九月
休み時間
叶慧
ちょっとヤバいよ〜
中村
どうしたんだよ
彼は私の前の席に君臨するクラスメイトの中村君
美香とは違い中学からの付き合いだ
叶慧
何ってもう期末が来るんだよ!?
中村
皆んなわかりきってることじゃん
叶慧
けれども私はもう補習を受けるわけには行かないんだよ……
中村
そういやそんなこと言ってたな
叶慧
しかも今回の英語難しいんだよね
中村
それな
叶慧
わかってくれる?
中村
俺も今回の英語は七割もキツいかもしれない
叶慧
全然いいじゃんか!
叶慧
私なんて四十点超えることがキツいんだから!
中村
四十点未満が赤点なんだから頑張れよ笑
叶慧
笑い事じゃないよ……
七割で悲しむとか、私からすればお門違い
五点でいいから点数を分けて欲しいくらい
中村
……あのさ
叶慧
ん?
中村
お前って、変わったな
叶慧
え?
中村
いや、変わったと言うより戻ったって感じだ
叶慧
どういうこと?
中村
中学の最後とは違って、俺が初めて見た頃の四季に似てる
中村
同一人物だけどな
そう言って彼は笑った
中学から見ている中村君だからこそ、わかることはあるんだろうか
叶慧
そんなに変わったかな
中村
うん
中村
前より明るくなった
叶慧
明るくか……
中村
あれじゃね?一年の……
中村
お前の好きなやつ
叶慧
凛ちゃんのこと?
中村
そうそう
中村
そいつのおかげだと思う
叶慧
本当に可愛いからね?
叶慧
また今度見せてあげるよ
中村
おう、いつか見せてもらう
叶慧
そんで英語だよ!
中村
なんで自ら地獄に思考を戻すんだよ
叶慧
教えてよ中村君!
中村
俺教えるの下手で有名なの知ってるか?
叶慧
そうだった!
叶慧
じゃあ先生……?
中村
先生は忙しいんじゃね?
叶慧
テスト作ってるしね……
叶慧
じゃあ凛ちゃんだ!
叶慧
行ってくる!
中村
(後輩に勉強教えてもらう先輩とか初めて見た……)
一年の階
叶慧
おーい凛ちゃん!
糸師凛
なんだよ
叶慧
実は折り入ってご相談がありまして……
糸師凛
何改まってんだ
叶慧
凛ちゃんって英語できるよね?
糸師凛
だったらなんだ
叶慧
私に英語教えてよ!
叶慧
二回目補習は色々とキツくてさ
糸師凛
お前プライドねえのか
叶慧
これに関してはプライドも何もないかな
叶慧
変に気張ってても自分が死ぬだけだし
糸師凛
なんで俺なんだよ
糸師凛
他にも何か居ただろ
叶慧
私の周りに英語教えてくれる人いなくてさ
叶慧
類は友を呼ぶっていうじゃない
糸師凛
お前が複数人いるの地獄だろ
叶慧
悪口はやめてください!
叶慧
できる人が凛ちゃんしかいないんだよ!
糸師凛
お前に教えるとか地獄でしかない
糸師凛
喧嘩売ってんのか
叶慧
え、そんなに嫌!?
糸師凛
まず話が通じねえ
叶慧
それ前に先生も言ってた気がする
糸師凛
ならもうわかり切ってんだろ
叶慧
でも一人留年は嫌だよ
糸師凛
そんな一教科くらいで留年しねえ
叶慧
でもあまりにもできないとそうなるかもしれないよ?
叶慧
高校くらい皆んなで別れたいし
叶慧
だからお願いっ!
こんなところで留まってはいけない
美香とも中村くんとも
先生たちや部活仲間とも
高校の卒業式という青い場所で
最高別れにしたい