マドカ
先輩……まさか本当にあの人に協力してもらう様にお願いするんですか?

スイ
私達だけじゃ出来ないこともあるだろうからね。

スイ
こういう時は他の人に協力してもらった方がいいよ。

マドカ
うう……あたしあの先輩苦手なんですよね……。

スイとマドカは、とある人物に冬凪研究所の調査を協力してもらうべく、その人物が居ると思われる図書室まで足を運んだ。
その人物は、2人の想定通りに図書室で本を読んでいた。
スイ
それじゃあ、私が声をかけてみるね。

マドカ
き、気を付けてくださいね……。
何されるか分かりませんよ!

スイ
マドカちゃんは先輩のことをどう思っているの……?

スイ
あの……すみません

???
……ん? 何かな?

スイ
先輩にとある研究所の調査を協力してもらいたいんです。

???
へ〜ぇ……。

???
───いいよ。

スイ
あ、い、いいんですか……?

???
頼んできたのは君だよね……?

???
特にやることもないし、協力してもいいかな、と思ったんだ。

スイ
あ……ありがとうございます!

マドカ
……。

???
あれ、君は……?

マドカ
マドカです。

???
あぁ、そうか。

ザイン
僕はザイン。3年だよ。
よろしくね、マドカちゃん。

マドカ
…………。

ザイン
どうしてそんなに睨んでくるのかな……?
僕、君に何かしてしまったっけ?

スイ
ごめんなさい……。
この子、先輩に何となく苦手意識がある様で。

ザイン
それ本人の前で言う?

ザイン
……まぁいいや。

ザイン
それで、僕にどこの研究所について調査してほしいのかな?

スイ
冬凪研究所という研究所で……。

スイ
この研究所のとある職員が最近怪しいんです。

スイ
以前、ゴブリンがここに襲撃してきたことがありましたよね。

スイ
そのゴブリンを放ったのもその職員なんです。

ザイン
ふーむ……その職員の名前は?

スイ
ゲントウという男です。

ザイン
……待って。
その名前、聞いたことがあるかも。

スイ
本当ですか?

ザイン
うん。ちょっと待ってね。

そう言うと、ザインは図書室の本を漁り始めた。
そして、少ししてからとある本を取り出した。
ザイン
これは冬凪研究所についてまとめられている本だよ。

ザイン
この本に、そのゲントウっていう男について記述されていた気がするんだ。

ザイン
……ほら、あった。

マドカ
……これ、数百年も前の記録じゃないですか!
この本で書かれているのは本当のことですか?

ザイン
おそらくね。

ザイン
だとしたら……ゲントウは不老不死の薬を自分に投与した可能性が高いね。

ザイン
研究者は、己の地位と名誉のためにも不老不死を望む者が多い。

スイ
でも、不老不死の薬は今はまだ開発されていないのでは?

ザイン
そのはずなんだ。

ザイン
もしかすると、ゲントウは研究者としてはよっぽど優秀な人材なのかもしれないね。

マドカ
知り合いに、その研究所に入れられていたことがある人が居るんです。

マドカ
その人が言うには、子供の時に見たゲントウの姿と最近見たゲントウの姿は全く変わっていなかったそうで。

ザイン
なるほど……。

ザイン
分かった。暇な時間にでも調査してみるよ。

スイ
ありがとうございます。

ザイン
そうだ、1人この調査を手伝ってくれそうな先生が居るんだけど……

ザイン
君達にその先生を探してきてほしいんだ。
そして、この紙をその先生に渡して。

そう言うと、ザインはメモ帳のページを破り、そこに何かを書き込んで4つ折りにしてからスイに渡した。
スイ
分かりました。
どの先生に渡せばいいですか?

ザイン
クリアトーレ先生だよ。
1年生担当のはずだから、マドカちゃんは知っていると思うんだけど。

マドカ
クリアトーレ先生ですか?

ザイン
うん。1年生フロアに居るんじゃないかな?

スイ
分かりました。

スイ
よし、マドカちゃん。
行こう。

マドカ
あ、はい!
