素直な気持ち【9bic】

プライベートドッキリとバラして安心した小太郎は、今度は俺の身体の心配をしてくれた。

小太郎が部屋を出た事を確認して、ベッドに横になった。

自然と、涙が出てきた。

袖で拭っても拭っても溢れてくる。

小太郎のあの反応が、頭から離れない。

「よかった」

「安心した」

俺は小太郎を好きでも、

小太郎は俺とそういう関係にはなれないんだ。

もう、なれないんだ。

小太郎…

ごめん。嘘ついて。

大好きだよ。

小太郎が帰って少し経った今でも涙が止まらない。

ずっと我慢してたんだろうな。

｢叶わない恋｣なんてしたことないから分からなかったけど、こんなに辛いんだ。

声の方を見ると、さつきがドアの前に立っていた。

気配がなかったので全然気づかなかった。

さつきがゆっくり近づいてきた。

俺は身体を起こし、

急いで顔を隠した。

泣き顔なんて見せたくない。

何もしていないさつきに迷惑は掛けられない。

声が多少鼻声になっていたが、出来る限り紛らわしたつもりだ。

さつきが俺の顔を覗き込んだ。

そのとき、目があった。

小太郎が声をあげ、もっと近づいてきた。

さつきの、強い口調とは裏腹に、俺を見つめる目は凄く優しかった。

その優しい瞳を見て、また涙が出てきた。

再び出てきた涙を、袖で拭う。

さつきは、ずっと泣き止むのを待っていてくれた。

しばらくして、俺の心は落ち着き、涙も止んだ。

さつきの質問に驚いてしまって、直ぐに「違う」ということを言えなかった。

怪しまれるだろうな…

気のせいかもしれないが、さつきが悲しそうな顔をした。

さつきがどんどん前のめりになり、俺を押し倒した。

床ドンされた状態で、さつきの顔を見上げた。

暗い中でも、近くだからわかる。

さつきは泣いていた。

いつものさつきじゃないみたいだ。

さつきは体勢を起こし、背を向けた。

何がなんだか分からないまま、さつきは俺の部屋を出た。

今のはなんだったんだ？

倒された身体を起こし、考えた。

あのさつきの涙はなんだったんだ？