみたいで恥ずかしかった。
悲しかった。
自分だけでなく、相手にも覚えてほしかった。
そんな気持ちがぐちゃぐちゃと音を立てて混ざり合うから、
中也はそっぽを向いて、アツシを置いて自室にこもった。
そして布団にくるまった。
中原中也
中原中也
中原中也
……苦しい
息が、できない
苦しい
どうして?
体が重い
鉛みたいに重い
このまま死ぬのだろうか
そうしたら、透也兄様が雪也兄様が当主になるのだろうか
……また、父様に出来損ないと言われてしまうなあ……
体がだんだんと沈んでいく。
死ぬんだ。
そう悟った。
その時、ふと背中に人のぬくもりを感じた。
生きて
そんな声も聞こえた気がした。
……綺麗な髪をした
女の人だった。