くろ
─まあ、そんなとこか?
くろ
…っはは、面白いな
めい
…
めい
(─またあの子と話してる)
めい
(やっぱり気があるのかなぁ…)
今日も。
また、海音くんを見つめてしまう。
叶わないのか、叶うのか。
綱渡りみたいな恋の中に、僕はいる。
─きっかけは、些細なこと。
このクラスで2回目の、席替えのときだった。
めい
…初めて、隣になるね
くろ
華崎、だっけ?
くろ
よろしく
めい
…うん
めい
あんまり自分から話せなくなっちゃうけど…
めい
その時はごめんね
海音くんは、少し目を細めて笑った。
くろ
大丈夫、俺から話すよ
くろ
─ところで、顔赤いけど
めい
…へ?
くろ
…一目惚れ、ってやつか?
くろ
俺に惚れちゃ、勿体ないぞ
めい
惚れてはないよ
めい
…多分…
これを言ってしまっては、
─僕は、嘘をついたことになる。
めい
(なんでこんなにどきどきしちゃうんだろ…)
めい
(…中学での初恋、奪われちゃったかも…?)
教師
─2限、移動だぞー
教師
早めに準備しろー
─移動か。
今日こそは。
めい
海音くん、あのね─
クラスメイト
海音!
クラスメイト
ね、私と一緒に行かない?
くろ
…ん?
くろ
分かった
くろ
行こ
めい
…っ、あ…
くろ
…あ、華崎
くろ
どうかしたのか?
めい
あ…えっと、その
めい
…なんでもないよ、ごめんね
くろ
そうか…
くろ
じゃ、先行ってるな
めい
─うん
─誘えなかったな。
先を越されちゃった。
めい
(…まあ、仕方ないね)
めい
行くか…
まだ、少し肌寒い廊下。
人が多く混雑している中、
あの黒い髪を見つける。
めい
海音く…
─でも、遅かったみたいだった。
手と手。
繋がっているところを、見てしまった。
めい
…
─人の話す声の中、
ただ一つだけ。
彼の笑い声だけが、未だ鮮明に響く。
end
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コメント
2件
後半で一気に畳み掛けると絶望伝わってきてヤバい… あんなに思いを抱えていたのに、たった一つの出来事で崩れるのがよく分かる







