ムゲンダイ！HOPE SONG

いつの間にか気を失っていたようだ

サジーが目を覚ますと

カーテンに仕切られた天井が見える

消毒液や他の薬品が 混ざった独特の匂いがする

サジーが呟くとカーテンが開く

何か、大切なことを 忘れているような

気を失う前 私は何を……

そこまで思考を巡らせハッと気づく

立ち上がろうとするサジーを ゼーデラが静止する

カーテンを勢いよく開け 壁にかかった時計を見る

確か

あの出来事は午後3時頃だったと 記憶している

ということは

ゼーデラは嫌味を言うが

サジーにはそんなことどうでもよかった

テーブルの上に置かれた バイオリンに目をやる

水気は綺麗に拭き取られていたが

所々つい傷は当然そのままだった

サジーは立ち上がり

バイオリンを抱え走り出す

保健室を出て少し走ったところで サジーは廊下を見渡した

バイオリンを修理できる人は 必ずいるはず

しかし その人は誰なのか、どこにいるのか

転校してきたばかりのサジーには 見当もつかなかった

その時

後方から自分を呼ぶ 大きな声

サジーが振り返ると ゼーデラが走ってくるのが見えた

その声は50メートル程 離れていても耳元に届くほど

よく通る、力強い

今までに聞いたことの無い ゼーデラの声だった

ゼーデラはサジーに追いつくと 息を切らしながら話す

サジーには見覚えがあった

初めて学園に来た日

途中で立ち止まったあの場所だ

思わず名前を口にする

ゼーデラはバイオリンケースを 手渡す

サジーは校門へ走り出す

サジーの背中を見送りながら ゼーデラはつぶやく

昨日とは打って変わって 真っ青な空

澄み渡った青空が 不思議とサジーに自信を与える

視界の端に 箒や自転車が並べられたスペースがある

1番手前の自転車に近づき カゴにバイオリンケースをのせる

ケースはぐらぐらと傾き 自転車をこいでいるうちに落ちそうだった

サジーが悩んでいると

沈黙の人形の件以来 ダエルに対し不信感があった

一瞬、どうしてこんな所に いるんだろう？と思ったが

構わずその声に背中を向ける

それでもダエルは呼び止める

また何か邪魔をする気だろうか？

ダエルはサジーの目の前で 厚い布を床に広げる

どういう風の吹き回し？

そんな心境が顔に出ていたのだろう

ダエルは続ける

確かにその通りだった

今はこのバイオリンを 修理することだけを考えなきゃ

魔法の絨毯はすごいスピードで 空を駆け抜ける

信号も曲がり角も 邪魔するものは何も無い

サジーは首を傾げたが

ダエルがその先を話すことは無かった

しばらく飛んでいると

「てれびや」の看板が見えてきた

ダエルは絨毯を降下させる

現在の時刻は 10:15

てんまりが言い終わらぬうちに

サジーはダエルを置いて

慌てて店内に入る

慌てて喋り出すサジーを静止する

そこにダエルも遅れて入ってきた

サジーは今までの事を てんまりに打ち明けた

てんまりは深いため息をつく

今頃マリーニはどうしてるだろう？

実力発表会に出られなくなった事で

バイオリニストの夢が 閉ざされたりなんかしたら…

そんなサジーの表情を見たてんまりは 一括する

それを聞いてサジーはハッと気づく

てんまりが大きく目を見開く

「信じられない」 そんな気持ちが見て取れた

しかし、直ぐに我に返ると 立ち上がる

てんまりは奥の部屋へと 2人を案内した

現在の時刻は 10:30

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