コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
私立椿奈(はるな)高校。
それが、わたしが通う高校の名だった。
日本国西部に位置する大絶賛過疎化中の我が地元(何と島である)に、何故か七年程前に新設された、気が狂ったとしか思えない理念の下設立された高校である。
その理念とは「若者による地域活性化」であり、「学費免除」という甘いエサで高校生を島に集め、フレッシュな風を吹きこもう、というものである。
その上特待生は「学費免除」どころか、「学費全面免除」を約束されており、教科書・制服等の無料配布は当たり前。
更に部活で必要な費用さえも保障してくれるという、夢のような、というか完全に夢物語な学校だ。
そんな馬鹿みたいな、いや、馬鹿な経営を行っている者の名は天樹椿彦(はるひこ)。
奈琴の祖父にあたる、我が島出身の世界的大富豪である。
まあ、この馬鹿みたいな学校は、エキセントリックなジジイの異常なまでの地元愛から作られたものと考えてくれれば、概ね間違いはない。
しかし田舎は田舎である。
県本土との交通手段はフェリーのみ。
島内の交通機関には、電車などといった文明の利器は存在しておらず、若者を大量に集めたはいいが、若者が遊べる施設も数えるほどだ。
だが、島外から来た人間は知らない。七年前にはコンビニはおろか、ゲームセンターすら存在していなかったことを。
ここ七年で、島が活性化し、発展したことは本当のことだ。
だがそれでも、若者が遊ぶには心許ないのが現状である。
それは経営者――理事長の椿彦の方も事前に理解していた。その為、我が校にはもう一つの特色があった。
それが「特待生大量収集」である。
簡単に言うと、特待生を大量に集めた、というだけのことではある。
が、そうすることにより、文武両道に秀でた学校とし、部活・勉学に励む生徒ばかりという状況を作る。
するとあらビックリ、校外の不便さに文句を言う生徒が予想の半分以下だったのだ。
真面目に部活・勉学に励めば、娯楽に走る時間が少なくなるのは道理であった。
よく考えられた姑息療法である。
詰まるところ、我が校は「学費免除」、「超文武両道」が特色の学校であった。
――以上、我が校に関する説明終了。
ということで、
さあ、本題に移ろう。
何故そんな高校で、わたしがバスケ部に所属し(しかもコーチとして)、わざわざ部員勧誘を行っているのか?
それは、一週間程前に遡る。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
昼休み。
わたしはクラス担任たる家康(いえやす)に呼び出されていた。
その名前とは裏腹に、痩せ細った威厳&ヤル気ゼロの無精髭男(24歳・独身・イナイ歴=年齢(ウワサ))である。
冴えない高校教師(担当は日本史)であるところの家康は、わたしを学校一寄り付きたくない場所、職員室に呼び出した。
それも就学時間中最も重要な時間であるところの昼休み中に、である。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
正直どうでもいい。
校長が急にもしドラに目覚めようと、ある朝急に「み○みちゃん萌えー!」とか叫び出そうと、心底どうでもいい。
そんなこと、わたしの貴重な昼休みを阻害する理由にはまるでならない。返せ、今すぐわたしの昼休みを返せ。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
思わず間抜けな声が出た。
こいつ、何を言っている?
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
ちゃんと説明をしろ。端折り過ぎだろう。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
そんな教員二年生に対してわたしは、
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
そう言うと、家康はダルそうに溜息を一つ。
そして、仕方なさそうに説明を開始した。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
二つともあまり触れられたくはないことだがな。自分のIQ知ってる女子高生とか嫌過ぎる。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
わたしは頷かなかった。
今年の五月のことだ。知らないわけがない。
木崎姫歌(きさき ひめうた)
椿奈はその校風上、県内ではそこそこ有名だ。その為、その事件はローカルニュースでも度々取り上げられた。
喫煙をしていた三年生が、それを頑として認めなかったのも原因ではあるだろうが。
家康(いえやす)
まあ、わかる話ではある。
しかし、そこで何故わたしが?
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
その上、都合がいいことに元バスケ部。
なるほど、利用しない手はないだろう。
予め用意されていたように出来過ぎで、気持ち悪いことこの上ないが。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
ズビシッ。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
いつもの口癖と同時、家康はわたしから顔を背けた。この問答が面倒というよりは、これからどうしたものかと思案しているようだ。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
何やらボソボソと呟き始めた。何だ? 他のやつ? 説得?
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
――しまった……!
咄嗟のことでつい大声を上げてしまった。自分の迂闊さに、開いた口が塞がらない。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
ダラダラと、冷や汗がこめかみを伝った。
や、ヤバい。何とかしないと……。
何とか、何とか何とか何とか……、
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
生まれる沈黙。
いぶかしむような家康の視線が、わたしの顔を捉えて離さない。
しかし数秒後、それも面倒になったのか、やつはいつものダルそうな顔に戻り、言った。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)
――しまった!
言い逃れるためとはいえ、何てことを……。
家康(いえやす)
木崎姫歌(きさき ひめうた)