TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

宇山 珀兎(ハクト)

うぐ……はぁはぁ……

原石 六空(ムク)

おい、大丈夫か?顔色悪いぞ

宇山 珀兎(ハクト)

だ、大丈夫……

宇山 珀兎(ハクト)

(さっき、七三五の話を聞いてから)

宇山 珀兎(ハクト)

(頭が、割れるように痛い……)

宇山 珀兎(ハクト)

それで僕が、儀式を受けていないこと

宇山 珀兎(ハクト)

それって、なにか問題があるの?

五木 鱗子(リンコ)

大問題よ!

五木 鱗子(リンコ)

私たちは、罪を背負いった一族……

五木 鱗子(リンコ)

その子孫たちが、許しを乞うことで災厄から身を守れるの!

七面 美羽(ミウ)

それに、十五夜家は……

原石 六空(ムク)

一番、罪が重い

宇山 珀兎(ハクト)

なにも贈ってないのに?

五木 鱗子(リンコ)

はあ。これだから、よそ者は……

七面 美羽(ミウ)

と、とにかく!

七面 美羽(ミウ)

わたしたちは、同じ罪を背負う一族なのです!

七面 美羽(ミウ)

なのに、宇山くんは“七の儀”受けていませんでした……

七面 美羽(ミウ)

きっと七三五様は、お怒りになっているはずです

宇山 珀兎(ハクト)

(七三五様が怒ってる?本当に?)

宇山 珀兎(ハクト)

(僕には、救いを求めているように感じたけど)

原石 六空(ムク)

とりあえず今は、七三五様の怒りを治める方法を考えよう

五木 鱗子(リンコ)

そうね?

七面 美羽(ミウ)

いったい、どうすればいいんでしょうか?

宇山 珀兎(ハクト)

うーん……

宇山 珀兎(ハクト)

母さんに聞いてみようか?

五木 鱗子(リンコ)

それは、だめよ!

七面 美羽(ミウ)

この話は、大人には秘密なのです!

原石 六空(ムク)

それに今夜は、ミカドの通夜だ

原石 六空(ムク)

最後くらい、静かに送ってやりたい……

五木 鱗子(リンコ)

そうね

七面 美羽(ミウ)

ミカドちゃん……

宇山 珀兎(ハクト)

(僕にとっては、クラスメイトの1人だけど)

宇山 珀兎(ハクト)

(みんなにとって、三次さんは幼なじみ)

宇山 珀兎(ハクト)

(きっと、つらいよね?)

宇山 珀兎(ハクト)

(今日は、静かに三次さんを見送ろう……)

その夜

宇山 兎和子(トワコ)

ハクト、準備できた?

宇山 珀兎(ハクト)

うん。数珠とハンカチも、ちゃんと持ったよ

宇山 兎和子(トワコ)

そう。それじゃあ、行きましょうか

宇山 珀兎(ハクト)

……ねえ、母さん

宇山 珀兎(ハクト)

三次さんがどうして亡くなったか、知ってる?

宇山 兎和子(トワコ)

ええ。野犬に頭を噛まれたそうよ

宇山 兎和子(トワコ)

怖いわね……

宇山 珀兎(ハクト)

うん、そうだね

母に案内され 僕は通夜に参列した

三次 未角

花に囲まれた遺影を見て 彼女の死を実感した

宇山 珀兎(ハクト)

(三次さんは)

宇山 珀兎(ハクト)

(本当に、死んでしまったんだ……)

七面 美羽(ミウ)

ミカドちゃん……

五木 鱗子(リンコ)

ミカド。アンタのことは、忘れないからね……

原石 六空(ムク)

……

宇山 珀兎(ハクト)

(葬儀は、父さんの時以来だけど。やっぱり、落ち着かないな……)

その時、村の人たちの 会話が聞こえてきた

 

まさか、三次家のお嬢様が亡くなられるなんて……

 

しかも“十五祭”に選ばれたそうですよ?

 

そういえば。三次のお嬢様は、今年15でしたね?

 

はい!

 

お兄様方お2人が選ばれなかった“十五祭”に!

宇山 珀兎(ハクト)

(また“十五祭”……)

宇山 珀兎(ハクト)

(人が死んでるのに。まるで、お祝いみたいに……!)

どくん

宇山 珀兎(ハクト)

(ひどいよ……。死んだ人の気持ちも考えないで)

どくん

三次の母

皆さま。本日は娘のためにお集まり頂き、誠にありがとうございます

三次の母

急ごしらえではありますが、宴会の席をご用意をさせていただきました

三次の母

どうぞ控え室にて、おくつろぎ下さいませ

三次さんの母親に促され

僕ら参列者は 控え室へと向かった

宇山 珀兎(ハクト)

(よかった……)

宇山 珀兎(ハクト)

(いつまでも、三次さんの棺の側で。あんな話……)

宇山 珀兎(ハクト)

(とても、聞いていられない)

三次の母

簡素な食事ですが。どうぞ、お召し上がりください

控え室には 急ごしらえとは思えない

豪華な料理が並んでいた

宇山 珀兎(ハクト)

す、すごい……

七面 美羽(ミウ)

リンコちゃん、リンコちゃん!

七面 美羽(ミウ)

なにから食べます?

五木 鱗子(リンコ)

ちょっと、七面。アンタは場をわきまえなさい

七面 美羽(ミウ)

で、ですけど……

原石 六空(ムク)

五木、七面。どうせ昨日から、ろくに食ってないんだろ?

原石 六空(ムク)

とりあえず飯は食っとけ。食える時に、な?

五木 鱗子(リンコ)

……わかったわよ

宇山 珀兎(ハクト)

(それにしても)

僕は料理を見て ふと疑問に思った

宇山 珀兎(ハクト)

全部、丸いものばっかり……

お菓子は全部まるい形

ケーキはホールのまま

おにぎりは全て 丸く握ってある

宇山 兎和子(トワコ)

月無村では、冠婚葬祭に丸いものを食べるのよ

宇山 兎和子(トワコ)

“お付き様”への祈りをこめて

宇山 珀兎(ハクト)

“お付き様”への、祈り……

五木 鱗子(リンコ)

クッキーなんて、ひさしぶりだわ

そう言って五木さんが クッキーに手を伸ばした

その瞬間

五木の母

待って、リンコ!

五木さんの母が 金切り声で叫んだ

五木の母

ちょっと、このクッキー。ピーナッツが入ってるじゃないの!

五木の母

ちょっと三次さん、どういうつもりなの!ウチの子を殺す気!?

三次の母

い、いえ!そんなつもりでは……

宇山 珀兎(ハクト)

(どうしたんだろう?)

五木の母

ウチのリンコは、重度のピーナッツアレルギーがある

五木の母

集会のたびに、そう説明しましたよね!?

三次の母

す、すみません!

三次の母

なにぶん、急な事で。全て、頂き物で用意したものですから……

五木の母

気をつけてくださいよ!?

五木の母

リンコの姉リンカは、とても病弱で……

五木の母

五木の跡継ぎは、リンコに決まっているんです!

母親の怒声に 五木さんは身を縮めた

五木 鱗子(リンコ)

お母さん……。もういいよ

五木の母

そうね……。どんなに説明しても、三次さんには分からないでしょうから

三次の母

あの、それはどういう意味ですか?

五木の母

言わないと分からないのかしら?

五木の母

まあ、分からないでしょうね?いつまでも自分の番がこない、よそ者のあなたには

五木 鱗子(リンコ)

ちょっと、お母さん!

五木 鱗子(リンコ)

言い過ぎよ!ミカドのお母さんに謝って!

 

ああ、揉めたらいけんよ?

 

ナ三五様に選ばれなさったんや。光栄に思いんしゃい

宇山 珀兎(ハクト)

(また、七三五様……)

どくん

三次の母

ごめんね、ミカド……。きちんと儀式は済ませたのに

三次の母

わたしが、よそ者でなければ。こんな事には……

 

あんまり気を落とさんと

 

そうかて、七三五様のお付きに、なれるんよ?

 

光栄な事やんね

どくん

宇山 珀兎(ハクト)

七……三五を

宇山 珀兎(ハクト)?

七三五を……侮辱するなっ!!

七面 美羽(ミウ)

宇山……さん?

原石 六空(ムク)

おい、宇山。大丈夫か?

バチンっ!

原石 六空(ムク)

痛っ!

宇山 珀兎(ハクト)?

ええい、しぇからしか!

宇山 珀兎(ハクト)?

うたちー手ぇで、ワシに触るでなか!

原石 六空(ムク)

なっ!?

宇山 兎和子(トワコ)

ごめんね、原石くん

宇山 兎和子(トワコ)

ハクト、ちょっと具合が悪いみたいなの

宇山 兎和子(トワコ)

すみません、皆さま。息子の体調がすぐれないので、先にお暇させていただきます

様子の変わった ハクトを連れ

兎和子はその場を後にした

原石 六空(ムク)

なんだよ、宇山のヤツ

原石 六空(ムク)

……だけど。なんで宇山の母親が俺の名前を知ってるんだ?

原石 六空(ムク)

会ったの、今日がはじめてなのに

宇山 兎和子(トワコ)

ハクト、しっかりしなさい!

宇山 珀兎(ハクト)

……え、母さん?

宇山 珀兎(ハクト)

あれ?ここは?

宇山 珀兎(ハクト)

三次さんのお通夜に行ったんじゃ……?

宇山 兎和子(トワコ)

いいのよ、もう

宇山 兎和子(トワコ)

私たちは三次さんと知り合って間もないし。先に帰りましょう?

宇山 珀兎(ハクト)

う、うん……

宇山 兎和子(トワコ)

それにしても……。非常識な人ね?

母さんが式場を見る

その目には怒りにも似た 光が宿っていた

宇山 珀兎(ハクト)

それって。五木さんの、お母さんのこと?

母さんは問いに答えず ぼそりと呟いた

宇山 兎和子(トワコ)

お通夜の席に、赤い口紅なんて……ねえ?

七三五様〜ツキとウサギのひめごと〜

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

111

コメント

2

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚