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その日の午後。 つばきはスマートフォン片手に、自室の床に座り込んでいた。

つばき

うそ

つばき

信じられない!

つばき

こんな事って無いよぉ……!

つばき

こんな、垢BANだなんて!

なんということだろうか。 彼女はついに、セラーノベルの運営から、アカウントの停止措置を食らったのだ。

つばき

何度試しても、アカウントにログインすら出来ないぃ!

つばき

どうしよう、どうしよう!!

思い返して欲しい。彼女は実写投稿をする度に、運営の手によって投稿を非公開にされてきていた。

固い注意文付きで、根気強く、何回も。

流石にこの顔出し投稿で、堪忍袋の緒が切れたのだろう。

どんなに規約違反をしても、滅多に強行措置に出ない運営が、こうして一手を打ってきたのだ。

つばき

ひどい、ひどいよぉ……

つばき

私はみんなと、お友達になりたかっただけなのにぃ

つばき

どうして、どうして運営さんは私をいじめるの?

つばき

私、運営さんに酷いこと言った覚え、無いよ?

つばき

つばき

そうだ

つばき

『私は運営さんに対して悪口を言ったりなんかしていません。えっちな投稿も、人の死体みたいなのも、投稿していません』

つばき

『だから、私のアカウントを元に戻してください!!!お願いします!!!!』

つばき

つばき

送信完了!

つばき

きっとこれで大丈夫!

つばき

だって前まで違反?とか言うのしても、ちょっと待てば、投稿できるようになってたじゃん

つばき

きっと何かの間違いだよ!

つばき

メールにお返事したから、運営さんはちゃんと読むように!

画面に向かって、半べそをかきながら指を突きつける様は、傍から見れば滑稽そのもの。

しかし、本人は至って真面目であった。

つばき

早く、早く返事してよ

つばき

ここを追い出されたら、みんなと会えるところが無くなっちゃう!

つばき

そうしたら、どうしよう!

つばき

アイツに笑われるに決まってる!

つばき

つばき

あ!そうだ!

つばき

使えないのは、この二ツ森メリーのアカウントだけなんでしょ?

つばき

なら、新しいメールアドレスを作って、新しくアカウントを作ればいいじゃん!

つばき

二ツ森メリーだと、流石にまた消されちゃうから、新しく名前もつけないと!

つばき

私に、つばきに寄せた名前……名前……

つばき

つばき

つばき 名前 検索……

つばき

つばき

漢字が難しくて読めないな……ん?

つばき

これいいじゃん!

つばき

ふたつを混ぜて、『小紅姫』にしよっ

つばき

わかる人にはわかるように、メリーの時と同じ写真で、道具の写真にして……

つばき

これでよし!

つばき

さて、内容はどうしよう?

小紅姫

みんな、久しぶり!

小紅姫

あ、ごめんね!
久しぶりとか言っちゃった

小紅姫

これじゃ、初対面なのに知り合い面してくる人みたいだよね

小紅姫

でもしょうがないの!

小紅姫

まだ半日も経ってないのに、急にアカウントが消されちゃって!

小紅姫

……新しいものを作ったんだけど、私が誰だかわかるかな?

小紅姫

制限時間は30秒!

小紅姫

小紅姫

なんてね!

小紅姫

実は私、メリーなんだ!
いつも見てくれてありがとね

小紅姫

いきなりで悪いけど、このアカウントを見つけてくれたみんなに2つ、お願い!

小紅姫

私を探しているフォロワーの子がいたら、このアカウントを教えてあげて欲しいの!

小紅姫

これが第1のお願い!

小紅姫

そして2つ目が、私を悲しませるようなことはしないでってこと!

小紅姫

時々私の投稿にキモイとかブスとか言ってる人いたけど……

小紅姫

そういう人はブロックしちゃうし、何より、他の子達が嫌がるからやめてね!

小紅姫

フォロワーのみんなは、私の投稿を純粋に楽しみにしているんだから、サガルようなこと言ったらいけないんだよ!

小紅姫

だから運営さんも、私の嫌がることしちゃダメ!

小紅姫

もう、アカウントが復活しないとか嫌だからね!

小紅姫

小紅姫

ねえ、運営さん

小紅姫

落ち着いたら、なんで私のアカウントを消したのか、理由を教えて欲しいな?

小紅姫

ちゃんと謝ってくれたら、許してあげる!

小紅姫

じゃあみんな、おっつー☆

こうして待つこと数分。

彼女の狙い通り、以前二ツ森メリーをフォローしていた面々が、続々と雑談ページにコメントを付け始めた。

フォロワー

メ、じゃない。小紅姫さん!復活おめでとう!

フォロワー

あなたを待っていました!おかえりなさい!

フォロワー

やっぱり運営にまで嫌がらせされてるか……ムカつくね!!

フォロワー

はっけーん!早速みんなに伝えにいってくるね!

フォロワー

運営がそんなことしてるなんて許せない!私、運営通報する!

フォロワー

俺も通報するわ

小紅姫

わあ、良かった……!

小紅姫

みんな、すぐ、私を見つけてくれてありがとう!

小紅姫

こんなに嬉しいことはないよ!

小紅姫

ちょっと涙が出ちゃいそう

フォロワー

私達こそ、いつもありがとう!そしてこれからもよろしくね!

フォロワー

我らがアイドル・小紅姫!!
サイコー!!

1分以上も反応を待たされたことにいらだちながらも、つばきは慣れた様子でネガティブな感情を隠し、フォロワーと接する。

その様子は、まるで教室の中でクラスメイトに囲まれるエミリのようであった。

新規フォロワー

小紅姫さん!やっと見つけました!

続々とかつてのフォロワーが集まる中、このアカウントもまた、彼女を追ってきていた。

小紅姫

あ!貴方も見つけてくれたんだ!

新規フォロワー

はい、心の太陽が消えてしまうのは辛いです( ;_; )

小紅姫

大丈夫だよ、私がいる限り、心が凍りつくことはないからね!

新規フォロワー

ありがとう、ありがとう……

新規フォロワー

新規フォロワー

そうそう、小紅姫さん

新規フォロワー

貴方に少しお話したいことがありますので、少しだけ自分の雑談ページを見ていただけませんか?

小紅姫

いいよ!じゃあ、後でね!

作品宣伝かよ、うっざ。

内心で毒づきながら、つばきは新規フォロワーの雑談ページへと指を伸ばす。

つばき

へえ、あの新規フォロワー、『ユーリ』って名前なんだ

つばき

そういえば、ちゃんと名前確認してなかったや

つばき

ユーリさんは私になんて言いたいのかな?

つばき

ファンレター的なコメントなら、それこそ私の雑談ページに書き込めばいいのに

つばき

つばき

まさか、告白とか!?

つばき

わぁー、どうしよう!?

つばき

ユーリちゃん?くん?
どっちか分からないけど……

つばき

もしそうだったら、どうお返事しようかなあ!?

つばき

あーん、早く読み込み終わってえ!!

ユーリのマイページを開いたつばきは、1つしかない雑談投稿をみて、クスリと笑った。

小紅姫

わ、わざわざ私と話すために、雑談投稿したの?

小紅姫

頑張るじゃーん

小紅姫

さて、内容は……

ユーリ

ユーリ

小紅姫さん、見てくれていますか?

ユーリ

見てくれたら、ぜひコメントなどで反応してくださいますと嬉しいです

ユーリ

ユーリ

先程、垢BAN処分を受けたとの事で、力になれなかった自分が悔しいです

ユーリ

運営に対して怒りが湧いてきます

ユーリ

ユーリ

そこで、私は思いました

ユーリ

ここではない、別のSNSにご自身のことを投稿してはいかがかと

ユーリ

投稿内容で貴方が小学四年生であることがバレなければ、なんの問題もないはずです

ユーリ

そして、何より……

ユーリ

貴方は『いいね』が少ない、反応が遅いと感じることも、最近は多々あるのではありませんか?

ユーリ

大丈夫です。これからは私達が貴方に『いいね』を送り続けます

ユーリ

もっと貴方のことを知りたいと思う人が増えるように!

ユーリ

ユーリ

貴方を思う心は、誰にも負けません

ユーリ

絶対にセラーノベルの運営の手から、守り抜いて見せます

まるで少女漫画に出てくる王子様か、なろう小説でヒロインを溺愛するヒーローのセリフみたいだ。

嬉しさと小っ恥ずかしさで、つばきは耳まで赤くして、スマートフォンを握りしめる。

そんなつばきの脳裏には、男装の麗人が可愛らしい少女である自分に向かって、手を差し出す光景が浮かんでいた。

小紅姫

ユーリさん、ありがとう!

小紅姫

感動しちゃったよ……!

つばきの気分はすっかり、少女漫画のヒロインである。

ユーリ

いえいえ、ご満足いただけたのならよかったです

ユーリ

ユーリ

時に、これを言ったのは私だけではありませんよ?

ユーリ

私の友達も、貴方のことが気がかりなのです

ユーリ

またセラーノベルの運営に、嫌がらせをされてしまうのではないかと

小紅姫

そうなの?

小紅姫

だって今まで、あなたのお友達はどこにも居なかったよ?

ユーリ

すみません、彼らはセラーノベルに登録はしていないのです

ユーリ

ただ、ブラウザから貴方を見て、毎日癒されているようですよ

小紅姫

へえ、奥手なファンもいたんだ!

ユーリ

ええ。貴方のことを、心から慕う人は沢山いるのです!

ユーリ

だからこそ、申し訳ない

ユーリ

友達にもセラーノベルに登録して、小紅姫さんに貢献しろと言っているのですが……

ユーリ

どうも、通知でこちらの存在が知られたらどうしよう、と心配しているようで

小紅姫

えーっ!?何、その不思議な理由!

ユーリ

さあ、私にも何がなにやら

ユーリ

かと言って、その人達は貴方のことを全く気にかけて無い訳ではないんですよ?

小紅姫

そうだったんだ!

小紅姫

不思議な理由だけど、少し親近感わくなぁ

小紅姫

もしかしたらその人達も、運営さんに嫌がらせされるかもって、怯えてるのかもね

ユーリ

それもあるでしょうね

ユーリ

彼らは貴方が投稿する度に、一喜一憂しています

ユーリ

皆さん、本当に心から貴方を愛していらっしゃいます

ユーリ

少なくとも、貴方のアカウントを知っている人間は、全員ね

小紅姫

なんだか照れちゃう!

小紅姫

でも、そう言う風に言ってくれると、私自信が持てるよ!

小紅姫

あなたの言葉、本当に嬉しい

ユーリ

ユーリ

貴方の努力あってこそです

ユーリ

このサイトは、貴方が思うような、優しいところではありません

小紅姫

そうかもしれない

小紅姫

私もたくさん非公開にされたり、垢BANされたりしたから

小紅姫

フォロワーさんも連れて、運営さんの嫌がらせから逃げられたら――

ユーリ

であれば、私達が登録しているSNSに避難しましょう!

文字を読み終えた、その瞬間。

つばきは言いようのない不安に駆られた。

ユーリが何か、恐ろしいことを提案している。

そんな予感が、彼女の背筋を冷や汗として伝っていくのであった。

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