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馬乗りなったKが両手を使ってワコの首を絞める。
笑いながらじりじりと絞めあげてゆく。
これで楽になれる
これで……
はっと気がつく
別なシーン
ワコは監禁部屋のトイレで探し物をしている。
あったはずの手掛かり。
ないないない
1777の数字が書かれた紙くず
そうだ!あれはトイレに捨てたんだっけ。
次に気がつくと
焼却炉の中だ。
廃された病院の焼却炉。
そこに生きたまま閉じ込められ
焼かれる。
骨が砕けるまで焼かれる。
粉々になった骨を更にすり鉢で粉にする。
ワコは海に撒かれ青黒い深海深くまで堕ちてゆく。
場面は変わる。
ふたたび監禁部屋に繋がれていた。
Κが馬乗り
鋭利なサバイバルナイフで首の静脈を切られる。
吹き出した血飛沫が天井に大きなシミをつくった。
とても残忍な所業だ。
そーかあのシミは
いつも眺めていたあの天井のシミは
あれは私の血だったのか。
ワコはがばりと起きあがった。
汗をびっしりかいている
動悸がはげしく
呼吸も荒い。
ワコ
久しぶりに酷い夢を見た。
夫に殺される夢──
正気に戻ったと言われてから三ヶ月が経っていた。
このところ治まっていた悪夢がふたたび始まった。
ただ違うのは、じぶんで夢だと認識することかできた。
以前ケイジが言ったような、けして夢を現実だと勘違いするようことはなかった。
ワコはベットから起き上がり、水差しからコップに水を注ぐと口に含んだ。
うっ
むかむかする。
酷い胸焼けがした。
残忍なサイコパスKと
同じ顔のケイジ。
ケイジは人が羨むような完璧な夫。
あんなに良くしてもらっているのにね。
心のどこかで、まだケイジのことをKだと疑っている。
だからこんな夢を見てしまうのだ。
自分が情けなかった。
うっ
気持ち悪い……
体が火照り
眠いのに神経が高ぶる。
夕べ食べたものが込み上げた。
ワコはバスルームに走った。
トイレの蓋をあけ
思いきり嗚咽した。
胃がからっぽになっても
まだ吐きつづけた。
少しして洗面台に移動した。
鏡に映った自分は涙と鼻水で酷い状態だった。
顔をザブザブ洗う。
ワコ
ワコ
今夜はケイジがいなくてよかった。
このほど外科のチーフドクターから
外科部長に昇進することに決まり、ますます忙しい身となった。
だから余計な心配をかけたくなかった。
ワコ
ワコ
ワコは寝室の窓を開けた。
老朽化した病院が半分まで解体されていた。
三ヶ月前から始まった解体工事。
亡くなった義父が建てた病院だった。
いずれケイジが開業するために、更地にするのだそうだ。
古い病院は何となく夢とリンクして
嫌な感じだった。
ケイジ(K)
振り向く間もなく後ろから抱き締められた。
ケイジ(K)
ケイジはワコのうなじにキスをする。
ワコ
ワコが振り向く。
ケイジはとても疲れた顔をしていた。
ワコ
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ワコ
ワコ
ケイジは微笑む。
ケイジ(K)
ケイジ(K)
そう言ってケイジはワコを抱き上げるとベットへと向かった。
翌日の朝。
朝食は屋敷の食堂でとった。
テーブルに二人きり。
それも椅子が八脚もある大きな食卓だ。
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ワコ
ワコ
胸のムカつきを我慢していた。
今もそうとう無理して食べている。
ワコ
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
ケイジ(K)
結局
週末はケイジと一緒に出席することになった。
日曜日のお昼すぎ
パーティーはホテルの大きな会場で行われた。
専務
専務
教授
教授
ケイジ(K)
ケイジ(K)
一方ワコはご婦人方にかこまれていた。
理事の妻
理事の妻
専務の妻
専務の妻
ワコは夫人たちの貫禄に押されっぱなしだ。
ワコ
ワコ
夫人たちはワコの若さに目が点になっていた。
理事の娘
理事長の娘は最初から好戦的だ。
ワコ
理事の娘
ワコ
中卒です──
その場にいた全員があっけに取られたのは言うでもない。
部屋の隅で理事の娘は泣いていた。
母親が慰める。
なんであの子なの?
病気だって聞いてたけどピンピンしている。
もしかしたら患者さんだったのかしらね
きっと病気に同情なさって結婚したのよ。
ママなんとかして
何とかして?
公衆の面前で
何て言いぐさだ。
胸のムカつきも手伝って
この場の雰囲気に耐えられずに会場を後にした。
部屋に行って休もう。
ルームキーをもらいにフロントへ行った。
フロント係り
フロント係り
フロント係り
フロント係り
ワコ
ワコ
フロント係り
ワコ
フロント係り
フロント係り
フロント係り
ワコ
ワコ
ワコはカード式のルームキーを受けとるとエレベーターへ向かった。
途中、お色直しの花嫁とすれ違う。
記憶にない結婚式。
もう一度ウェディングドレス着たいなと思った。
エレベーターは六基ある。
ワコは点滅ランプの着いたところから乗った。
ワコ
ワコ
ワコ
うん?
心臓がドキッとする。
17 77
あっ……
1777
監禁部屋で見つけた数字……
トイレの水槽と壁の間にはさまっていた紙切れ。
自分の妄想だとばかり思っていた。
なのに
なのに
ホテルの部屋番号だったとは
ワコの手が……
ルームキーを持つ手が、がくがくと震えだした。
つづく
次回最終話