イルミネーション

改札を出たところで待っていると レトさんが小走りで到着した。

ちょっと不安そうな顔で俺を見る。

そう言うと、へへっと笑って 少し早足になる。

急かすように俺の腕を引っ張る。

俺は上機嫌でわがままなレトさんの後を追いかけた。

お腹を抑えながらとぼとぼ歩くレトさんを見ているのは少し面白い。

通りを歩いていると、ライトアップされた街路樹が少しずつ見えてきた。

足早にイルミネーションに向かっていくレトさん。

よほど楽しみだったのだろう。

その通りはずっと遠くまで光り輝いていた。

はっと息を呑むようなその美しさに 目を奪われてしまう。

どこかを目指すわけでもなく ゆっくりと歩道を歩く。

よほど物珍しいのか、レトさんは時折立ち止まっては写真を撮ったりじーっと見たりしていた。

俺が指差したのは、よく行くアクセサリーショップだ。

不審がるレトさんを行きつけのショップに連れていく。

慣れない手付きでネックレスをつける。

そう言って財布を出そうとしたレトさんを制止する。

ちょっと照れた顔でネックレスに手を掛けている。

ネックレスを見ている手を取り、自分の手を絡める。

レトさんの手を握り、イルミネーションの中を歩いていく。

なんでもない日が特別な日になりそうだ。

END.