TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

溢れて止まらない優真さんの涙

見ている私まで泣きそうになる

こんなにも愛し合っている二人が

もう直ぐ離ればなれになってしまう

あの時、優真さんがあすみさんを拉致しなければ

こんな風に引き離されることはなかったかもしれない

でもあんな形でなければ出会うことはなかった

一見すればどこにでもいる普通の男女

ただすれ違うだけなら気にも止めないだろう

優真さんが何かを感じて彼女の腕を掴み

あの広いマンションに連れ込んだ

掴んだのが別の女性の腕だったら

激しく抵抗されて近隣住民に通報されたかもしれない

それが起こらなかったのは

彼女が失声状態だったから……

違う

きっと彼女は

声が出せたとしてもあの場に残る道を選んだだろう

孤独を感じていた二人の心が共鳴し

優真さんの少し歪んだ愛を受け止めた

あのマンションに行ったからわかる

彼女はあそこで幸せを感じていたはずだ

優真さんのマンションに行った日

私はベッドルームにあった筆談ボードを写真に撮り

念のため筆跡を調べてもらっていた

優真さんを疑っていたわけではなく

当時のあすみさんのことを少しでも知りたいと思ったからだ

筆談ボードに書かれていたのは間違いなく彼女の字で

紙ではないため筆圧まではわからなかったが

字に震えなどもなく

嘘偽りのない彼女の思いが綴られていたことが判明

今、目の前で涙を流し優真さんを求める姿を見ても

優真さんへの想いは本物だとわかる

優真さんがトイレに立つわずかな時間さえも辛いのか

不安そうにいなくなった方角をずっと見つめて

優真さんが戻ってくると安心した顔をする

黙ったまま何も言わなくなってしまった優真さんに

あすみさんが問いかける

井川あすみ

もう……会えないの?

井川あすみ

優真のそばにいちゃいけないの?

三村優真

ごめん……

井川あすみ

離れたくない……

井川あすみ

優真のそばにいたい……

井川あすみ

行かないで……

井川あすみ

一人にしないで……

三村優真

あすみ……

三村優真

梶原さんが説明してくれた通りなんだ……

三村優真

あすみはまだ未成年だから……

三村優真

僕はそばにいられない……

法律的に無理だと言うことも彼女はわかっている

それでも心が追い付いていかない

それだけ優真さんのことを愛しているのだ

私達は面会時間ギリギリまで病院にいた

この日は特に彼女の心が不安定だったため

優真さんはお昼を食べに行くことができなかった

少しでも優真さんの手が離れると不安になるのか

トイレに立つわずか数分しか耐えることができなかった

三村優真

すみませんでした

三村優真

昼食……

沢田マリカ

いえ

三村優真

沢田さんだけでも食べに行ってくれれば……

沢田マリカ

なんか、タイミングを逃してしまいました

沢田マリカ

でも、三村さんのせいじゃないですから

沢田マリカ

気にしないでください

三村優真

沢田さん……

そう言った直後

タイミングを見計らったように私のお腹の虫が鳴き

事務所に戻る前に食事をすることにしたが

優真さんは殆ど手を着けることができず

事務所に戻ってからも俯いたまま

梶原智香

三村君……

梶原智香

相当、辛いんだね……

沢田マリカ

はい……

沢田マリカ

あすみさんが何度も言うんです

沢田マリカ

一人にしないでって……

梶原智香

そっか……

もう少ししたら

彼女は一般病棟に移ることになる

二人のタイムリミットが

刻一刻と迫っていた

渇愛と純情ー愛の鎖に繋がれてー

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

70

コメント

2

ユーザー
チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚