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夢小説にシリアスな展開を入れたくてこの設定にしましたが、今のところ(というか暫くは)シリアス展開は全く無さそうです😽🤝🏻 暫くは甘々キュンキュンちょっぴりひやひやなお話をお届け出来ると思います🩷🤍 角名くんだけでなく他の稲荷崎キャラクター(あばよくば他校キャラも…)もこれからたくさん出してく予定です💝2話ではあのキャラの登場が…!!💛
私の家は普通じゃなかった
小さい頃に母が死んでから、ずっと。
それから、父は私に暴力を振るうようになった。
それは時々だったけど
最近は
ちょっと増えたような
気がする
クラス替え当日、2年の春
空いていた窓側の後ろから2番目の席に静かに腰を下ろす
窓の外にはまだ冬の名残みたいな冷たい風が流れていて
机に貼られた名前シールの端を
なんとなく爪でカリカリとこすった。
角名倫太郎
ぼそりと低い声が、すぐ隣から聞こえた
反射的に顔を上げると、背の高い男子が
私の机をじっと見つめていた。
私がいじっていた名前シールに視線を落としながら、
彼はまだ名前の続きを読むように、
無言で口を閉じたまま。
見たことはある。でも、話したことはなかった。
榎野〇〇
声をかけるべきか迷って、
何も言えないまま、目だけが合った
角名倫太郎
彼は、私の名前シールを指でそっとトントンと叩いた。
榎野〇〇
彼は名前シールをもう一度軽く見てから
角名倫太郎
とだけ言って、すっと席に腰を下ろした。
始業式はあっという間に終わった
隣をぼんやり見る
榎野〇〇
ふと、始業式の表彰で聞こえた名前が頭をよぎった
「すなりんたろう」──確かそんな名前だったような。
隣の席をもう一度見て、名前を確かめようとそっと視線を下ろした。
名前シールが遠くて見えにくくて、思わず体ごと少し前に乗り出してしまった。
気づけば顔がぐっと近づいて、角名くんとの距離はいつの間にかほんの数十センチになっていた。
その瞬間、隣から小さく「ん?」と声がした。
顔を上げると、角名くんが少し首を傾げて、こちらをじっと見ていた。
慌てて顔を戻しながら思わず
榎野〇〇
と声に出して謝った。
榎野〇〇
角名くんは何も言わずに、そのまま机に肘をついてこちらを見ていた。
榎野〇〇
角名倫太郎
急に名前を呼ばれて、びくっと肩が跳ねた。
驚いて顔を向けると、角名くんが、まっすぐこっちを見ていた。
角名倫太郎
さっきより少しだけ砕けた口調で
ほんの少しだけ、笑ったように見えた
声がやけにやわらかくて、落ち着いてて
思ってたよりずっと優しい音で
……あれ、なんか…ちょっと、いい声?
恋じゃない。恋じゃないけど!
不意打ちで心臓がひとつだけ、
静かに跳ねた。