それからしばらくして
井川静(じん)さんは少年鑑別所に送致された
警察署での取り調べや私との面会
それと平行して行われていた検察官による取り調べで
鑑別所に送致するべきと判断が下り
静さんは警察署を後にした
この頃にはもう
かすみさんから受けた傷も塞がり
まだあちこちが瘡蓋の状態ではあったが
殆ど痛みもなくなり落ち着いた様子だったらしい
安田巡査部長
安田巡査部長
安田巡査部長
安田巡査部長
沢田マリカ
安田巡査部長
安田巡査部長
沢田マリカ
その現場に立ち会うことができなかった私のためにと
安田巡査部長がわざわざ連絡をくれた
静さんは更正するための第一歩を踏み出した
かすみさんの呪縛からも解き放たれた静さんには
もう辛い思いをしてほしくない
私はそう願いながら病院に向かっていた
2010年9月13日(月)
最高気温は33.2度とまだまだ暑く
外の空気も蒸し暑く感じていた
病院に到着すると
玄関に沢山いた報道陣の姿は殆どなく
もう裏口から入らなくても平気になったようで
優真さんは堂々と正面玄関から院内へと向かっていった
救急病棟の入院室に向かうと
あすみさんは眠っている様子だった
私達の姿に気づいた看護師さんが声をかけてきて
昨晩の出来事を話してくれた
深夜二時を過ぎた頃
井川あすみ
井川あすみ
あすみさんのベッドの方から声がした
看護師A
看護師さんが駆けつけると
あすみさんは自分の腕に刺さっていた点滴の針を抜き
その他の身体に繋がっている管を抜こうとした
看護師A
井川あすみ
井川あすみ
まだ弱々しい声
でもはっきりとそう言ったのを
看護師さんは確認していた
看護師さんがなんとか宥めようとしたが
それでも暴れたため
当直のドクターの指示で鎮静剤が投与された
三村優真
優真さんが手を握り呼び掛けると
それに反応するようにあすみさんがゆっくりと目を開けた
井川あすみ
三村優真
三村優真
優真さんが優しく頭を撫でると
あすみさんが涙ながらに訴える
井川あすみ
井川あすみ
初めてちゃんと聞くあすみさんの声
しばらく会わない間にこんなにも回復しているとは
そう思いつつ二人を見守っていると
まだ完全には動けない身体を震わせ
あすみさんは何度も優真さんを求めた
井川あすみ
三村優真
井川あすみ
井川あすみ
彼女の瞳から溢れる大粒の涙
でも優真さんはその問いかけに答えることができずにいる
本当はずっと一緒にいたい
そばにいて自分が彼女を守っていきたい
けれど未成年のあすみさんを簡単に引き取ることはできず
今の優真さんには山梨へ行く以外の道は残されていなかった
三村優真
三村優真
優真さんの瞳からも大粒の涙が溢れていた
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