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最後に残った班は、シズカを含む班のみ。

マドカ

シズカ達、結局他人任せというか……とうとう質問権を行使せずに終わるか。

くじ引きが終わるまで、残り1班。

すなわち、残り4人。

まず、タツヤとカズヤがくじを引く。

当然のように外れ。

残るはナンバーズのシキとシズカだけ。

全員が当たりを引けなかった時は、最悪の結末が待っている。

シキがくじを引くが……しかし外れ。

最後に残ったのはシズカ。

シズカ

あの、先生。
質問……いい?

志賀先生

おー、シズカの班はまだ質問していなかったな。
もちろんいいぞ。

シズカ

あの、さっきのセイヤと同じ前提で答えて欲しいんだけど。

志賀先生

あー、そのルール面倒だからもうやめよう。
どのみちシズカが最後だし、お前の質問には正直に答えてやるよ。

シズカ

だったら、もし私が当たりを引いたとして、他の誰かを代わりに生かして欲しいってお願いしたら……叶えてくれますか?

志賀先生

シズカ、残念ながらそれはできない。

シズカ

……そんな。

シズカは席を立つと、うつむきながら教壇に向かう。

シズカ

だって私……生きてても意味ないもん。

シズカ

バカでノロマでグズで……。

シズカ

私より生きるべき人なんて、いっぱいいるのに。

シズカ

私なんか生き残ったところで、なにもできないのに。

セイヤ

……でも、生きて欲しい。

ツヨシ

あぁ、俺達の分もな。

マドカ

あんた、この私を踏み台にするのよ?
絶対に生き延びなさいよ。
でなきゃ、承知しないから。

志賀先生

なんだか青春爆発みたいな場面だけど、忘れていないか?

志賀先生

シズカが当たりを引けなかったら意味がないんだぞ。

セイヤ

あぁ、だからシズカ。
これから俺の言う通りの手順でくじを引いて欲しいんだ。

シズカ

……手順?

セイヤ

まぁ、おまじないみたいなもんだよ。

セイヤ

まず、抽選箱に手を入れたら、真っ先に手に触れた玉を握りしめるんだ。

セイヤに言われた通り、抽選箱に手を突っ込むシズカ。

シズカ

握りしめたよ。
それで、どうすればいい?

セイヤ

あとは簡単だよ。
抽選箱から手を出して、俺がいいと言うまで、絶対に握りしめた手を開かないようにするだけだ。

シズカ

……これでいい?

シズカは恐る恐るといった具合に、抽選箱から手を引き抜いた。 握りしめられた拳の中には、くじが握られているに違いない。

セイヤ

シズカ、引いたな?

シズカ

うん、引いたよ――。

セイヤ

よし、それじゃあ、しばらくそのままにしていてくれ。

セイヤはシズカにそう言うと、担任のほうへと視線を移す。

セイヤ

志賀、俺達に対する質問の返答はさておき、今回のくじ引きは、当たりが抽選箱に入っている前提になっているんだよな?

志賀先生

あぁ、そうだよ。

セイヤ

そうじゃなかったら、俺達は当たりの入っていないくじ引きをしたことになる。

セイヤ

それじゃ、くじ引きとして成立しないからな。

本当は当たりなど入っていなかった。

しかし、志賀は当たりが入ってるものとして、くじ引きを強行した。

ならば、それを逆手に取ってやればいい。

セイヤ

志賀、今さっきシズカはくじを引いた。

セイヤ

そして、そのくじはシズカの手の中にある。

セイヤ

くわえて、現状シズカが当たりを引いたのか、それとも外れを引いたのかは分からない状態だ。

セイヤ

だから、改めさせてもらうぞ。
そっちの抽選箱の中を。

セイヤが立ち上がると、ほぼ同時にハカセが立ち上がる。それにつられる形でヨウタが立ち上がり、そしてツヨシが続く。

ハカセ

僕も手伝おう。

ヨウタ

なるほど、さすがはセイヤだぜ。

ツヨシ

そうか、このやり方があったか。

ちらりと担任の様子を伺うが、担任は無表情のままだった。

セイヤ

シズカ、くじは握ったまま、絶対に開けるなよ。

シズカ

う、うん……。

セイヤに加えて、ハカセにヨウタ、それにツヨシが手を貸してくれたから、抽選箱の中身を改めるのは簡単だった。

抽選箱を開けた時点で、結果は火を見るよりも明らかだったが、手分けをしてひとつずつ確認した。

セイヤ

今、抽選箱の中を確かめさせてもらった。

ハカセ

その結果、抽選箱に残っていたくじは全て外れだということが明らかになった。

ヨウタ

これまで俺達が引いたくじは全部外れ。

ツヨシ

そして、抽選箱の中に残っていたくじも全部外れ。

セイヤ

じゃあ、志賀が入れたと主張する当たりはどこにあるのか?

セイヤ達の視線がシズカへと向けられる。

セイヤ

今シズカが握りしめている……としか考えられない。

セイヤ

そもそも、シズカが引いたくじまで外れだったら、やっぱり抽選箱の中に当たりは入っていなかったことになる。

セイヤ

これは俺達が主張しているだけではなく、事実として証明されることになる。

セイヤ

もし本当にそうだったら、さっきヨウタも言ってたけど、さすがに反則だよな?

セイヤ

このくじ引きは最初から成立していないんだから。

当たり前だが、シズカが奇跡的にこの場面で当たりを引いたわけではない。

きっと、彼女が大切に握りしめているくじもまた、白玉の外れ。

しかし、先に他のくじを改め、シズカが握ったくじ以外が外れだと証明することで、本来はなかったはずの当たりくじをでっちあげてしまったのだ。

志賀先生

……うーん。さすがだなぁ。

担任からは、再びまばらな拍手が送られる。

志賀先生

見事だ。シズカ。

志賀先生

良くこの土壇場で当たりを引き当てたな。

不正を認めてしまうと、ゲームの結果そのものがなかったことになる恐れがある。

だから、担任はシズカが当たりを引いたというところを落とし所にしてくる。

ここまではセイヤが読んだ通りだった。

つまり、当たりを引き当てた班以外の脱落が確定する。

志賀先生

よって、タツヤ、カズヤ、シズカ、シキの4人が生き残り確定。

志賀先生

他のやつらは残念だよ。

志賀先生

残念だけど仕方がない。

志賀先生

今回は数が多いからな。
大人しく隣の教室に移動してもらおうか。

と、担任がフルフェイスAのほうへと視線をやった時のことだった。

教室の扉が音を立てて開き、スーツの男が入ってくる。

志賀先生

ちっ……。

とっさに男に向かって猟銃を構える担任。

ハカセ父

動くな!
動けば撃つ!

行方が分からなくなっていたハカセの父が、突如として乱入。

拳銃を担任に向かって構える。

志賀先生

なんのつもりか分かりませんが、数はこっちのほうが……。

担任とハカセ父との間で拮抗が生まれるが、まだ教室にはフルフェイスAが残っている。

フルフェイスBはまだ戻っていないが、それにしたって分が悪い。

ハカセ父

いえ……数としては、こちらが有利になりますね。

担任とハカセ父が対峙する中、フルフェイスAが駆け出した。

ただし、ハカセ父のほうに向かってではなく、担任のほうに向かって。

すっかりハカセ父に気を取られていた担任は、フルフェイスAの動きに対応できず、猟銃をたたき落とされてしまう。

猟銃を叩き落としたフルフェイスAは担任の背後に回り込み、なにが起きているのか理解できないままの担任の首に腕を回す。

志賀先生

いっ、一体なんのつもりだ……。

担任の声など届いていない様子で、背後から担任の首が絞められる。

チョークスリーパーというやつだ。

フルフェイスA

エタァァァァナル!

合成音声が教室内に響く。

フルフェイスA

コウタ……。

ヨウタ

おいおい、まさか。
マジかよ……。

フルフェイスA

ブリザァァァァド!

謎の掛け声らしきものと同時に、担任が脱力する。

そのまま担任は床へと崩れ落ちた。

ヨウタ

……エターナル・コウタ・ブリザード。

フルフェイスA

これを喰らったやつは……。

ヨウタ

死ぬ。

フルフェイスA

まぁ、今回は峰打ちだがね!

セイヤ

(いや、どう見てもただのチョークスリーパーだったけど)

ハカセ父

まさか、ここまでうまく行くと思いませんでしたよ。

ハカセ父の言葉にフルフェイスAはそのヘルメットを脱ぎ、ついでにライダースーツの上着も脱ぎ捨てた。

ヨウタ父

えぇ、やはり筋肉は全てを解決します。

ヨウタ

やっぱり親父じゃねぇか!

セイヤ

えっ?

クラスの一同から視線を集めていることに気づいた男は、改めて頭を下げた。

ヨウタ父

どうも、ヨウタが世話になってるね。

ヨウタ父

ヨウタのお父さんです。

3年D組のクーデター

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